NHK札幌放送局

あの巨大モニュメント なぜ解体?

シラベルカ

2022年3月7日(月)午後2時30分 更新

皆さんの疑問に答えるNHK北海道の取材チーム「シラベルカ」。こんな投稿が江別市に住む80代男性から寄せられました。 

「北海道百年記念塔の解体の話が進んでいるとのこと、大変驚き残念に思っています。 なぜ解体しなければいけないのか。存続は考えられないのか調べて下さい」 

百年記念塔に関する投稿は、ほかにもいただいています。調べてみました。

百年記念塔とは?

北海道百年記念塔は、北海道命名から100年を記念し1970年(昭和45年)札幌市厚別区の道立野幌森林公園に完成しました。100年にちなんで高さは100メートル。総工費はおよそ5億円で、その半分の2億5千万円ほどが道民からの寄付によって集められました。

しかし、道は安全性に問題があるとして2018年(平成30年)に解体の方針を決め、新年度から解体工事に入る計画です。

道環境生活部文化局文化振興課 大野真実課長補佐
「老朽化の進行を完全に防ぐことは困難であるとの判断に至りまして、公園を利用される方々の安全性の確保や将来世代の負担軽減などの観点から解体もやむを得ないと判断したところであります」

地元との温度差が…

百年記念塔にやってきた人たちに話を聞くと…。

高校生の娘さんと来ていた40代夫婦
夫)「最後になるかなと思って、家族できょう来ました。家族と一緒に来て、敷物引いてごはんを食べたっていう思い出が(ある)」
妻)「寂しいです取り壊されるのが」

毎日写真を撮り続けているという女性も。

70代女性
「ここに住居を構えて、これに憧れて来たものですから。子供たち連れてここへ通ったなって。壊すって聞いたら子どもとの思い出、記念塔と話すように、心で話すように…」

地元では思い入れのある人たちが多かった一方、札幌中心部では…

帯広出身20代男性
「百年記念塔っていうのはちょっと知らないですね。若者からするとあんまり興味すらわかないかもしれませんね」
札幌在住40代男性
「いま大人になってから見には行ってないのでなんとも言えないのが正直なところですけど。」
札幌在住60代女性
「気持ちとしては残したいけどやっぱりお金とか財政がかかることなので…。」

道は2018年にアンケートを実施しました。
全道の社会人と大学生を対象に行い、「解体もやむをえない」が39%、「存続」が33%となっています。全体の4割近い人が解体もやむをえないという結果でした。

解体判断に至る経緯

これまでの経緯を改めてまとめると…
▽1970年   北海道百年記念塔 完成
▽1992年   大規模修繕
▽1999年   大規模修繕
▽2014年   立ち入り禁止に
▽2016年~  道が懇談会、住民アンケート、専門家へのヒアリングなどを行う
▽2018年   解体決定

(2018年9月に見つかった部材 撮影:2020年6月 道の報道公開にて)

百年記念塔は「耐候性高張力鋼」という鋼材で作られています。これは表面にできる緻密な保護性のさびによって、さらなるさびの拡大を防ぐといわれている鋼材です。しかし道によると、接合部分など特にさびの進行が進んでいる部分があるといいます。

(平成9年 外板補修調査報告書から抜粋 日本建築学会北海道支部作成)
「問題は外板周辺部の錆の進行とその剥落であり、その程度を軽減する処置はとれるにしても完全に防止することは困難である。完全に錆の発生や錆の剥落を除去するには、塔全面の外板を取り替えざるを得ないが、相当な費用を要する。」

道の試算では、今後50年モニュメントを維持しようとすればかかる費用はおよそ30億円。一方、解体費用は6億4500万円と見積もっています。

(道環境生活部文化局文化振興課 大野真実課長補佐)
「塔の構造、躯体自体は問題はないんですけど、外壁の方が、雨水などの影響でさびなどが発生しております。本来であれば、さびというのは乾燥と湿気を重ねる、繰り返すことによって状態の良いさびになっていくんですけど、それが構造上うまくできてないという事で、外壁のさび片の落下ですとか、あとさまざまな問題が生じるということで、そういうことを完全に防ぐことは難しいと。百年記念塔は当時、いろんな方から寄附をいただいて、建てたものでございますので、できる限り道としても維持をしていきたいと考えたところだったんですけど、塔の状況と、あと将来世代の負担の観点から解体もやむをえないというような判断に至りました。」

道では、新年度から百年記念塔の解体工事を始め、跡地には、塔の廃材を活用して新たなモニュメントを設置することなどを検討しているということです。

設計者の思いは

北海道百年記念塔を設計した井口健さんです。建築家として駆け出しだった29歳の時にコンペに応募。見事採用されました。

北海道百年記念塔を設計した井口健さん
「いわゆる建築家として1人前になった。出発点に立ったと。」

井口さんは設計に北海道の歴史を踏まえて思いを込めました。

井口健さん
「歴史っていうのは、過去に無限、未来に無限っていう認識なんですけども、それがこの曲線にね、あらわれているんですけども。未来は上に向かっていくと。過去については、前から支えていたと。木の根が生えるようにですね。上も伸びるし下も伸びると。根を張らないとこれ、倒れますから、そういう感じですね。根の見えない部分の、先達たちの霊魂っていいますかね。」

塔の解体については…

井口健さん
「もちろん反対ですよ。明確に。納得できないで壊されるのはね、そういう点では非常に不満。道民の意思が最終的にですね、正常な情報を与えられた上で、判断をされたことについては、その決定について僕は、ああそうですか、分かりましたと、いうことでね、素直に受けとめると。やはり行政の対応がね。まあ正直言って、うーんって感じですね。ハテナって感じですよね。」

経過をオープンに

道は解体決定に至るまで、2016年から2年間、懇談会や住民アンケート、専門家のヒアリングなどを行ったといいます。しかし、道のヒアリングは個別に行われただけで、建築の専門家や地元の住民などが参加するオープンな議論の場がなかったと指摘する専門家もいます。

道のヒアリングを受けた建築の専門家・北海道大学石山祐二名誉教授
「判断というのは全部道のほうでまとめて、そしてその結論として解体やむをえなしというふうにいったわけですね。やはりもう少しオープンっていうかな、どういうふうに決まったかということの経過が分かるような仕組みが必要じゃないかなと思うんですよね」

百年記念塔だけではなく、道庁赤レンガ庁舎などの歴史的建造物や公共施設なども老朽化が進んでいきます。行政は維持管理をしっかり行うことはもちろん、オープンな議論が必要だと感じました。また、わたしたちも大切な税金の使い道に、より関心を持つべきではないでしょうか。                          

2022年2月22日放送

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