NHK札幌放送局

「キツネ」でトークが化ける?放送記録を公開!

北海道まるごとラジオ

2021年1月19日(火)午後1時42分 更新

2021年1月7日放送の放送記録です。 ことし最初の北海道まるごとラジオは、神田山陽の『うんちく問答』! オホーツク海側 大空町出身の講談師 神田山陽さんが、毎回テーマを決めて50分間しゃべくり倒し、私たちを素敵な世界に連れて行ってくれます。

ということで、ゲストは、神田山陽さん!

今回も、新型コロナウイルスの感染対策のため、山陽さんには北見放送局のラジオスタジオから、リモートで出演していただきました。

MCは鈴木遥アナウンサーと佐藤千佳キャスターです。

今回のテーマは、

\「キツネ」です!/

山陽さん:なるほど、それで冒頭のあいさつが「コン!ばんは」(コンだけ強めのイントネーション)だったんですね。どこの方言だろうと思っていたのですが(笑)これでわかりました、気をつかっていただきありがとうございます。
鈴木:きょうのテーマ「キツネ」でたくさんおたより来ているんですよ。ファックスやWebからの投稿がありまして・・・
佐藤:キツネを意識しすぎてファックスがフォックスに聞こえました!あ、ごめんなさい(笑)
鈴木:調子いいですね~(笑)

◆キツネに関すること、教えて!

今回も、リスナーの皆さんに、うんちくに限らず、テーマ「キツネ」に関することを大募集していました。まずは、こちら。

・「私は十勝に住んでいて十数年なのですが、鳴き声は「コンコン」ではないことを最近知りました。「ワン」とか「ギャオー」と鳴くそうですね。十勝に長く住む高齢者の方に教えていただきました。聞いたことはありましたか?」

佐藤:キツネの鳴き声、聞いたことないです。
山陽さん:相当機嫌の良い時には「コン」って鳴くのかもしれないよ(笑) パンダが「メェ」って鳴くって聞いたことがあるんだけどね。
鈴木:そうなんですか!?
山陽さん:嘘か本当か知らないんだけど(笑)、意外なもんなんだよ、鳴き声というのは。

ビフォアートークを聴いてメッセージを送ってくださったかたもいました!
鈴木アナと佐藤キャスターで「どんな話が出るかな!?」と予想しながらトークをする「ビフォアートーク」。こちらもあわせてお聴きください♪

なぜ今回のテーマは『キツネ』なんでしょうか。

山陽さん:「キツネ」といえばこの曲、というか、このグループを選んだ理由!まずは聴いていただきましょう!「♪I Saw Her Standing There」The Beatles!」
ビートルズの曲が、なんか新鮮に聞こえないっていうのが、私の中で時々感じるのよ。「使い古された」と言うと、ビートルズに申し訳ないんだけど…ほら、何て言うのかな。くしくも読んだ白洲正子さんの随筆の中に「“手作り”っていう言葉があんまり好きじゃない」っていうのがあったのよ。もう20年も前の随筆なんだけど。なんで好きじゃないかというと「“手作り”の心遣いというのは好きなんだけど、もう“手あか”がつきすぎた言葉になってしまって残念だ」っていうのよ。曲も言葉もそうなんだけど、古びることよりも、手あかが付くことのほうが、なんか私は嫌だっていうふうに感じることがあるんですよ。
で、なぜビートルズの曲を選んだか!ビートルズといえば「キツネ」なんですよ。これ聞いたらわかりますよ。
山陽さん:ジョン・レノンとポール・マッカートニーが出会って間もない頃、2人でヒッチハイクをしながら旅をして、イギリスのバークシャーっていうところにたどり着いたんです。この街にポールのいとこがオーナーをしているパブがあった。ここでバイトをしながら、土日だけ、2人で 「Nerk Twins(ナーク・ツインズ)」っていうコンビ名で・・・漫才じゃないからコンビって言ったかどうかわかんないけど(笑)、ナーク・ツインズっていう名前で演奏したんだそうです。で、屋根裏部屋みたいなところで1つベッドに頭と足と向う側にして、夢も野心も語り合って友情を確かめ合ったから、この旅があってこそのビートルズなのよ、後の。

