NHK札幌放送局

温泉だけじゃない!豊富で鳴り響くアツい音楽

ローカルフレンズ制作班

2021年4月15日(木)午後4時43分 更新

ディレクターが地域に滞在して「宝」を探す新番組「ローカルフレンズ滞在記」。4月の舞台は、宗谷地方です。第3週目は、温泉の町でローカル魂を叫ぶロックンローラーとの出会いがありました(越村D)

豊富も濃いよ

ディレクターが1か月、北海道のどこかに滞在するこの番組。地域の魅力を伝えたいとNHKに応募してくれた人を“ローカルフレンズ”と呼び、ディレクターは、そのディープな人脈をたよりに、さまざまな人と出会い、その地域ならではの暮らしを体感していきます。僕は、引き続き今回のローカルフレンズ・尾崎篤志さん(尾崎さんについてはこちら)が営むゲストハウスに拠点をおいて、滞在を続けています。前回、先週4月8日のアンケート結果、今は豊富町にきています。

尾崎さん「豊富も“濃い人”が多いよ。温泉郷と音楽フェスが融合とかね」
越村「温泉と音楽…!?」

尾崎さんが会わせたい人は、豊富温泉にある温泉旅館にいるとのことで、まずはJRで豊富駅を目指します。稚内駅からは50分ほどかかりますが、車窓からカメラのシャッターをきりまくっていたらいつの間にか着いていました。駅には、豊富観光情報センターが隣接しているので、まずは豊富町についていろいろとお話を伺ってみます。観光スポットや自然の話題に夢中になっていると…。

やらかしました。乗るはずだったバスを逃し、温泉街までは徒歩でいくことに。この道のり、車だと10分ほどですが、歩くと1時間以上かかります。豊富の風を全身に感じながら歩を進めました。

強風で髪型がグチャグチャなりながらも、辿りついた温泉旅館で待っていてくださったのが、上坂さんです。

上坂仁哉さん(38)
「ニュー温泉閣ホテル」3代目“見習い”
豊富生まれ 高校卒業とともに地元を離れ、東京の専門学校で音響を学ぶ 
その後札幌の音響会社につとめ、10年ほど前にUターン

笑顔が印象的な上坂さんは、豊富温泉街で半世紀ちかく続くホテルの3代目“見習い”。食事の調理や清掃などをされています。「温泉と音楽」とは一体どういうことなのか、謎の答えを知りたいと思い、お話を伺っていきます。

上坂さん「ここの泉質って本当に珍しいんです。温泉を是非見てほしいです」

豊富温泉は、石油や天然ガスと一緒に湧出し、世界でも珍しい油分を含んだお湯が楽しめます。ということで、さっそく上坂さんと二人で温泉に浸かってみました。

上坂さんによると、油分やカルシウムなどを含んだお湯は保温効果が高いといいます。上坂さんにとって、ここは実家の浴室。幼い頃からこのお湯に浸かってきました。掃除が終わったばかりの一番風呂を楽しむこともあるんだとか。

上坂さん「お湯のチェックをしないといけないので。今日のお湯はどうかなと自分の体で確かめています」
越村「……なるほど」

お湯に浸かりながら上坂さんにお話を聞いていると、Uターンした時の話をしてくれました。札幌の音響会社をやめ、帰郷した時目のあたりにしたのは、商店の数や人通りが減ったふるさとの姿だったいいます。ずっと趣味で音楽をやっていた上坂さんは、豊富での暮らしも音楽で楽しくできるのではないかと考えはじめます。


豊富で響かせる音楽

上坂さんは、旧友たちに声をかけ、バンドを結成します。その名も“タクランケ”。滞在16日目は、深夜からバンドの練習があるとのことで、お邪魔しました。

タクランケが奏でるのは、ロックミュージックに民族楽器を取り入れた「アイリッシュパンクロック」というジャンル。メンバーのお仕事は個性豊かです。写真一番左、ウッドベースを演奏するつかささんは、牛の爪を整える削蹄師(さくていし)、その隣でティーンホイッスルとボーカルを担当するタクミさんは温泉旅館で料理人として働かれています。写真右のギター担当タクさんは酪農家、奥でドラムをたたくケンタローさんは林業に携わっています。この日は予定が合わなかったアコーディオン担当のあすみさんと、マンドリン担当の上坂さんを加え、6人のバンドです。

