NHK札幌放送局

シラベルカ#13 中標津に広がる巨大な碁盤の目の謎

シラベルカ

2020年6月30日(火)午後0時52分 更新

みなさんの疑問や質問に答えるシラベルカ! 第13回目は、30年ぶりに北海道に戻り、道東の中標津町を訪れたという男性からの依頼です。

50代男性
「地図アプリで見たところ、巨大な碁盤の目が存在していることに気づきました。まるで、ナスカの地上絵やピラミッドに匹敵するくらい壮大なものです。目的やエピソードなどを調べてください」

まずは、地表にどんな形が現れているのか、衛星画像を見てみましょう。

確かに碁盤の目のような模様が! これは一体何なのか、なぜ作られたのか…。地元、中標津支局が総力を挙げて調べました。

酪農地帯を縁取るもの

衛星画像に写った地域は、酪農地帯です。したがって、明るい緑色に見えるところは牧草地。その牧草地を縁取るのは、どうやら防風林のようです。

一体どのくらいの大きさなのでしょうか…。

いざ実測!

距離を測定する機械で実際に測ってみます。身近に見てきた防風林ですが、測ったことはありませんでした。まずは防風林の幅です。

約180mありました。180mってどのくらいかといいますと、札幌の大通公園と重ねあわせてみると…。すっぽり収まる大きさ。

次に碁盤の目の1辺の長さを測ります。
周囲にあるのは広大な牧草地と飼料用トウモロコシの畑、点在する牧場。まっすぐ伸びる道路をひたすらコロコロ。
1キロを超えてもゴールははるか先。噴き出す汗をぬぐい息を切らす記者とカメラマン。初夏のさわやかな風景とは対照的な光景です。
歩き始めて50分ほどでようやくゴール。その距離は…約3キロ。

格子状防風林 vs. 巨大人工物

防風林で囲まれた「碁盤の目」は、地形によって大きさや形が異なりますが、1辺が3キロあまり。その見た目から「格子状防風林」と呼ばれているようです。
どのくらい大きいか比べてみましょう。

比較したのは巨大人工物です。まずはエジプト、ギザの大ピラミッド! ピラミッドは一番大きなものでも1辺230mほどです。すっぽり入りました。

もうひとつ比べるのは、ナスカの地上絵。中でも有名なハチドリは全長100mなのでご覧の通りです。

格子状防風林、ケタ違いの大きさですね!。

さらに、羽田空港や東京湾と比べたらどうかというと…

防風林の大きさが一目瞭然ですね。なぜこんなに巨大なのでしょうか?

大きい理由はあの国の影響

格子状防風林が広がる中標津町の学芸員・村田一貴さんに、なぜこんなに大きいのか聞いてみました。

中標津町教育委員会 村田一貴 学芸員
「北海道開拓の計画が、アメリカを手本に作られたものだからです」

な、なんとアメリカ…!?

村田さんは、明治時代中ごろの中標津の開拓計画を示した図面を見せてくれました。入植者に分配する区画を示す地図で、そこにはすでに防風林の計画があり、大きさも決められていました。
このとき、アメリカの西部開拓時代の手法を参考にしたので、巨大な区画になったのです。

図面に示された区画や防風林などは、格子状に交わる「基線」と「号線」と呼ばれる道路が基準となっていて、いまでも道内各地の地名や路線名として残っています。

地域を守り続けた防風林

元々根釧台地には原生林が広がっていて、開拓が進むにつれ防風林が格子状に浮かび上がってきました。
一方、この地域では、強風や霧を防ぐために残され、現在に至るまで維持、管理されています。

実はこうした防風林は、かつて道内各地にありました。しかし、農業の効率化などで規模が縮小。
一方この地域では、強風や霧を防ぐために残され、現在に至るまで維持、管理が行われています。

中標津町教育委員会 村田一貴 学芸員
「自然の生態系の保全、環境、暮らし、産業守るということで防風林は当地域にとって大変重要なものになっています」。

格子状防風林は、農作物が育ちにくい冷涼な土地を風や霧から守り、大酪農地帯へと育て上げていました。しかし、住む人にとってあまりにも身近で大きすぎたため、その価値はあまり知られていませんでした。

価値とスケールを教えてくれたのはあの人

そうした中、格子状防風林の大きさが話題となる出来事がありました。今から20年前、スペースシャトル・エンデバーが打ち上げられました。

このエンデバーに乗り込んでいたのが、余市町出身の宇宙飛行士・毛利衛さんです。毛利さんが、2回目の宇宙空間から撮影した映像が注目されました。

右側がその時の映像です。2000年2月、雪に覆われた北海道に「格子状防風林」がくっきりと浮かび上がっています。毛利さんは1回目の搭乗で撮った写真で、その存在に気づいていたそうです。

宇宙飛行士、日本未来科学館館長 毛利衛さん
「最初のミッションは9月だったんですが、2回目は2月だったので真っ白いキャンバスに黒い格子が見えたので、それはそれはすごくきれいに見えて。1回目と全然違って面白かったです。宇宙人が絵を書いてるかなっていう感じがしました」。

開拓時代から残る規模だからこそ、宇宙からも見えた格子状防風林。この映像で国内外で話題にのぼりました。地元での注目度も一気に高まり、翌年には「北海道遺産」への登録が決まりました。

毛利さんは、産業や人の暮らし、生物多様性を守り続ける先人の知恵を学び、次世代に引き継いでいってもらいたいと考えています。

毛利衛さん
「ぜひ地域の人たちは格子状防風林を大事なものだと思って、残っていることが貴重なことだと思って、守ってほしいですね」。

身近な「地域の宝」に学ぶこと

ふだんは、人の目線の高さからしか見ることがない「格子状防風林」。今回の取材を通じてスケールの大きさ、価値を改めて理解することができました。
中標津町では防風林について学ぶ授業や、町民による景観保護の活動も続いています。
宇宙からも見えるビッグな格子状防風林。中標津空港を発着する飛行機からの眺めは素晴らしいので、ぜひ一度、ご覧になって下さい!

取材:中標津支局 原田未央記者


放送の動画はこちら↓


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