ちなみに、山陽さんは、若いころ一緒に旅した友達とは全員大ゲンカして、いまだに口も聞いていないそうです(笑)

山陽さん:ジョンとポールはこれで絆を深めて、その後のビートルズにも発展してるわけなんだけど。この店の名前が「Fox and Hounds(フォックス・アンド・ハウンズ)」っていう、フォックスがキツネで、ハウンズは猟犬だと思うんだけど・・・、でもね、「フォックスハウンド」っていう犬の名前もあるのよ。キツネ狩り用に改良されたというか、つくられた犬だと思うんだけどね。だから「キツネと猟犬」っていうことかな。
一説には「フォックスハウンド」で、「熱狂する」っていう意味じゃない?って、英語の詳しい人に言われたんだけど、これがスラングなのか慣用句なのか、ちょっとわかんないんだけどね。そうだとしたら、ライブハウスとしてはなかなかの名前ですよね。

■キツネに関する“ことば”の意味は?

山陽さんFox(フォックス)っていうのは、スラングで、美人の形容詞なんだって。「Foxy girl」って言うと、「素敵なあの子」「かわい子ちゃん」って意味なんだって。
佐藤:え!そうなんですか?
鈴木:でも私が見たのは「ずる賢い女の子」っていう時に使うっていう・・・。
山陽さん:ずる賢いのにも使うんだけど、かわいい子にも使うらしいのよ。で、反対に言われるのは何だと思います?キツネの反対。
鈴木・佐藤:「「たぬき!」」
山陽さん:と、来るでしょう?ところがね、英語ではDogなんだよね!「犬っぽい」って言われると、「野暮ったい」なのか・・・、不名誉な話になってくるんです。

そして話は、山陽さんの知っているイタリア語シリーズに…。

山陽さん:ちなみに、イタリア語でキツネは「Volpe(ヴォルペ)」っていうのよ。何で知ってるかというと、Volpeっていう店があったんだけど。イタリアではね、特にローマで聞いた話なんだけど「ずる賢い」っていうのは褒め言葉らしいんですよ。観光客がとにかく多い街だと「観光客には三流の物を出しとけ」っていうのがあるらしいのよ。それで、「地元の者が、地元のうまいものを食おうぜ!」っていう。
イタリアに行ったときに一番感心したことなのだけど。ほら、日本だとね、例えば私の故郷なんかでは、一番いいものをススキノに出したり、築地に出したりしながら、自分たちは、ともすると一流のものを食べてなかったりするのよ。それを、ローマの人間はしなくて、二流三流のもの、自分たちよりも、どっちかっていうと、ちょっと下のものを出しといたんだけど、初めて食べる人が「うまいね、これ!また来るよ!」って言ったら、「うまいことやったね!」っていうのが、褒め言葉らしいんですよ。
そういう意味で、私は、「Volpe」っていう名前なのかなと思ったんだけどね、その話を聞いてから。
もうひとつ、イタリア語で動物知っているのは、「Lupo(ルーポ)」、「オオカミ」。
「 In bocca al lupo ! (イン・ボッカ・アル・ルーポ)」向こう(イタリア)で何回か講談をやらせてもらったんだけど、その時に何回も言われるのよ。もう、共演の役者さんたちから「 In bocca al lupo !」「 In bocca al lupo !」って。これは何かというと「狼の口の中へ飛び込め!」っていう意味で、「頑張ってやってこい!」っていう、最高の励ましの言葉なんですよ。

キツネからはだいぶそれましたが、、、おもしろい話が聞けたところで、話は再びビートルズへ。
「キツネ」と「ビートルズ」のつながりはなんとなくわかりましたが、なぜテーマにするに至ったのでしょうか。

