新型コロナウイルスの
感染防止には
「しっかり手を洗う」のが大切。
頭では分かっていても、
ついつい
“ちゃちゃっ”と洗って
終わりにしてしまうという人、いませんか?そこで、
大人たちにちゃんと
感染対策をしてもらおう
というプロジェクトが本格的に動き始めました。主役は、
感染拡大が続く札幌市内の子どもたちです。
(札幌局記者・飯嶋千尋)。
《小学校では児童が対策啓発》
「大人たちにきちんとした対策を知ってもらおうと、子どもたちが立ち上がった!」
そんな話をきいて、私は札幌市中央区の市立二条小学校に向かいました。

教室を訪ねると、壁に貼られた注意書きが目に飛び込んできました。
「情報源を確認すること」
「いつ出された情報かもチェックすること」
根拠のない情報を流したり、それをうのみにしたりする人が後を絶たない昨今、大人顔負けの意識の高さです。皆さん、情報を集めるときはこの2つ、注意ですよ!
この小学校の6年生が取り組んでいるのは、大人に向けた感染対策の啓発のやり方を考えること。いろいろ検討した結果、厚生労働省のホームページを参考にすることにしました。
その上で、どんな形で情報を発信したら大人たちに届くのか、気を付けなければ
ならないことはなにか、子どもたちは真剣そのものです。

「コロナに対する効果について、『絶対』や『必ず』という言葉は使わない」
「感染を防ぐことに対して、ネガティブな感情ではなく、前向きな感情を持ってほしい」
考えた結果、子どもたちは次のような取り組みを進めることにしました。
①新型コロナウイルスを退治する人形劇を作る。
②正しい手洗いのしかたを4コマ漫画などにしてポスターにまとめる。
③外国の人たちのために、英語でもポスターを作る。
「みんなで新型コロナを予防し、患者を1人でも減らそう」
子どもたちに言われると、思わず身が引き締まります。
子どもたちが作ったポスターなどは、まちづくりセンターや、札幌市内の地下鉄の掲示板などで紹介される予定です。

《仕掛け人はこの人!》
このプロジェクトには、現在、札幌市内の8つの小中学校や幼稚園などが
参加しています。その仕掛け人がこちら。

札幌医科大学の大浦麻絵講師。公衆衛生学が専門です。
大浦さん自身、感染防止の啓発を続けてもなかなか伝わらないことに頭を悩ませていました。そこで、子どもたちの力を借りることにしたのです。
「子どもたちが一生懸命やっている姿を見てもらうだけで、やっぱりかわいいな、と見てもらえますし、子どもたちの言葉だと、よりやさしい言葉で伝わります。情報が届きにくかった子どもたちの親世代、祖父母世代にも効果があることを期待しています」(大浦 講師)
《手洗いのおまじない?》
プロジェクトに参加している小中学校や幼稚園、保育園には、それぞれで自分たちにできることは何かを考えてもらっているそう。
そのうちの1つ、札幌市白石区の札幌白樺幼稚園にお邪魔すると、園児たちが手洗い場で、「おねがい、かめさん、おやま、 おおかみ、ばいく、つかまえた!」とつぶやきながら手を洗っています。

何のおまじない?と思って手洗い場に貼ってあるポスターを見ると、疑問が解けました。正しい手洗いの方法を示していたんです。

「おねがい」は手と手をすり合わせて手のひらを、
「かめさん」は手を重ねて手の甲を、
「おやま」は両手を組んで指の間を洗うポーズです。
そして、
「おおかみ」は指を曲げてもう一方の手のひらをひっかくようにして指先を洗い、
「バイク」はアクセルをふかすように指を、
「つかまえた!」は手首をにぎって洗います。
私も試してみると、覚えやすいうえにしっかりと手洗いができました。子どもたちはポスターに忠実に、順番も覚えているようです。えらい!
《楽しいごはんの時間も…》
そして、感染が拡大し始めた11月からは、給食中のおしゃべりも控えめに。子どもたちは黙々とごはんを口に運んでいました。

幼稚園では感染対策をかみ砕いて伝える絵本も使って、日頃から子どもたちが自然と学べるようにしているそうです。こうして幼稚園で学んだことを、それぞれの家で家族に伝えてもらうのです。
幼稚園の澤木多佳子副園長は、子どもたちの姿に学ぶことも多いと話します。
「子どもたちが、外から帰ってきたら手を洗わなきゃとか、トイレに行ったらすぐ手を洗おうと率先して行っているので、私も見習わなきゃと本当に思います」

《子どもたちの姿から気づきを》
プロジェクトでは、このほかにも、子どもたちが作った手洗いの方法についての
○×クイズの動画を、札幌ドームでプロ野球・日本ハムの試合の合間に上映するなど、さまざまな場所で子どもたちの取り組みが紹介されています。

連日ニュースで新型コロナウイルスの感染の拡大が報じられていますが、手洗いの徹底など1人1人の行動が何より大切なことです。
これから、子どもたちの取り組みを街で見かけることがあるかもしれません。
私たち大人ももう1度、感染症対策の大切さを考えてみませんか。