NHK札幌放送局

たいやきの甘い味を楽しめる日常

ほっとニュース北海道

2021年9月8日(水)午後0時10分 更新

被災地の今を確かめたくて、むかわ町に来た。
蒸し暑さを感じる8月上旬、町の中心部にある道の駅の駐車場には、あちこちにキャンピングカーが止まっていた。湘南、所沢、久留米のナンバー。全国各地からやって来たのだろう。夏の北海道の光景がそこにあった。

道の駅の向かいにある、真新しい黄色の店舗に気づく。たいやき屋「いっぷく堂」。扉を引いて中に入ると、店主・工藤弘さんが笑顔で迎えてくれた。

「こうして店を再開できただけでね、ありがたいことですよ」

3年前の記憶をたぐり寄せる。2018年9月6日は、まだ夏の気配を残した暑い日だった。

地震の被害状況を取材しようと、町役場に電話をかけてもつながらない。近くの安平町は震度6強。テレビには、山肌がむき出しになった厚真町の土砂崩れの映像が映し出されている。私は、電話取材を切り上げて、室蘭からむかわ町に向かった。

午前11時すぎに到着。車で一走りするだけで、ただ事ではない被害が出ていることを知る。中心部の通りに並ぶ住宅が屋根に押しつぶされている。どれほどの激しい揺れがあったのか。最初に証言してくれたのが工藤さんだった。

「新聞配達のために午前3時に家を出たんだ。すぐに、ものすごい揺れが起きた。家に戻ったら、1階がつぶれていたよ。家族は2階から助け出してなんとか無事だったんだけど…」

工藤さんは、新聞販売店を営むかたわら、地元で発掘されていた恐竜化石を町おこしに生かそうと、「恐竜たい焼き」の販売を始めたばかり。しかし、店舗を兼ねた自宅は、地震によって完全に倒壊していた。

仮設住宅での暮らしは2年続き、去年11月に自宅を再建したという。

「やっぱり自分の家はいいよ。仮設住宅を出なくちゃいけない時期が決まっていたでしょ。ようやく落ち着いた」

地震の前、住宅や店舗が立ち並んでいたむかわ町の中心部は今、くしの歯が欠けたように、さら地が目立つ。壊れた建物の跡地には、雑草が生い茂っている。小さな町が一度災害の被害を受ければ、にぎわいを取り戻すことの難しさを物語っているように感じた。

それでも、工藤さんから後ろ向きなことばは出てこない。

「だって、だれも暗い話なんて聞きたくないでしょ。みんなで前を向いていかないと、ね」。

そう言うと、店を訪れたお客さんの注文を受けて、再び恐竜たいやきを焼き始めた。自然体。肩に力が入った「復興」ということばは聞かれなかった。

店を出て、たいやきをほおばった。口の中でクリームやあんの甘さが広がる。こうしてほっとする日常を送れることが幸せで大切なんだよ、と教えられた気がした。

(取材・室蘭放送局 遠藤英訓記者)

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