山陽さん:ビートルズで言うとそんなに詳しいわけじゃないんだけど、実は、ビートルズの曲を去年ずいぶん聞いて過ごしたんですよ。というのは、2019年公開のイギリス映画『イエスタデイ』っていうのがあったんです。
佐藤:あー!ありましたね!!
鈴木:はいはいはい!(結構テンション高め)
山陽さん:見ましたか!?
鈴木:見てないです(笑)ポスターがとても印象的で。単館映画系ですよね、確か。
佐藤:あと、結構話題になっていたので!(見てないです・・・)
山陽さん:その割には、見てないんだよね。私が言った映画で見たことあるっていうのは寅さんだけだからね。寅さん一本だけですから!今まで(笑)

■映画『イエスタデイ』~山陽さんによるあらすじ~

12秒の原因不明の地球的な大停電があった後、停電が終わるとビートルズが存在しない世界になってるのよ。ところが、売れないシンガーソングライターのジャックっていう主人公だけが、どういうわけだかビートルズの記憶が鮮明に残ってるのよ。で、ビートルズの曲を歌いまくって、ただ一人ヒットを続々と出してスターになっていく!という話なんですが。たまんないんですよ。これね、ヒメーシュ・パテルていう主演の人が歌うまいんですよ。ピアノとギターも何か子供の頃からやってたらしくて、非常にいいんですよ。イギリスの役者さんなんだけど。ケニアと、お母さんがザンビアの方なのかな。アフリカ系のイギリスの方。自転車で転んで前歯を折ったりするんだけど、酔っぱらって前歯を折ったこともある私はね、ものすごく親近感を感じたんですよ、そこだけでもね(笑)

山陽さん:あとね、もうマドンナがいいんですよ・・・!マドンナっていうと寅さんみたいになっちゃいますね(笑)、、、ヒロイン!ヒロインがいいんですよヒロインが!リリージェームズっていう女の子なんだけど、今はもう30代になったのかな。
ゲイリー・オールドマン主演の映画『ウィストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でね、タイプライターを打つ秘書の役をやった女の子で。なんか清潔な感じがする素敵な娘さんだったんですよ、その時に。このリリージェームズが・・・って「リリー」からね、もう、なんかちょっと寅さんっぽくてマドンナって言っちゃう感じがするんだけど(笑)、この子がコーラスしてるのよ!今の曲(I Saw Her Standing There)も、サントラ盤は!!これを去年何回も聴いちゃったんだけど、リリージェームズのかわいさもあって、『イエスタデイ』が、なんか忘れられない映画の1つになってるんですけどね。
そんなわけで、ビートルズの曲で、これは「キツネ」といえば、これだろう!というような感じで、今日はもうビートルズ特集で全編を送らせていただきます!(キリッ)
鈴木:キツネ特集ですよ、今回(笑)
山陽さん:あぁ、そう(笑)。私の中では、リリージェームズの特集、「Foxy girl」の特集になっている感じもしますが。テーマとしてはね、ホッカホカな感じでいきたいと思います。

ということで、このあとさらに2曲ビートルズの曲をかけました。曲はこのページの一番下をどうぞ♪
随所にあらわれる山陽さんの寅さん愛・・・(笑)。映画『男はつらいよ』の話は5月7日の放送記録から!
さぁ、話をキツネに戻しましょう!

