北海道は「お笑い不毛の地…?」いやいや、そんなことはありません!
「実は面白い!?北海道芸人SP」を担当したディレクターの古元です。今回はMCの鈴井貴之さんと多田萌加さんに加え、芸人の生き方を分析した本がヒットしている平成ノブシコブシ・徳井さん、そして、ゴボウのしばき合いで日本の年越しを笑いで包んだモリマン・モリ夫さんという豪華ゲストが参戦。永らく「お笑い不毛の地」と呼ばれてきた北海道のお笑いは、いまどうなっているのか。今回、奥の奥まで調べてみると、実は面白い芸人さんが沢山いることが分かってきました。北海道のお笑いに風穴を開けるかも知れない彼らの勇姿を、ぜひご覧ください。
〈放送〉※放送は終了しましたが、NHKプラスで配信中!
9月9日(金)北海道道 「実は面白い!?北海道芸人SP」
【MC】鈴井貴之 【サブMC】多田萌加
【ゲスト】平成ノブシコブシ…徳井健太、モリマン…ホルスタイン モリ夫
出演した北海道の芸人たちのネタ披露時間はそれぞれの芸名の後ろに書いています。
また、9月23日以降は本ページでネタ動画を公開予定です。

そもそもなぜお笑いを取り上げるのか?それはひとえに北海道出身の芸人がいま活躍しているからです。北海道出身のお笑い芸人というと、加藤浩次やタカアンドトシをはじめ、平成ノブシコブシ、バービー、とにかく明るい安村など、意外にも数多くの売れっ子を輩出しています。特に近年、EXIT・兼近やトム・ブラウン、YES!アキト、そして昨年のM-1グランプリ王者 錦鯉・長谷川など、活躍著しい人たちも軒並み北海道出身。徐々にではありますが北海道のお笑いが、その存在感を増しているのです。

まずは、ぜひ知っておきたい注目の若手漫才師2組を紹介します。
1組目:オレマカ (ネタ披露:NHKプラスだと開始20分10秒~)

北見の高校の同級生で活動する結成6年のオレマカ。高校生の頃から放課後にネタを書いたりしていた仲の良い3人組で、20歳から本格的に芸人としてデビューしました。

ネタを書くのはツッコミの添(ぞえ)さん。ライブには月10本以上出演しており、札幌でライブに出るときはほとんどが新ネタ。これまでに書いたネタは大小合わせて3000本にも及ぶといいます。
ネタ作りで大事にしているのは、ボケの寺田さんに過度な負担を掛けないこと。添さん曰く「寺田に出来ることが限られていて笑。動きのあるコントだったり、テンポのいい漫才だったりが出来ないので、なにか出来ることがないか探していたら、唯一残っていたのがゆっくり喋ることでした」とのこと。寺田さんのキャラを生かせるネタをいつも考えているそうです。

ゆっくり喋る寺田さん
徐々にネタの方向性が見えてきたオレマカ。しかし、昨年のM-1グランプリでは手応えがありながら1回戦で敗退してしまいました。どうしても理由が知りたくて、思い切って審査員に尋ねてみたところ「君たちのは漫才じゃない」と、身も蓋もないひと言が返ってきました。お笑い界のトップの方では決着が着いたはずの、いわゆる「漫才か漫才じゃないか」論争。添さんはそのとき「下の方ではまだあるんだ」と感じたそうです。

そんなオレマカは今年に入り、東京進出に向けて遠征を繰り返しています。1回の遠征で5~6本のライブをハシゴし、自分たちのネタは通用するのか、ほかの若手はどんなネタをしているのか、研究を重ねています。
ライブ前、カラオケでネタ合わせをしていた3人。近況について添さん、ktaさんにお話しを聞くと、芸人を続けるためにバイトに明け暮れたり、食費を切り詰めながらなんとか生活をしていたりと、売れるために必死に頑張る普段の様子を聞くことが出来ました。

エネルギーに溢れる2人のお話しが終わり、寺田さんにもそんな熱い気持ちを聞かなきゃなとカメラを向けてみたところ、連日のバイトで疲れていたのか、寺田さんはそっと目を閉じて眠っていました。

大事なライブの前だったのでゆっくり休んで欲しいなと思い、カメラを止めることにしました。
2組目:つちふまズ (ネタ披露:NHKプラスだと開始23分45秒~)

続いては、同じく結成6年のつちふまズ。北海道にいる芸人の多くは、スターを目指して東京へと進出していきますが、2人はあえて札幌に残って地道に活動を続けています。

つちふまズをひときわ応援しているのが、ゲストのモリ夫さん。ツッコミの小澤さんは、モリ夫さんが経営するすすきののスナックでアルバイトをしています。営業能力の高い小澤さんに、モリ夫さんも「本当に重宝してますよ。お客さん100人いたら97人は小澤のことが大好き。3人は大嫌いだけど」とほぼ全幅の信頼を寄せています。
元々、モリ夫さんのお店に週5で訪れ、タダでご飯を食べさせてもらっていたという小澤さん。
「働く前は普通に客として来てたんですよ」と笑う小澤さんに「金払ってないから、客でもないんだけどね」とモリ夫さん。純文学だなと思いました。

