NHK札幌放送局

JOC山下泰裕会長 単独インタビュー

ほっとスポーツプラス

2022年5月10日(火)午後8時21分 更新

札幌市が招致を目指している2030年冬のオリンピック・パラリンピック。JOCの山下泰裕会長は招致の機運を全国的に高めようと設立された「北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピックプロモーション委員会」の初会合に合わせて札幌市を訪れ、NHKの単独インタビューに応じました。インタビューのほぼ全文です。

Qオリンピック・パラリンピック開催の意義とはなんですか?

JOC山下 泰裕会長
オリンピック・パラリンピックの開催というのはこれを契機として、いろんな人の力を集めて、いろんな人と思いをひとつにする。社会を変えていく力があると思っています。ご存じかもしれないが、IOC=国際オリンピック委員会も東京2020大会、あるいは北京2022大会。ここまでとは大会開催そのものを大きく変えました。招致のプロセスも変えてきた。なぜか、ひと言でいうと持続可能なオリンピックにしていくためです。持続可能なオリンピックとはなんなのか。これは大会のために新しい施設を作るとかそういうのは好ましくない。大会の開催場所が広がっても、散らばってもいい、国をまたいでもいい。でも、できるだけ既存の施設を有効活用していく自然環境とかカーボンニュートラルとかそういうことにも配慮していく。そういうことを通して大会を開催することがその土地の街づくり、魅力的な街づくりに寄与できる、そういう形での大会開催を望んでいます。これまでの多くの国民の方が持っているオリンピック・パラリンピックのイメージは豪華で、華やかで、国の威信をかけてというものだと思いますが、そういうところを望んでいない。アスリートを第1優先にして、環境、施設を再利用して、大会開催を通してその都市がどういうふうに発展していくのか。ですから、秋元市長、札幌市が考えている都市の構想、街づくりというのはIOCが今後の開催都市に求めているものに合致している。大会の開催を通して持続可能な魅力的な札幌の街づくり。そこにしっかり寄与していくことが大事だと思っている。

Q「子供たちに夢や希望を与えるから」開催に賛成という声があるが、その点はご自身が経験したオリンピックを踏まえてどうか?

JOC山下 泰裕会長
札幌市の意向調査の結果に関しては過半数の方々の賛成を得たというのは大変、心強いと思っています。ただ一方、4割近い方が開催に対して否定的だった。ここは真剣に受け止めるべきであると思っています。大会開催の意義とかプロモーション委員会でも様々な意見が出ましたけれども、そういうところを丁寧にチームジャパンで説明していく必要があろうと思っています。次代を担う子供たちが夢を持つこと、希望を持つこと。このことは非常に大事だろうと思っています。それだけじゃない、われわれも生きていくときに明るい光、夢や希望が見えたときに“今まで以上に頑張っていこう”というふうになると思います。オリンピック・パラリンピックというのは、そういう希望の光の1つになり得ると思っています。
時代は違いますけれども1964年の東京オリンピックの時、私は小学校1年生でした。今でも心に強く残っています。それが小学校4年で柔道を始めて、オリンピックに出場するという夢にもつながっていった。多くの人たちの希望や夢につながる、そういうプロジェクトというのがオリンピック・パラリンピックにかかわらず大事にしていくべきであろうと思っています。もう1つ、今回の東京2020大会でパラスポーツ・障害者アスリートに対する国民の関心というのが劇的に変わっていったんですね。これからの社会というのは違いを認めて、多様性そして調和していく、この共生社会、それは障害の有無だけではなくて肌の色とか宗教とか様々な多様な人たち。お互い理解しあいながら認めていく社会にならないといけない。そういう時に大変、残念ながら東京2020大会は海外からの観客がゼロでした。大会そのものが無観客になりました。日本も約500の全国の市町村が海外の方々との交流というのを楽しみにしてホストタウンの準備をしていました。その多くがなくなってしまったんですけれども、このオリンピック・パラリンピックというのはさまざまな世界を知って、国内から世界に目を向けていく。多様性というものを実感する非常に貴重な機会だというふうに思っております。オリンピックやパラリンピックというのはさまざまな違いを持った人たちが選手村に集って、競技では戦いますけど、競技を離れたらその生活の中でお互いの違いというものを認識しながら相互理解を深めていく。そして、それが友情を育んでいく。これがひいては世界平和につながっていく。こういったスポーツがさまざまな人々の違い、分断された社会と言いますけれども、そういったものをつないでいく。この役割というのは今後もっともっと重要になってくると思っています。

Q反対の意見の中には「他の施策に使うべきではないか」という意見が多いですが、それでも招致するというのは反対の意見を持つ人たちにどう説明しますか?

