視聴者のみなさんの声を元に取材する、「道南の声、受信中!」。
今回は「モノクロ写真をAIカラー化してほしい」という声が届きました。
59年間、大切に保存してきたのはどんな写真なのか、取材しました。
父親との思い出の1枚
今回、声を寄せてくれたのは函館市に住む内藤重彰さん61歳です。

投稿のきっかけは、「ほっとニュース函館」で放送した「道南アーカイブススペシャル」で、昭和初期のモノクロ映像が、NHKが開発したAIカラー化システムでカラーによみがえるのを見たからでした。この放送で思い出したのは、大切にしてきた1枚のモノクロ写真です。
「道南アーカイブススペシャル」の詳細は記事の最後に。
思い出の写真がこちら。

撮影されたのは59年前。今は亡き父親・内藤重春さんとの写真です。当時の父親は3兄弟を育てるため、毎朝牛乳配達の仕事をしていました。内藤さんは2歳のころから20歳になるまで毎朝配達を手伝っていたそうです。
内藤さん
「この写真がモノクロのため、思い出として薄れてきている。
大切な記憶なのでカラー化して欲しい。カラー化お願いします!」
カラー化開始!
まずは内藤さんに当時の色を思い出してもらいました。
記者:車の色は何色ですか?
内藤:車はアイボリーで服の模様は黒色だった。
記者:服の横線は何色になりますか?
内藤:赤色。濃い赤色だったはず。
記者:お父さんの肌の色は?
内藤:野球をしていたのでいつも日焼けしていた。茶色かったよ。

果たして、AIカラー化は成功するのか
AIカラー化を担当するのは、NHK函館放送局の映像編集チームです。

まず、参考資料がないかNHK函館放送局に保存されていた同年代の資料を探しました。しかし、保存されていたのはモノクロ映像だけでした。函館局の放送がカラーになったのは、写真が撮影された6年後(1970年)だったのです。
頼みは編集の最新技術、AIカラー化システムだけでした。カラー化マシンに写真のデータを取り込み、編集作業を始めました。内藤さんから聞いた色の情報をシステムに打ち込んでいくと、AIが画像データを学習し、顔の輪郭や色の濃淡を解析してくれます。

そして、作業すること3時間。59年の時を超えて、カラーで蘇りました。
依頼から二週間後、ふたたび内藤さんを訪問。
写真を見る前に今の思いを聞きました。
内藤さん
「鮮やかに現代によみがえっているか気になります。
どんな感じにできているのか楽しみです」

写真を開けてあふれた思いは父親への感謝でした。3兄弟で末っ子だった内藤さん。
父親の手は、いつも日焼けしていて、大きくてたくましく、今の自分と比べものにならないほど厚くて大きかったそうです。父親の大きな手は、内藤さんを大切に抱いているようにも見えます。
野球好きでとにかく優しかった父親。内藤さんも父親の背中を追い、3人兄弟で唯一甲子園を目指す高校球児でした。学校に行く前に毎朝牛乳配達を手伝い、お父さんは毎晩のように野球の練習相手をしてくれました。59年前に撮影された1枚のモノクロ写真は、支え合った親子の原点でした。

内藤さん
「本当に大切にしていた写真だったのでカラーで蘇ってありがたい。小さい頃から野球を教えてくれて、親父のたどった道と同じようなことをやってる人生でした。牛乳配達して兄弟3人育ててくれたので今は本当に感謝です」
AIカラー化で終わらない
実は内藤さんがよみがえらせたのは写真だけはありませんでした。写真の後ろに映っていた牛乳配達に使っていた車ですが、去年、同型の車を全国各地で探し、購入したあと整備をすすめ、3月23日に完成しました。当時の牛乳メーカーの看板の使用許可もとり、忠実に再現しました。また、車検も取得し実際に公道も走らせることができるそうです。

道南の声受信中では、みなさまの身近な疑問や興味を全力で調査します。モノクロ写真のAIカラー化の依頼もお待ちしております。まずはNHK函館放送局のホームページへエピソードをお寄せください。