NHK札幌放送局

人口1人の限界集落で生きる

道北チャンネル

2022年8月8日(月)午後6時09分 更新

道北の名寄市に、過疎が進み人口がわずか1人となった集落があります。 集落に1人で暮らす80歳の女性が、たくましく生きる姿を取材しました。
 (旭川放送局カメラマン 髙﨑哲次郎) 

人口1人の北星集落

名寄市の中心部から北へ15キロの位置にある、北星(ほくせい)集落です。
かつては農業が盛んで、1960年代には12世帯が暮らしていました。
しかし、時代とともに人口減少が続き、いまでは集落は消滅寸前です。

北星集落は、冬は気温がマイナス30度にもなる寒さが厳しい土地です。
2021年2月、私は集落に1人で暮らす女性を取材しました。
高木その子さん(80)です。
長年、夫と農業を営んできた高木さん。
子どもが独立し7年前に夫が亡くなったあと、集落でただ1人の住民となりました。

2022年7月、私は再び集落を訪ねました。
「おはようございます」。
高木さんは、変わらず元気な笑顔で迎えてくれました。

畑で野菜づくり

冬は家の中で過ごすことが多かった高木さん。いまの季節は、畑仕事に励んでいます。
自分で食べる、20種類以上の野菜を育てています。
この夏初めて収穫したナスとピーマンを、早速、素揚げにしていただきます。

高木その子さん
「美味しい。自分で作るから余計に美味しいのかもね。」
「やっぱりここ、いいもんね。自然なところがいいの。」

駅がなくなる

高木さんが、私たちを集落のある場所に案内してくれました。
JR北星駅のあった場所です。
駅は利用者が減少したことから、2021年3月に廃止されました。
いまは跡形もなく、草が生い茂っています。

高木その子さん
「汽車が止まっているうちは、こんな草、生えてなかったんだけどね。」
「仕方ないね。時代だからね。」

楽しみは友だちとのおしゃべり

1人で暮らす高木さんにとって、楽しみは時々、友だちに会うことです。
自転車に乗り2キロ離れた隣の集落に住む、延原フミさん(95)を訪ねます。
友だちとのおしゃべりは、かけがえのないひとときです。

延原フミさん
「年寄りはもうほとんど、あの世でいないんじゃない?私だけだ。」
高木その子さん
「延原さん、それは言わないの。寿命あるうち、ある寿命は生きなくちゃ。」

最後に高木さんは、延原さんと一緒の写真を撮って欲しいと、私に求めました。

「一緒に写真撮って。一生の記念だから。お友だち大好き!」

家族との思い出を胸に
高木さんは、家族との思い出の花を庭で育てています。ラベンダーです。
20年以上前、家族と旅行で行った富良野で買い求めたラベンダーを、
夫の一郎さんと庭に植えました。毎年夏になると、鮮やかな花を咲かせます。

高木その子さん
「一生の思い出だ。みんないなくなったからね。だからおばさん大事に育てているんだ。」

私は高木さんに、「これからも北星集落に住み続けるのか」聞いてみました。

高木その子さん
「元気なうちは離れたくない。1人でも。」
「ここにいて野菜作って、好きなことやるのが生きがいだね。」

人口1人の北星集落。
高木さんは、これからもこの土地で生きていきます。

集落に1人で暮らす高木さんですが、離れて暮らす子どもや孫が、
定期的に電話で様子を気遣ってくれるということです。
私は取材を通じて、高木さんがたった1人の集落でも、
野菜を作り友だちと会い、充実した日々を過ごす姿を見て、
生きる上で、日常の幸せを見つける大切さを感じました。  

旭川放送局カメラマン 髙﨑哲次郎

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