JOC山下 泰裕会長
“身近な生活環境の改善にもっとお金をかけてほしい“。これは至極ごもっともな意見であろうと思います。それは大事にしていただいていいと思います。それと同時にこれからどうやって10年・20年・30年先に向けて、魅力的なまちづくり、都市づくり、あるいは活力ある社会づくり、子供たちが夢を持っていきいきと生きていける社会づくり。目の前と先、両方を考えていく。このことが大事でありまして、未来に対しての投資というところを合わせて持っていかないと結局、“今が良ければいい”という形だけではやはり行き詰まっていくんではないかと思います。
そしてそういう時に避けては通れないのが環境の問題とかSDGsであろうと思っております。そういうところに対してはIOCも非常に強い関心を持っています。彼らとしてはオリンピック・パラリンピックがいつまでも続いていて、その大会をやることが人々の暮らしにより魅力のあるものにして、人々がつながって、協力しあって共生社会につながっていくというかたち。そうして初めてこの大会が持続していくんだとそういう認識ですね。

Q賛否のあった東京大会を踏まえてどう理解を得ていきますか?

JOC山下 泰裕会長
東京2020大会の教訓あるいは成果。これはぜひ、これから2030年の札幌オリンピック・パラリンピックの開催に向けていく中で、活かしていかなければならないと思っています。そういう成果というのはさらに発展した形でいかしていく。そこでの反省、教訓は改善していく。

Q具体的ないかせること・反省点はなんですか?

JOC山下 泰裕会長
1つは東京2020大会でさまざまな自然環境に配慮した取り組みはさらに進めていかないといけないと思っています。パラスポーツに対して、スポーツ界も冷たかったし、マスコミも非常に関心が低かった。でも今、関心が高まってきている。これを障害者のスポーツ・パラスポーツだけじゃなくて、バリアフリーとかユニバーサルデザインとか、そして可能であればできればこれをそういった障害の有無だけじゃなくて、違った国の方々そういった方々に対しても理解を持つ。そういった意味での共生社会、そこにつなげていく。そういうものは東京2020から得たところ。それから予想もしないような1年の開催延期。これに対するコロナ対策、これは世界で高い評価を得ています。実は北京2022大会は素晴らしいものでした。日本ではネガティブな情報しか出ていなかったんですけれども、現地の組織委員会も皆さん一生懸命ボランティアも素晴らしかった。現地の中国の方に“すばらしいですね”とそういう話をしたら返ってきた言葉は“このほとんどを東京2020大会から学びました”ということでした。東京2020大会からの学びがあって、成功を収めています。東京2020大会の取り組みの中で、マスコミ、国民が非常にネガティブに捉えた、不信感を持ったことは情報が公開されず透明性がなく、議論のプロセスが見えていないということだと思います。そういうところはしっかりと国民に理解を得た形で進めていく。そういうことが大事だと思っていますし、札幌市はそういうところを非常に大切にしている。国民の多くの方々がそこに自ら参加するような形で、この札幌2030のオリンピックのムーブメントを広げていければいいと思っています。

Q札幌に招致できればどんなレガシーが残りますか?

