NHK札幌放送局

住民主体で進める避難の備え

北海道道

2022年2月1日(火)午後5時27分 更新

昨年12月、国が公表した「千島海溝」と「日本海溝」での巨大地震と津波の被害想定。 最悪の場合、道内の死者は13万7000人に達するとされています。 でも対策をとればその数をおよそ8割減らすことができるとされています。 そんな中、長年住民主体で避難への備えを進めている場所があります。 道東、釧路市にある大楽毛地区です。 (取材:NHK札幌放送局ディレクター 靍田洋介) 

高齢化進む地区

5メートル以上の津波が押し寄せると想定される大楽毛地区。
ここでおよそ50年暮らす向後芳昭さん(81歳)。
おととしまで町内会長を務めていました。

向後さんの住む地区で進んでいるのが住民の高齢化です。
町内会に加入する252人のうち、70歳以上はじつに173人にのぼります。

向後芳昭さん
「高齢者とか体の不自由な方は、わしは(避難は)いいと。もういいと。
本当に難しい事だなと思っています。」

“津波避難困難地域”に指定

向後さんの自宅は海岸から500メートルほど。
このあたりは周囲に高台がなく、避難が難しい“津波避難困難地域”に指定されています。
避難するときは線路を超えた先にある病院までいかなくてはなりません。
渡るには自宅近くにあるふたつの踏切と陸橋を通ることになります。

しかし、踏切には苦い記憶があります。
28年前におきた北海道東方沖地震では、踏切の手前で列車が緊急停車。
踏切が下がったままとなりました

向後芳昭さん
「踏切を女房があげたんですよ。ただ出るまでが本当に時間がかかって大変だった。」

避難の妨げになるものを知っておく

この日、大楽毛地区で毎年行われる避難訓練に参加した向後さん。
避難場所まではおよそ1キロ。踏切が渡れないことを想定し、迂回するルートを通ります。

線路沿いには1メートル以上の高さのフェンスが張り巡らされています。
安全に渡るには最寄りの踏切から600メートル離れた陸橋を通るしかありません。
登りの階段だけで40段。老朽化も進んでいました。

歩くことでわかった新たな課題。                                                                                                                                                             
向後さんは避難の厳しさを改めて実感しました。

向後芳昭さん
「たいして長い距離じゃないけど息切れするくらいですから。高齢者にとっては大変かなと思います。常日頃からこういうことがあると意識をもって行動していないといけない」

安心して避難するために

訓練後、参加した住民と市の担当者が話し合いました。

参加した住民
「大楽毛に住んでいる人たちは1メートルすら浸水した経験がない。津波が来たら大変だという思いは何も変わらない」

住民としては引き続き厳しい現状を訴え、新たな避難場所の建設を求めていく考えです。

大楽毛地区町内連合会 会長代行
土岐政人さん

「ハードの部分、施設を作るということは行政のほうで一刻も早く進めていただければ/その次にどれだけたくさんの人が避難をしてくれるかというところは私たちが努力をしていかなければならない」

北海道大学の高橋浩晃教授によると、北海道は全国的にも避難施設や避難所の整備が進んでいないといいます。今回の被害想定を受け、道は財政支援を国に強く求める意向を示しています。
自分たちの避難ルートにどんなものがあるのか、実際に避難をするときにスムーズに行動できるよう一人一人が準備しておくことが大切だと思います。

各地の取り組みについてはこちら
「自ら考える」津波避難 鹿部町の訓練から

NHK北海道の地震・津波防災情報はこちら

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