さらに、上坂さんたちの思いは加速していきます。豊富をもっと盛り上げたと2012年に始めたのが、屋外での音楽フェス「トヨトミサイル」です。

トヨトミサイル
豊富温泉にあるスキー場に隣接したスペースで毎年夏に開催
宗谷地方だけでなく全道から数多くのミュージシャンが集結する

このフェス、機材の調達や設営は、上坂さんが所属する実行委員会を中心に、地元の人たち協力で成り立っているんです。これまでに9回開催し、多い時には500人ほどが会場に集まりました。出演する人たちのなかには、稚内や豊富など宗谷地方で活動する高校生バンドも少なくありません。

上坂さん「地元に帰った時、ギターを背負って歩いている高校生を見かけたんですよね。この子たちが発表する場をつくらないとなって思ったんです」


僕のなかで最高の“音楽バカ”です

かつてトヨトミサイルに出演した若者にも話を聞くことができました。

内山貫太さん(25)
豊富出身 弟・勇馬さんと一緒に「EVI」というバンドで活動
2018年に活動の拠点を東京にうつす

地元をはなれ、東京で活動する内山さんにとって、トヨトミサイルや豊富町は“ホーム”だといいます。地元でバンドやフェスを続けている上坂さんたちは、内山さんにとってどう見えるのか、聞いてみました。

内山さん「東京でいろんな音楽関係の人と出会いますけど、僕の中では、豊富の大人たちこそ最高の“音楽バカ”ですね笑」

そんな内山さんが好きな曲があるといいます。それは上坂さんたちが音楽フェスのテーマソングとして作った「トヨトミサイルの歌」です。

この曲のなかには、こんな一節があります。

♪生きてゆくそれぞれの 道の途中で
迷う事があれば 思い出せ
ここには俺たちが バカな大人が
いつ迄もバカなまま 待っている

内山さんにとって、音楽とは本来、自分のやりたいものを追求するものだといいます。しかし、東京では周囲にミュージシャンが多いぶん、他人と自分を比較してネガティブな気持ちになることもあるんだとか。そんな時、地元豊富のミュージシャンたちの曲をきいたり、トヨトミサイルのことを思いだしたりしているといいます。

内山さん「大人たちが楽しんでいる姿を見ていたからこそ、純粋に音楽が好きだなという気持ちに戻れるんです。挫けそうになっても頑張れます」

今年開催すれば10回目となるトヨトミサイル。どんな思いで続けているのか、聞いてみました。

上坂さん「豊富に根をおろして生きていくという人たちばっかりなので、この豊富町でどれだけ楽しいことができるかなんですよね。若い人たちにその姿を見てもらって、“自分たちも何かできるかもしれない”とか、一回外にでた子でも“豊富に戻ろう”とか思ってくれたら嬉しいなと」

辛い時に心の支えになる思い出の人たちと、帰ろうと思えばいつでも帰れる場所の存在。地域の大人たちがその役割を担い、その場所を作っていることこそ、豊富の大きな魅力なんじゃないか。そんなことを温泉につかりながら考え、滞在3週目を終えました。


第3回放送は 4月15日(木)午後6:10~
「ほっとニュース北海道」

2021年4月15日

関連情報

弟子屈は大自然の宝庫

ローカルフレンズ制作班

2021年6月3日(木)午後4時05分 更新

ローカルフレンズ滞在記 Web

ローカルフレンズ制作班

2021年7月19日(月)午後2時30分 更新

田舎道にメニューのない料理店

ローカルフレンズ制作班

2021年5月13日(木)午後5時17分 更新

上に戻る