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WEBニュース特集 鷲別岳の山小屋管理人“最後の冬”

北海道WEBニュース特集

2020年11月27日(金)午後2時25分 更新

室蘭市と登別市にまたがる鷲別岳(別名・室蘭岳)は市街地から近く、多くの市民が気軽に登山を楽しんでいます。その山のふもとにある山小屋を室蘭市が閉鎖することを発表しました。25年間、山小屋を守り続けてきた管理人の最後の冬を見つめました。 (取材:上野哲平カメラマン)

登山者に親しまれた山小屋

鷲別岳は登山道がダケカンバの林に囲まれ、標高911メートルの山頂から室蘭市の風景が一望できます。取材に訪れたのは11月中旬。登山者たちは息を弾ませながら、こう話してくれました。

「頂上は最高にすばらしい景色でした」「秋は紅葉がきれいだし、冬も比較的簡単に登れるんですよ。四季を通じて楽しんでいます」

その登山道の入り口にひっそりと建つ山小屋が「白鳥ヒュッテ」です。

管理人の春日功さん(80)は登山好きが高じて建設の仕事から転身し、室蘭市が所有する山小屋を25年間、1人で守り続けてきました。

白鳥ヒュッテ管理人 春日功さん
「山好きな人が体力が衰えて登山ができなくなったらどうするか。自分の小屋じゃないけど、そういう所に巡り合ったのかな」

管理人25年目の決意

白鳥ヒュッテは昭和24年に完成し、毎年200人が宿泊してきました。しかし、建築から70年余りがたって傷みも目立ちます。

室蘭市は去年、建物の老朽化や財政難を理由に山小屋を閉鎖すると発表しました。民間団体に運営を引き継ぐ動きもありますが、春日さんは市が管理を終える来年3月で山を下りる決意をしました。

「だんだん年をとると体が分かる。口だけは達者だけど、体は動かない」

登山者の安全を願い続けて

管理人として迎える最後の冬。ことしは新型コロナウイルスの感染が広がり、宿泊の予約をすべて断っています。いつもとは違う時間を過ごす春日さんは、寂しげな表情を浮かべていました。

春日さんが山小屋で願うのはただ1つ、登山者の安全です。この冬も気持ちは変わりません。山小屋を守り続けてきた春日さんに、顔見知りの登山者がねぎらいの言葉を贈りました。

「何十年も小屋を見守ってくれたんだから、名誉市民だよ」

鷲別岳の山小屋とともに歩んだ四半世紀。春日さんは最後の冬を過ごす今の心境をこう語ってくれました。

「嫌だと思ったことは1つもない。人とのふれあいにしても、自然とのふれあいにしても。この山小屋を愛する人もけっこういる。願うのは事故がないこと。小屋番だから、それだけですよ」

《取材後記》

「25年間、嫌だと思ったことはなかった」と言い切った春日さん。その後に「たくさんの人に支えてもらったから、1人じゃなかった」と続けました。
築70年以上がたった白鳥ヒュッテはいたるところにガタが来ています。ドアは閉まりが悪く、ガムテープで補修されているほどボロボロです。春日さんは登山者と協力し、窓や階段など多くの場所を修理して白鳥ヒュッテを守ってきました。

そんな春日さんが唯一「つらい」と言ったのは孤独です。たった1人、静寂の中で誰とも話さない時間が3日も続くと、ものすごく不安になるそうです。人と話したくなり、用も無いのにコンビニに行って買い物をしてくることもあると言います。
その孤独を癒すように、登山者が春日さんを訪ねています。山小屋まで来たのに山に登らず、春日さんとコーヒーを飲んで話をして帰るという男性もいました(週3回ペース!)

多くの人々の思い出がつまった白鳥ヒュッテ。今後のことはまだはっきりしませんが、これからも多くの出会いと笑顔が生まれる場所であり続けてほしいと感じました。

(室蘭放送局・上野哲平 2020年11月25日放送)

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