NHK札幌放送局

「士別市は地震が少ないってホント?」 シラベルカ#85

シラベルカ

2022年4月11日(月)午後5時02分 更新

みなさんの疑問をシラベルカ! 最近、全国各地で地震が相次いでいますが、お住まいの地域の地震について気になっている方も少なくないと思います。そこで今回は、「地震の頻度」について調べてみました。 

きっかけとなったのは、こちらの投稿でした。

「道央圏から道北の士別市に引っ越して7年目になりますが、ここはびっくりするほど地震がない場所です。何か理由があるのでしょうか?」(50代・女性)

さっそく現地調査へ

果たして投稿のとおりなのか。私たち取材班は現地を訪れてみました。
士別市は上川北部に位置し、人口はおよそ1万7000。面積のおよそ75%を山林が占めていて、ジンギスカンの羊肉の生産など畜産も盛んな、のどかな街です。
まずは地元の人に地震の頻度をどう感じているのか聞きました。

「50年ほどここに住んでいますが地震は圧倒的に少ないですね。自然災害としては水害なら少しはあるんですけど、地震は少なくて安心しています。ちょっと油断している部分もあるかもしれません」(70代男性)

道ばたで出会った市民に片っ端から話を聞きましたが、全員が同じような話をしていました。なかには、「最後に地震があったのがいつだったか、もう覚えていません」という人もいました。

次に私たちは、市内の震度計を探してみました。調べると、市内には3つの震度計が設置されていて、このうち市街地に置かれた1つを見つけました。金属製のふたが付いたこの小さな箱の中に観測機器が入っているということです。

これらの震度計がどれだけ作動したのか確認したところ、去年までの10年間に士別市内で震度1以上の地震を観測したのはわずか6回でした。地震回数が道内トップ2だった函館市の703回、根室市の630回と比べると、100分の1以下の少なさです。
たしかに投稿者をはじめ地元の人たちが「地震がない」と口々に言うのも納得です。しかし、どうしてこんなにも少ないのでしょうか。

気象台の見解は!?

そこで訪れたのは札幌管区気象台です。取材に応じてくださったのは、地震情報官の阿南恒明(あなみ・つねあき)さん。実は阿南さんは士別市の出身で、18歳まで住んでいたそうです。

「士別市は典型的な盆地の気候なので暑かったり寒かったりした当時の記憶はあるんですが、地震で揺れたという記憶はありませんね」

そんな阿南さんに改めて地震が少ない理由を聞くと、「士別市は内陸部に位置し、地震が多く発生する太平洋側から距離が離れているから」なのだそうです。

北海道周辺のおもな地震のメカニズムはこうです。私たちが住む陸側のプレートの下に、太平洋プレートが年間およそ8センチのペースで沈み込みます。プレートどうしの境界にひずみがたまり、それが限界に達したとき地震が起きると考えられています。
北海道の中でも太平洋側の地域は比較的、プレートの境界(=震源)に近いため揺れやすく、離れた場所の士別市では揺れを感じにくいということです。

それでも「大地震の可能性はゼロではない」

もちろん、ほかにもプレート内部の断層が動くことによる地震も起きています。これについて阿南さんが気になる話をしていました。まず、こちらの下の図を見てください。過去10年間に起きた地震の震源地をマークで示したものです。人間の体では覚知できないほどの小さな揺れの地震も含まれています。

士別市の周辺はやはり比較的、マークが少なく見えます。しかし、太平洋側からさらに遠く離れた宗谷地方の一部地域でもなぜか地震が頻発しています。陸のプレート内部の同じ仕組みによる地震とみられますが、なぜ地域ごとに地震活動の活発さが違うのかについては、現代の科学をもってしてもよく分からないということです。

さらに、活断層についてもすべてが解明されているわけではありません。道内には、過去に地震を繰り返し起こし、将来も大きな地震を起こすと考えられている活断層がいくつもあります。

いずれも士別市のすぐ近くにあるわけではありませんが、阿南さんは次のように指摘しています。

「一見、安全なように見えても、全国にはまだ発見されていない活断層が多くあり、マグニチュード7クラスの地震は日本のどこでも起こりえます。活断層は種類によっては数千年から1万年くらいの間で活動すると言われていて、将来、士別市も大きく揺れる可能性だって否定できません。いま安全だと思っていても、将来にわたってずっと安全とは言えないのです」(阿南地震情報官)

予断を持たずに備えを

実際、士別市のように地震が少ないとされてきた地域が突然、大地震に見舞われたケースはいくつもあります。なかでも阿南さんが真っ先に挙げたのが、2005年の福岡県西方沖の地震です。福岡市などで最大震度6弱の揺れを観測したこの地震では死者1人、1000人を超えるけが人が出ました。それ以前の福岡市では、いまの士別市のように震度1以上の揺れを年に数回程度しか観測していませんでした。

阿南さんによると、地震後に行われた国の調査で、付近に活断層があるとみられることが初めて分かったということです。士別市周辺での地震の可能性やメカニズムについても、大きな地震が起きてからでないと解明が進まないというのが実情なのです。

今回の取材を通して、地震については分かっていないことの方が多いと実感しました。わずか数年や数十年の経験を物差しに判断するには材料が足りないようです。いたずらに心配する必要はないですが、万一のことがあっても動じないだけの備えをしておくことが大切だと改めて思いました。

(シラベルカ班 札幌放送局記者 吉村啓)

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