現在、コミュニティFMで3本のレギュラーを持っているつちふまズ。ライブや営業、ラジオなど、道内で着々と活動の幅を広げています。
この日は翌日のライブに向けた新ネタ作り。つちふまズは、台本を書かず、2人の会話のやりとりのなかでネタを作っていきます。ネタを作っては消え、作っては消えを繰り返す地道な作業がひたすら繰り返されていました。

3時間ほど悩んだ頃、突然椅子の下に潜り込んだ小澤さん。そして、横にいた同期の芸人に向かってひと言「千年後の地球」とささやきました。人間と椅子の立場が逆転した、未来の様子を表現しているとのこと。人類に警鐘を鳴らすかのような鋭いギャグ。どんな苦しいときでも笑いの気持ちを忘れません。

この後、無事にネタは完成したのですが、その瞬間があまりに静かだったため、三木さんが「もっと喜んでるパターンとかもあった方がいいですか?」と気を利かしてくださいました。一番忙しいときにも関わらず、とても丁寧に取材に応じてくださいました。
北海道の懐の深さが分かる、ディープな5組が登場
北海道というと、トム・ブラウンやノブコブ・徳井、とにかく明るい安村、錦鯉・長谷川のように、正統派とは言えない芸風の方を沢山生んできました。実際、M-1グランプリの札幌予選は荒れることで有名らしく、コアなファンがわざわざ札幌まで見に来ることもあるのだそうです。
見本となる先輩や師匠がいない分、斜め上のネタを作る芸人さんが多いのも北海道の特徴のひとつ。そんな鋭いネタを磨き続ける北海道芸人のなかから、今回は厳選した5組にネタを披露してもらいました。どんなネタを見せてくれるのかは、ぜひ放送をご覧ください。
3組目:ゴールデンルールズ (ネタ披露:NHKプラスだと開始30分45秒~)

コントも漫才もなんでもこなすフリースタイルなコンビ。そんな姿勢はネタ以外にも及び、根本さんはカレー屋を経営、ありちゃんは得意の絵を描いて暮らしています。
そんなありちゃんの絵は最近売れ始めたそうで、収録にも持ってきてもらう予定だったのですが、残念ながら家に忘れてきてしまい、誰も見ることが出来ませんでした。
4組目:長渕っぽい人&きよしろう (ネタ披露:NHKプラスだと開始34分30秒~)

ほぼ長渕さんネタ一本で毎週ライブを行っている骨のある芸人・長渕っぽい人とツッコミのきよしろう。一見モノマネのようにも見えますが、本人曰く、偶然似ているだけで全く寄せてはいないのだそうです。ちなみに、誕生日も本物の長渕剛さんと同じ9月7日。本当に寄せていませんでした。
そんな長渕っぽい人、20代前半で一度芸人を引退しているのですが、諦めきれず3年前に復活。普段は会社員をしながら芸人を続けており、まだ小さい娘さんは「本物」と「ぽい」人の区別がまだつかないそうです。
5組目:汗ながしカットマン (ネタ披露:NHKプラスだと開始37分35秒~)
サウナ好きがこうじてサウナ芸人を始めたカットマンさん。元々は13年間会社員をしていましたが、3年前に奥様の収入がカットマンさんを上回り、そのときなぜか、憧れだった芸人になろうと決意したそうです。
タオルからのぞく顔のかっこよさに目が行きがちですが、本当のかっこよさはネタの最中に発揮されています。静寂を切り裂くタオルの音は、鈴井さんたちの大きな笑いを誘っていました。

6組目:わっかない村井 (ネタ披露:NHKプラスだと開始41分00秒~)
稚内出身。実家がホタテ漁師で、もともとは家業を継ぐつもりでしたが、バラエティ番組を見ているときに父親から「こういうのやりたいんだったら漁師やらなくてもいいよ」と言われて、芸人になろうと決意。高校も中退しました。その後なんだかんだ20歳まで稚内で暮らしてしまいますが、そこから札幌にきて4年間オーディションに挑戦し、2015年に無事、芸人としてデビューしました。
7組目:金魚と強盗 (ネタ披露:NHKプラスだと開始43分00秒~)

北海道の“地下芸人”のトップに君臨するといわれる3組、人呼んで「北のクレイジー3」。その一角を担うのが「金魚と強盗」。(他の2組は、音のない森・二階堂さんと泥沼さん)
金魚を相方に選んだ理由のひとつは「金魚の赤が舞台上で映えるから」とのこと。
人と魚という組合せのため、倫理上、賞レースによって“コンビ”の見解が異なり、M-1グランプリは出場が認められていますが、キングオブコントでは失格となっています。(※残念ながら、今年からはM-1グランプリの出場も認められなくなり、新体制「金魚と強盗2」として何とか出場を果たしました。)
今回は以上の7組に登場頂きました。
実は面白い芸人さん、沢山いるので、ぜひ放送をご覧ください。
※上記の芸人さんたちは、サツゲキや時計台ホール、演劇専用小劇場BLOCH、スペースアートスタジオ、マルチスペース・エフ、Y‘sスタジオなどで、定期的にライブに出演しています。
2022年9月22日追記しました。