NHK札幌放送局

「タマネギ列車」は運転士の誇りとともに

ほっとニュースweb

2020年11月11日(水)午後0時14分 更新

全国でも有数のタマネギの産地として知られる北見市。この時期、収穫したタマネギをまとめて運ぶ通称「タマネギ列車」と呼ばれる貨物列車が運行されています。北見から全国に向けてタマネギを運ぶ列車の姿に迫りました。      (取材・撮影:北見放送局 伊勢谷剛史カメラマン)

タマネギの一大産地・北見

北見市とその周辺でとれるタマネギの量は年間およそ40万トン。タマネギの国内需要のおよそ4割を生産している一大産地です。そのタマネギを出荷するための貨物列車が通称「タマネギ列車」です。毎年8月から翌年の4月まで北見と旭川を毎日1往復しています。11両の貨車に載った55個のコンテナの中身はほとんどタマネギ。その重さはおよそ200トンにもなります。

運行支えるのは運転士歴36年のベテラン

タマネギ列車が走る石北線には常紋峠や北見峠といった急勾配や急カーブが続く峠があります。また、線路に積もった落ち葉で車輪が空回りしやすくなるほか、冬には雪が積もることもあります。ベテラン運転士でも運転が難しい難所です。

東野至男さん 「(車両が)重いですから、すぐ加速しないしブレーキもすぐ効くわけでもない。ある程度線路を熟知しないと、なかなか運転できない線路ではないかと私は思います」

プッシュプル方式とは?

そこで採用しているのが「プッシュプル方式」と呼ばれる特別な車両編成です。機関車を貨物の「前」だけでなく、「後ろ」にも配置。重い貨車を前からプル(引っ張る)と同時に後ろからプッシュ(押す)して走ります。JRの貨物列車ではタマネギ列車も含めて全国で2か所だけでしか使われていない珍しい方式です。

メリットは勾配に強いこと。もし機関車が2両とも前にあったらどちらも一緒に滑ってしまうかもしれませんが、機関車が前と後ろにあることで、前の機関車が滑ってしまっても、後ろの機関車は滑らずに押すことが出来るのです。また、石北線は途中の遠軽駅で進行方向を変えるスイッチバックを行う必要があります。通常の編成だと遠軽駅で機関車を後ろから前に付け替える必要がありますが、プッシュプル方式ではそのままの状態でスムーズに出発することが出来ます。

相棒との出発前の打ち合わせ

プッシュプル方式では機関車が2両あるので、2人の運転士がそれぞれ乗り込みます。走行中は無線機を使って連絡を取り合って、峠にさしかかったり車輪が空回りしたりすると後ろの機関車に押すように指示します。そのため運転前には天候や線路状況を2人で共有するのが大事です。

阿部和則さん 「後ろの人と前の人で交互に無線で話し合いながら『前が滑ってるから後ろ押してくれ』とか、運転士それぞれ運転の仕方が違うのでその人に合わせた運転をする」

廃止を検討も・・・

地域の物流になくてはならないタマネギ列車ですが、運行の継続は厳しい状況下にあります。平成22年に1日3往復あったタマネギ列車は徐々に本数を減らし、平成24年には廃止が検討される事態になりました。その大きな原因の1つが採算性の低さです。北見から旭川への行きの便には大量のタマネギが積まれていますが、帰りの北見へ向かう便の積み荷はわずかです。年間で北見から出発する積み荷は6万コンテナなのに対し、北見へ帰ってくるのは1万コンテナにとどまり、片荷輸送で効率が悪いのです。その結果、当時使用していた機関車の老朽化も重なりJR貨物はタマネギ列車の廃止を表明しました。これに対し、農協などは安定的にタマネギを輸送するためには欠かすことの出来ない存在として存続を要望。新しい機関車に置き換えた上で1日1往復ではあるもののなんとか存続することになりました。

現在オホーツク管内から鉄道を使って輸送されるタマネギのうち、北見駅からタマネギ列車を利用するものはおよそ2割に過ぎません。残りの8割はトラックで旭川まで運んだあと、そこから鉄道に積み替えて本州方面へ向かっている状況です。

そこでタマネギ列車の存続に向けた取り組みも行われています。タマネギの物流をとりまとめているホクレンでは、タマネギ列車の帰りの便を利用する取り組みを始めました。もともと山口県宇部市にある工場から釧路まで船舶を使って農業用肥料の原料を輸送していましたが、同等の料金で鉄道輸送に転換。この取り組みでコンテナ200個分の輸送を増やすことができました。そこでタマネギ列車の存続に向けた取り組みも行われています。

ホクレン北見支所 有城和幸課長
「全国の消費者に対してオホーツク管内からの農産物を供給する上では鉄道輸送が生命線であると言えるのではないかなと思います。」

誇りを胸に今日も安全運転

午後7時。列車は北見駅を出発し、4時間40分かけて列車は貨物専用の北旭川駅に向かいます。

列車は旭川で他の荷物を載せた貨車を連結して札幌や本州方面へ向かいます。こうしてタマネギは日本各地へ運ばれていくのです。

東野至男さん 「生産者が一生懸命作ったものを消費者までと、その流通の一端を担っている大変重い仕事だと思っていますし、誇りにもなるのかなと自分では感じています」

2両の機関車で運ぶ特産のタマネギ。

息を合わせて走る列車が影ながら産地を支えていました。

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