JOC山下 泰裕会長
よくそういう話を聞かれるんですけど、レガシーというのは個人的には5年、10年あるいは20年経ってから振り返ったときに、“あの時のこれが今財産だよね”って、ハードの部分というのは簡単かもしれませんけれども、大事なのはソフトな部分。私はそういうふうに思っています。よく私は東京2020の前に話したのはこれを打上花火にしてはいけないということです。素晴らしい大会で多くの人が感動してよかった。という意見があっても終わって10年したときに何も残っていないのではいけない。でも大会をやったことがその後の札幌や北海道、日本に何を残したのか、そこが極めて大事だろうと思っています。そこに関しては私なりにアイデアがありますけれども、もっともっとこれから議論を進めていかなければいけないし、大会の前だけじゃなくて、終わったあとこそ大事だろうと思っています。だから東京2020大会で何を残したのか、これからもっともっと、そこについて真剣に取り組んでいきながら、特にソフトの部分でのレガシーそこはこれから。“もう終わった”じゃないんです。そこはこれから続いていくと思っています。スポーツ界で1つだけ、今回の東京2020大会でジェンダーバランス、この問題についてスポーツ界は正面から真剣に向き合う形となりました。JOCの女性の理事が40%。これはJOCだけじゃなく、日本のスポーツ界全体でジェンダーバランスについて、各競技団体、各都道府県のスポーツ協会いろんなところでそこについての取り組みが始まっています。スポーツ界が率先して取り組んでいきながら社会を変えていく。そういうところも我々スポーツ界が果たすべきや役割ではないかと思っています。日本の社会全体が抱える問題に対して自分たちにできることがあればみずから率先して取り組み実践していきながらスポーツ界が変わることが社会を変えることにもつながっていくんじゃないかと思っています。大会がうまく運営されてオリンピックもパラリンピックも日本の選手が活躍して、そして多くの国民がそこに感動を覚えたとしても5年、10年、20年経過して多くのレガシーが残っていなかったらそれが本当の成功ではないと。そういった視点でこの招致活動に取り組んでいきたいと思っています。

Q招致活動で今後力を入れていくこと、また足りないことはなんですか?

JOC山下 泰裕会長
大会の運営能力、危機管理能力そういうところ。それからボランティアの方々の献身的なおもてなしの心はやはり日本という国に対して世界の評価はかなり高い。札幌市もウインタースポーツの大会を開催している経験がありますし、東京大会でもマラソンや競歩、サッカーとかこういったものもしっかりしていました。そういう意味では先人たちが築き上げてきた日本に対しての信頼というのは非常に高いものがある。コロナ禍での東京大会は“日本だからできた”、“本当に感謝している”という言葉をたくさんいただきました。ですから“できれば日本でやれたらいいね”そういう雰囲気は感じます。ただやはり、IOCが最も大事にしているのは開催都市の人たちが大会をどれだけ望んでいるのか。ですからここはもっともっと努力を重ねながら理解を深めていく。それができるかどうかが北海道・札幌2030冬季オリンピック・パラリンピック開催を日本にもたらせるかどうかのカギになると思っています。ここのところが1番大きなポイントだと思っています。

Q新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻など暗いニュースが世界に広がる中でオリンピックが果たせる役割とはなんですか?

JOC山下 泰裕会長
これは世界の国々の人々から言われたんですけれども、やはり東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されたことに多くの国の人がコロナ禍で苦しんでいる中、様々な厳しい状況にある人たちに明るい話題を提供し、そして人々に希望の光をもたらすことができた。これはオリンピック・パラリンピックに限ることではないですけれども、人々の中に感動とか勇気とか笑顔とか誇りとかそういったところを感じてもらう取り組みというのが極めて大事であろうと思っています。

Q地元の支持が大事だということですが、地元の人に向けてオリンピックをやることの意義を説明してください。

JOC山下 泰裕会長
我々もオリンピック・パラリンピックの開催ありきではなくて、それを通して札幌あるいは北海道、その発展に寄与するかたちでなければ意味がないと思っています。その発展という視点で見ますと実は2018年ピョンチャン大会、2022年の北京大会と2大会続けて東アジアでの冬期大会になりました。世界の国の中でも雪資源が豊富であるところはそんなに多くない。ですから活力がある札幌、活力がある北海道そういったところに我々は2030の招致つながるというふうに信じています。つなげていかなければ意味がない。やれば“こういうふうになりますよ”というものを示すことはできません。そういう特効薬というのはないと思います。特効薬というのは逆に副作用も凄いと思います。それを通して札幌の魅力、北海道の魅力、こういうものをアジア、世界に伝えていくそのことは我々の役割だろうと思っています。

2022年5月10日

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