NHK札幌放送局

平和への願い 貼り絵に込めて ~戦後77年 いま見つめる北海道の記憶①~

ほっとニュースweb

2022年8月10日(水)午後4時54分 更新

戦後77年。 平和への願いを「貼り絵」で表現しようと取り組む女性が北海道砂川市にいます。 ちぎっては貼る画用紙の1枚1枚に込められた思い。原点となったのは幼いころに経験した戦争の記憶でした。 (札幌放送局記者 竹村知真) 

「ゲルニカ」を貼り絵で

女性は一戸玲子さん(83)。
私が初めて一戸さんに出会ったのは砂川市で開かれた市民の作品展でした。
一戸さんは、スペインの画家、パブロ・ピカソが描いた絵画「ゲルニカ」を題材にした貼り絵を出品していました。
「ゲルニカ」は1930年代のスペイン内戦中に起きたドイツ軍による空襲の様子を描いたもので、戦争の悲惨さを今に伝える作品として知られています。
なぜ、「ゲルニカ」を題材に選んだのか。
きっかけは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のニュースでした。

「ウクライナで小さい子どもが亡くなっていることを伝えるニュースを見て心が痛んで貼ってみようと思ったの。普通だったら誰も見てくれないかもしれないけれど、こういう時だからこそ、私の貼り絵を見て、みんながどう感じるかなと思ってやってみたの」(一戸玲子さん)

貼り絵との出会い

一戸さんが貼り絵と出会ったのは15年前のこと。このころ、一戸さんは、脳梗塞で右半身にしびれが残り、思うように体を動かせなくなっていました。
これまで当たり前のように出来ていたことが出来なくなり、気持ちが塞いでいたといいます。

「突然、体の右側が動かなくなったんだもん。これからどうしようって、泣いてばっかりいましたよ。そしたら、看護師さんに怒られて。『あなただけじゃないよ』って。『がんばんなさい』って言われて、それから奮起したのよ。頑張ろうって」(一戸玲子さん)

その後、施設に入り、リハビリを兼ねて始めた貼り絵。もともと絵画を鑑賞するのが好きだった一戸さんは、すぐにのめり込みました。
今では、ほぼ毎日、貼り絵作りに取り組み、これまでに制作した作品は100枚以上に上ります。

「絵が一番好きだったから。ああ、やっぱり貼り絵、いいなあって。好きなものを貼らせてもらってね。それで、だんだん、のめりこんじゃったの。今となっては生きる励みだもん。自分でやりたいことが出来たから、うれしくてうれしくて、没頭したわね」(一戸玲子さん)

戦争の恐ろしさ

平和への願い、その原点となったのは自身が幼いころに経験した戦争の記憶でした。

太平洋戦争末期、一戸さんが暮らしていた空知地方の上空にも米軍機が飛来しました。警報が鳴ると、家の近くの防空ごうに避難したことを覚えています。

「サイレンが鳴って、電気を消しなさいって言われて、そして、防空ごうに入りました。爆弾が落ちるかなと思ってね。怖かったですよ。兄弟も抱き合ってました。飛行機が『ブーン、ブーン』っていうのは聞こえましたよ。早く終わってくれないかなと思った。戦争は2度と嫌ですね、本当。広島、長崎なんてかわいそう。戦争はなくなってほしい」(一戸玲子さん)

新たな挑戦

終戦から77年。一戸さんは新たな大作に挑戦することにしました。
芸術家、故・岡本太郎さんが制作した巨大壁画、「明日の神話」を題材にした作品です。
「明日の神話」は原爆がさく裂した瞬間をイメージして制作されたもので、作品には反戦のメッセージが込められています。
世界で戦争の悲劇が繰り返され、核兵器の脅威が高まっている今だからこそ、戦争の恐ろしさを分かってもらいたいーー。
その思いを、ちぎった画用紙1枚1枚に込め、貼り付けていきます。

「岡本太郎先生が制作している時に思っていた気持ち、悲しかったこととか、恐ろしかったこととか、そういうことを考えながら作りたい。平和になってほしい。どこに行っても戦争のない平和な国になってほしい。幸せに、平和に暮らしたいよね」(一戸玲子さん)

完成予定は10月。
作品が出来上がったら、まず通っている福祉施設の利用者に見てもらうことにしています。

自身が体験した恐ろしい戦争の記憶。そこから湧き出る思いーー。
平和の尊さを伝える一戸さんの取り組みは続きます。

空知地方の戦争の歴史についてはこちら

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