NHK札幌放送局

WEBニュース特集 命に報いる家畜写真家

北海道WEBニュース特集

2020年11月5日(木)午後2時48分 更新

こちらの生き生きとした表情。目の前の動物への愛情が伝わってくる写真です。 撮影したのは札幌市の写真家・瀧見明花里(たきみ・あかり)さん。 瀧見さんは主に牧場の動物を被写体にする「家畜写真家」として3年前から活動しています。
なぜ家畜を写真に収めるのか。そこには食の源である家畜の命に少しでも目を向けてほしいという思いがありました。 

“家畜の目線”にこだわる

10月下旬、広尾町の酪農家を訪れた瀧見さんは農家から牧場の説明を受けた後、さっそく放牧された牛の写真を撮り始めました。
撮影の特徴はできるだけ家畜の近くからローアングルで撮るスタイルです。「ベルちゃん」「メーちゃん」と牛の名前を呼びながら近づき、目線を同じ高さまで下げてシャッターを切っていきます。

瀧見さんが切り取る写真の多くが、このカメラ目線のほのぼのとした表情です。

「ふだん家畜と目を合わせることは少ないと思うんですけど、その動物を見ることで“かわいいな”とか、“この牧場どこだろうな”という感想を持って、徐々に家畜の命について考えてもらえたらうれしいです」

家畜写真家の原点

瀧見さんには家畜写真家になるきっかけとなった出来事があります。もともと一次産業に関心があった瀧見さんは6年前、牧場の仕事を経験したいと勤めていた銀行を退職し、ニュージーランドへ飛び立ちました。
ある酪農家に滞在していた時、子牛の安楽死を目の当たりにしたと言います。

「子牛が弱って縮こまっていて、一緒にいた酪農家が『もうこの子はだめかもしれない』と言ったんです。たしかに経済動物だから役に立たないのに生かしておくわけにもいかない。でも私は腕の中で抱いていて、まだ動いていたんですよ。『本当に助けられないの』と聞き返したんですけど、結局射殺されたんですよね」

瀧見さんは、私たちがふだん口にしている肉や牛乳の背景には、こうした出来事もあるのだと気づいたと言います。その後、趣味だった写真撮影を活かし、命の大切さを伝える家畜写真家として活動を始めることを決心しました。

家畜の生きた証しを残す

瀧見さんにとっての撮影は、失われることが前提である家畜の命に報いる行為でもあります。写真は農家や写真を見た人の記憶に残り、その動物の生きた証しとなります。

「『撮影してもらった動物たちが役目を果たして引退してしまったんだよね。写真を撮ってくれてありがとうね』という連絡を農家さんからもらうことがあって、そういう時に生きた証しを残せたんだなと感じています」

瀧見さんの活動のコンセプトは「『いただきます』を世界共通語へ」。
私たちが家畜の命を“いただいて生きている”ことに少しでも思いを巡らせてほしいと、瀧見さんは写真を撮り続けます。

(札幌放送局・庄司雄大 2020年10月29日放送)

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