NHK札幌放送局

第1回「人が守り育てる自然」

知るトコ、知床チャンネル

2020年7月20日(月)午後4時05分 更新

世界自然遺産・知床。今年7月で登録15年を迎えました。 知床が世界自然遺産に登録された理由の1つは、 40年以上前から今日まで続いている地元の人たちによる自然保護活動があります。 知床の森を守り続けている人たちの思いを取材しました。(取材・北見放送局記者 関口祥子)

地元・斜里町の当時の町長、午来昌さんです。知床が世界遺産になったのは、地元の人たちが40年以上にわたって、自然を守り、育ててきたためと振り返ります。

午来昌さん
「満場一致で拍手で決まったときには自然と涙が流れた。自然の恵みをうけて私たちは暮らしてこれたから、その原風景を壊してしまって何が人間なんだ、何が生きる原点なんだという思いで自然を守ってきた」

知床では、1910年代に開拓が始まり、入植者が農業を営んできました。しかし、入植者の離農が進んだ1960年代後半、その跡地は、全国の不動産業者に買い取られ、乱開発の危機に陥りました。

さらに、1980年代には、跡地の近くの国有林で、林野庁が、ミズナラなどの巨木500本あまりを伐採しました。地元の人たちは、そのたびに自然を守る活動を続けてきました。

「知床の自然は、人の手で守り続けなければならない」。
43年前に斜里町が始め、今も続くのが、「しれとこ100平方メートル運動」です。100平方メートルあたり8000円の寄付を全国から募り開拓跡地を買い取って植林し、失われた森を再生します。のべ4万9000人が賛同し、5億2000万円が集まりました。

10年前、買い取りは完了。町有地を含めた861ヘクタールの土地では、森林再生の取り組みが今も続いてます。午来さんは、「私たちだけで終わりじゃない。100平方メートル運動なんかは本当に息の長い、まだ始まったばかりの取り組みだ」と語りました。

森林再生は現在どのようになっているのか。15年間、森林再生を続けてきた知床財団の松林良太さんに、100平方メートル運動の運動地を案内してもらいました。

運動が始まった翌年の1978年に木が植えられた植林地では、広葉樹のシラカバと針葉樹の赤エゾマツが列状に植えてありました。40年が経過して、ようやく10メートルを超える木に育ちました。

松林さんたちは、これまでに46万本を植えてきました。運動は今、20年ごとの中期計画の第2期を迎えています。かつての知床にあった広葉樹の再生を目指しています。鹿に食べられないように、幹にネットを巻いて育てています。

松林良太さん
「実際森づくり、やりたい森づくりがスタートしてそのゴールは100年、200年もっと先なのでこつこつ続けていけるかというのが大事かなと思っています」

しかし、登録から15年がたった今、知床では、ごみの不法投棄が相次ぐなど
自然との向き合い方があらためて問われています。

知床の自然保護の精神を受け継ごうと、若い世代が取り組みを進めています。動画を撮影しているのは、知床が世界遺産に登録された年に生まれた地元の中学生たちです。どうしたら知床の魅力が多くの人に伝わるのか、撮影の仕方や話し方の意見を出し合い、試行錯誤しながら進めます。

知床を撮影した地元の中学生
「知床はたくさん自然があって自分たちも懐かしめる、いい場所だと思います。自分たちが知床が世界自然遺産に登録されたのと同じ年に生まれたということで、今度は自分たちが知床の自然を守っていけるようにしてきたいです」。

子どもたちが撮影した動画は、今後編集作業を行い、来月21日午前10時から行われる千歳市にある「千歳市まちライブラリー」で、一般公開し、紹介することにしています。

元斜里町長の午来さんは、自然保護の思いを受け継ぐ人たちが、これからも多く育ってほしいと願っています。

午来昌さん
「世界自然遺産がある知床から、地元の子たちが飛び出していく。そして世界中の人々にいろんな発信ができれば、こんなすばらしいことはない。森づくりについては、まさに本当に入り口。これからが正念場。自然を守るためにいろいろな試行錯誤をする中で、今日までいろんな経験をしてきたけれど、その経験が十分生かされるように、これからも財団含め、取り組んでいってほしいなと思っています」

「しれとこ100平方メートル運動」の最終目標は、知床にかつてあった原生の森の再生。そのゴールは100年以上も先です。一度失われた自然の再生にはそれだけの時間がかかります。

森林再生以外も、ごみの不法投棄や、サケの遡上を妨げるダム、それにシカやトドによる食害といったさまざま課題があり、多くの人たちが解決に向けた模索を続けています。

簡単には解決出来ない問題ですが、自然を守るために私たち一人ひとりに何が出来るのか、取材を通じて、改めて考えていきたいと思いました。

(取材・北見放送局記者 関口祥子)


第2回「海洋ゴミと知床」web記事はこちら

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