NHK札幌放送局

「命があって、健康でいられる」幅田三恵子さん

いぶりDAYひだか

2020年8月3日(月)午前10時49分 更新

久々に会ったその人の表情は明るく、笑顔が戻っていた。
厚真町の幅田三恵子さん(69)は「震災から1年のときはふさぎこんでいたけど、趣味のパークゴルフ仲間から“出ておいでよ”と電話をもらって気持ちが変わったのよ」と打ち明けてくれた。

震災の日

2年前の9月6日。幅田さんの自宅の裏で土砂崩れが起きた。自宅周辺にまで大量の土砂が押し寄せ、なぎ倒された大木が家の寸前にまで迫っていた。車庫は押しつぶされたが、奇跡的に自宅は土砂に飲み込まれず、夫とともに助かった。

幅田さんとの出会い

幅田さんと出会ったのはその6日後。自宅前で立ち尽くしていた幅田さんに取材で声をかけたのがつきあいの始まりだ。り災証明の申請のために一緒に町役場まで行ったこともある。申請を終えた幅田さんは「現状では自宅に住むことはできない。しばらく我慢して、待つしかないのかな」と力なく話していた。その後、町内にある双子の妹の家に一時身を寄せ、今は「みなし仮設住宅」で暮らしている。

地震から2か月後にも幅田さんのみなし仮設を訪ねた。夜まで話を聞いていると、幅田さんが手作りの料理をふるまってくれた。大変な状況のなかの優しい気遣いが心にしみたことを覚えている。

心情の変化

震災から1年となる去年9月。幅田さんの様子が変わっていることに気付いた。趣味のパークゴルフをやめ、以前のような明るさや笑顔がなくなっていたのだ。「ゆううつで、やる気が出ない。うつ病の人の気持ちがいまは分かる」とつぶやいた。外出する意欲も失っていた。

前を向いて生きる

久々の再会で、いまの心境を語ってくれた。

「とにかく健康で、ばかだと言われるくらい元気でいたい。あのとき、もしかしたら死んでいたかもしれないけど、いまもこうして命があって、健康でいられている。そのありがたさを2年前に実感したことを思い出したから、いまは前を向いて暮らすことができている。今後も前向きに生きていきたい。生きていれば、いろんなことができるから」

これまで頑張ってきた証しとして、目標があるという。町内に自宅を再建する。ことし9月、家族10人で登別温泉に旅行に行くことも楽しみだ。4歳の孫がときどき家に来てくれるのもうれしい。

帰り際、幅田さんが声をかけてくれた。

「私のことを忘れないでいてくれるのが一番うれしいよ」

(2020年8月3日)

兼清光太郎 札幌局記者 
2015年入局 札幌局~帯広局~札幌局 現在は災害・気象、自衛隊、公安調査庁などを担当

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