NHK札幌放送局

エア・ドゥ 初号機と歩んだ20年

ほっとニュース北海道

2021年1月21日(木)午後9時50分 更新

北海道の航空会社、「エア・ドゥ」の初号機。水色と黄色のラインに「試される大地 北海道」のロゴが描かれた真新しい機体が印象的だった。会社のコスト削減のため、20日、この初号機が最後のフライトを終えた。20年間、ともに歩んできた整備士は、この日を特別な気持ちで迎えていた。 

初号機のラストフライト
20日午後。羽田空港にエア・ドゥの初号機が降り立った。駐機場では、横断幕を掲げた社員が最後のフライトを終えた機体を出迎え、長年の貢献をねぎらった。降りてきた乗客の中には、このフライトのために乗ったという、ファンの姿も。「もう最後だったんで一応予約してとりあえず乗った。このまますぐ北海道帰ります。引退はちょっと残念」と語った。別の乗客は「この機体にはお世話になったので感無量。最後に乗れてよかった」と興奮気味の様子だった。

道民の希望を一身に背負って

北海道を拠点とする航空会社「エア・ドゥ」は、平成8年11月、養鶏会社を経営していた浜田輝男を中心に、道内の中小企業の経営者などが出資して設立された。当時、新千歳空港と羽田空港を結ぶ路線は、大手航空会社に占められ、運賃は高止まりしていた。新会社は業界に風穴を開けて、安い運賃を実現し、北海道経済の活性化につなげることを目標に掲げた。

その旗頭となる初号機は、会社設立から2年後の平成10年7月、北海道に初めて姿を見せた。北海道の「すがすがしい空」と「大地の輝き」を表す水色と黄色のライン。特徴的な真新しい機体に、関係者の希望は膨らんだ。その年の12月には大手より35%も安い運賃で、初めてのフライトを実現。道民の熱烈な歓迎を受けた。

初号機とともに「一歩前へ」

初号機とともに歩んできたのが、整備士の石黒敏史(42)。石黒は平成13年に、前に勤めていた会社を辞めてエア・ドゥに飛び込んだ。入社して初号機を見た時の印象について、こう思い出を語る。

エア・ドゥ整備士 石黒敏史
「真新しい機体が輝いて見えた。『試される大地 北海道』と『一歩前に出る勇気があればきっと何かが始まる』というロゴが印象的で、自分自身もまさしくその言葉の通り、一歩前に踏み出して新たなチャレンジをして、初号機といっしょに成長していこうと決意したことを覚えている」

経営破綻の荒波にも支えに

しかし、エア・ドゥの快進撃は長くは続かなかった。

石黒が入社した直後の平成14年6月、エア・ドゥは経営が悪化し、民事再生法の適用を裁判所に申請した。就航まもなく大手各社が一斉に割引攻勢に出たため、思うように利用客を獲得できなくなり、行き詰まりにつながった。

会社の状況が暗転したことに、石黒の気持ちは揺れた。そのときに支えになったのも初号機の姿だったという。

エア・ドゥ整備士 石黒敏史
「気持ちの浮き沈みは当然あったが、自分が整備した初号機がお客様を乗せて、大空に飛んでいく姿を見ると、気持ちは少し楽になる部分はあった」

会社はその後、全日空と提携して経営を再建し、3年後に再生計画を終了。路線も全国に広がり、念願の国際線チャーター便も運航した。当初の姿とは異なるものの、北海道の航空会社としての地位を取り戻した。

初号機の「意思」を受け継ぐ

最後のフライトを終えた初号機。その機内に石黒の姿があった。無事に飛び続けてきてくれた感謝の思いを伝えたいと有志で掃除を行っていた。かみしめるように作業にあたりながら、石黒は静かに語った。

エア・ドゥ整備士 石黒敏史
「長い間お客様を乗せて飛び続けたこの機体に、もうお客様が乗ることもないっていうのは寂しい気持ちもあるが、長いこと飛び続けてきたことにすごく感謝している」

そして、職員の代表が機体に別れのメッセ-ジを書きこんだ。「22年間ありがとう!!」、「沢山の思い出をありがとう!!」、それぞれがあふれる思いを書きつける中、石黒は「先輩22年お疲れ様でした。その意思を僕らは引き継いでこれからも頑張ります」とつづった。初号機の「意思」とは?その意味について尋ねると、石黒はこう話した。

エア・ドゥ整備士 石黒敏史
「コロナ禍で航空業界も厳しい状況にあるが、そうした時に、自分たちがこれからも安全な機体を提供して就航していくためにはいろんな創意工夫が必要だと思う。『失敗を恐れずに進んで行け』というのが初号機の当時のボディーカラーのロゴに含まれるメッセージ。しっかりと受け継いでこの状況を乗り越えていきたい」

新型コロナウイルスの影響で航空業界はかつてない苦境にある。今回の初号機の引退も、機材を小型化してコストを削減するためだという。こうした厳しい状況ではあるものの、エア・ドゥの関係者には石黒の言うように、改めて創業時の「意思」を思い起こして、北海道を活性化するという役割を果たしてほしい。役目を終えた初号機の姿を見て、私もそう思った。(敬称略)
(千歳支局・岡﨑琢真)



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