NHK札幌放送局

日本最北!利尻島のウイスキー蒸留所から目指すオンリーワン

道北チャンネル

2022年10月26日(水)午後3時34分 更新

北海道稚内市からフェリーで1時間40分、自然が豊かな利尻島にオープンした日本最北のウイスキー蒸留所が稼働を始めました。この蒸留所のオーナーは、アメリカ・ニューヨーク出身の起業家。利尻島から世界でオンリーワンのウイスキーを目指す、そのわけは!? (稚内支局 山川信彰) 

きっかけは家族旅行 ニューヨーク出身のオーナーが利尻島で感じたこと

標高1721メートルの利尻山を中心に、豊かな自然が広がる利尻島。

人口およそ4200人のこの島に、ことし7月、日本最北のウイスキー蒸留所が新しくオープンしました。
オーナーは、ケイシー・ウォールさん(44)。アメリカ・ニューヨーク出身でアメリカの大学を卒業後、20年前に日本へ移住。人材派遣業などを手がける会社を経営してきました。

ケイシー・ウォールさん
「オープンを迎えるまでに6年かかりました。皆さんには感謝の気持ちを届けたい」

地元の人たちも大きな期待を寄せています。

利尻町 上遠野浩志町長
「蒸留器を目の前に期待でわくわくしていまして、初めての経験で楽しみにしていました」
バー経営の女性
「利尻島にウイスキー工場ができるなんて想像もしてなかったので、すごい楽しみ。島に来た観光客の方からも質問されることもあって、興味があるんだなと思いました」

オーナーのケイシーさんは、なぜ利尻島でウイスキー作りを始めたのか。
きっかけは、家族で6年前に訪れた利尻島への旅行でした。

ケイシー・ウォールさん
「自然豊かなところに行きたいなって思って、利尻島に来たら大好きになってしまった。この場所、最高!お墓が欲しいって思ったくらい笑」


ウイスキー作りの本場・スコットランドと…

利尻島を初めて訪れた時の感動を今でも鮮明に覚えているというケイシーさん。島の滞在中に、ある場所をふと思い出したのです。
それはウイスキー作りの本場、スコットランドのアイラ島。アイラ島の冷涼な気候、雰囲気が利尻島に似ていると思ったと言います。

さらに利尻には山から湧き出るミネラルを多く含む新鮮な水もあります。そこからウイスキー蒸留所の計画が浮かんだのです。

ケイシー・ウォールさん
「親友がアイラ島にいるので、僕は小さいころ島を訪ねたことが何回もありました。そこの雰囲気や場所が大好きだったのですが、まさか日本で同じような雰囲気の島に出会うとは思わなかったです。ウイスキー作りにとって、利尻は世界一のレベルだと思うし、特別でオンリーワンだと思います」


背景にはジャパニーズウイスキー人気も!

新しく始まった利尻島でのウイスキー作り。実はいま全国では、ジャパニーズウイスキー(日本で生産されるウイスキー)の人気が高まっているのです。

国税庁のまとめによると、去年(2021年)の輸出額は約460億円。2012年から18倍と急増しています。日本から輸出額が最も大きいのは中国。続いて、アメリカ、フランス、オランダ、香港。アジアからヨーロッパまで世界各地へと輸出されているのです。


世界最高賞の道内産ウイスキーも追い風に

さらに、ことし3月には道東の厚岸町で製造されたウイスキーが「ワールド・ウイスキー・アワード」のブレンデッドウイスキー部門で世界最高賞を獲得。道内産ウイスキーへの評価も高まっています。

こうしたなか、ケイシーさんは、世界でオンリーワンの利尻産ウイスキーを作りたいと蒸留所を建設し、国内外で経験を積んだ職人2人を新しく採用しました。

ケイシー・ウォールさん
「30人以上面接して採用しました。2人は特に鼻がすばらしい」

ウイスキーの香りは味にも大きく関わり、品質を理解するためにはバランスがいい味かどうかを鼻で判断する力が欠かせません。


利尻島の年間気温差は45度超!熟成に最適の可能性

ことし10月から始まったウイスキーの生産作業。まずは利尻の新鮮な水と大麦を混ぜ合わせます。そしてアルコール度数を高めるための「蒸留」を行います。

さらに「熟成」。ウイスキー完成までは少なくとも3年間は寝かせなくてはいけないのです。この熟成に最も適していると選んだ場所が利尻島です。

気象台によると、蒸留所が建設された利尻町の去年7月の夏の最高気温は31.9度。一方で、去年2月の冬の最低気温はマイナス14.7度です。気温の差は45度を超えるのです。

ケイシーさんは、年間の気温差が大きいほど「熟成」が進んで深く洗練されたオンリーワンのウイスキーになる可能性があると考えているのです。

ケイシー・ウォールさん
「利尻島は気候がすばらしくて、深い味を作れるのは間違いない。最低3年間は熟成させますが、出来るだけ長く寝かせて、30年、50年間と寝かせるものも作ってみたい。室内でも樽を置く場所によってウイスキーの味は変わってくるしね」

日本最北の蒸留所で生産を目指すウイスキーは、まだ「原酒」の段階。熟成を経て地元で販売できるようになるまで時間はかかりますが、ケイシーさんは先を見据えています。

ケイシー・ウォールさん
「利尻ウイスキーがどこに行ってもみんなが知っている知名度を作りたい。ウイスキーを飲む人はアイラの名前を知っている人が多いと思います。それと同じくらい、世界中どんな人がいても《RISHIRI》という名前が分かるくらい有名なものを作りたい。この山、海、この気候で、あー、利尻に行ってみたいな、そんな気持ちになるフレーバーのウイスキーを作りたい」

ケイシーさんが立ち上げた会社の名前は、「Kamui Whisky」(カムイウイスキー)。Kamuiは「神居」からとっていて、地元に深くこだわったウイスキーを作りたいという思いが込められています。ケイシーさんは、ゆくゆくは北海道産の大麦や道内産の樽にもこだわったウイスキーを作りたいと熱い思いを話してくれました。まずは、少なくとも来年までに6000リットルを蒸留し、ボトルにして1000本から3000本を目指していきたいということです。そして商品が完成したあとはウイスキーを呼び物にした観光旅行の実現にも協力しながら、利尻島の交流人口の増加にも貢献していきたいと話してくれました。
これから先、20年物、50年物、そんな本格的なジャパニーズウイスキーが利尻島で誕生する時には地元でどんな交流が生まれているのか、今から楽しみで仕方ありません。

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