北海道でキツネといえば、やっぱり「キタキツネ」!北海道に住んでいると、キタキツネが一番美しく見えるのが、冬なんですよ。

▲豊平川(札幌)の、凍った川面を歩くキタキツネ!『サケカメラ』より

山陽さん:今から55年前のことなんですが、オホーツクのキタキツネを調べて、写真を撮り始めた方がいるんですけれども。竹田津実先生という、東川にお住まいの、この方の写真集を私は1冊持っているんですが、1974年に出版された、キツネの、かわいらしいばかりじゃない写真集なんです。その冒頭に「キツネ。それは、太古から今日に至るまで、人間に親しい、時には小憎らしい隣人であった」というふうに始まるんです。
キツネってのは「隣人」ですよね、やっぱりね。私はオホーツク海の側に子どもの頃から住んでいると、とにかく姿を見て過ごしました。でもね、冬の、この、何て言うのかな。尻尾の太い立派なのを見るとね。なんかフカフカしてあったかそう、立派だなと思うんですよ。
その反面ね、「小憎らしい隣人」というのもわかる気がして。
忘れもしません。私は22歳の時、自動車の運転免許を取ってたんですけれども、これは仮免許の試験で、ようやくですね、しかも3回目だったんです。キタキツネが飛び出してエンストして試験に落ちたという経験が(笑)。これね、こういう方が大勢いると思います、北海道に住んでると。
前回坂道発進うまくいって今回こそは!と思っていたら・・・もう、線路の向こう側からキタキツネが飛び出して、エンストして、もうね・・・(笑)
一説にはね、一緒に落ちた教習所に通ってた人たちが「この教習所ではあのキタキツネを雇ってるんじゃないか」と。あと、リヤカーを引くおばあさんが時々出てくるんだけど、「あの2人をセットで雇っているじゃないか!?」って噂が流れたぐらい、憎まれ口をきいたもんでございますよ。

山陽さん、最近はリヤカーを引くおばあさんはあまり見かけないということですが、キタキツネは、この日の朝も見かけたそうです。

山陽さん:夜行性なので・・・夜行性なので朝歩いてるっていうと変だけど(笑)、昼間よりも朝早くとか、暗くなってからのほうが見かけますよね。雪があるからわかるんですけど、キタキツネの足跡っていうのは、一直線なんですよ。犬みたいに、ペタペタぺたぺた、って、何て言うのかな。2本になってない。
佐藤:ジャンプしてるんでしたっけ!ぴょんぴょんって。
山陽さん:ジャンプして歩いてるのか・・・ジャンプして歩いてる風には見えないんだけどね(笑)

キツネ、見かけたことありますか?これについて、リスナーからもメッセージが。

・「足跡はよく見ます。」

山陽さん:足跡、ついていかないでしょ。わたし暇なんで、ついていくんですよ。たまに本人がいてびっくりするんですよ。向こうもびっくりしてるんですけど(笑)

■キツネはスピード成長!?

山陽さん:キタキツネはね、恋の季節がこれから始まるんです。竹田津先生の本によると、2月は恋の季節なんだそうです。そして3月末から4月にかけて分娩。2頭から7頭ということなので、去年の春に見たのは土管に住んでたんですけれども、6匹子どもがいたんで多いほうだったんですかね。
2週間で目が開き、20日ほどでえさも食べる。ここからが、キツネは成長早いんですよ。5月いっぱい授乳が終わったかと思うと、6月になると毛が抜けてきて、7月には「実習旅行」(竹田津先生がそう呼んでいる)といって、クワガタとったりカナブンとったりして。エサを捕る練習をし始めるんだそうです。
一番好物はネズミなんだそうです。
キツネっていうのはね、ものすごく聴覚が優れているんだそうです。目もそこそこ鼻嗅覚もそこそこらしいんですけれど、耳が、ものすごくよいんだそうですよ!!きょう、スタジオでも鈴木さん耳見つけてますけれども・・・何か聞こえてます?それ(笑)」
鈴木:そうなんですよ。キツネのコスプレしようと思うと、やっぱり売っているのって、耳なんですよね。
山陽さん:鼻だとしゃべりにくいですしね。
鈴木:あ、そういうことですかね。耳なんですよね、印象的なのはね。

※ラジオでは見えませんが、このページでご覧のとおり、鈴木アナは冒頭からエンディングまで、ずーっとキツネの耳をつけて放送していました。キツネ姿、しっかりじっくりご覧ください。

山陽さん:やっぱり聴覚が発達しているのは、キツネの特徴でしょうね。
この後の話にも関わってくるんですけども、聴覚が大事。キツネは。
8月の終わりには、なんとね、これも竹田津先生の本でいう「子別れの儀式」というのがあるんですよ。私は子供の頃に読んでなんか泣けてきたんだけど、独立を強要すると言うんですかね。親がもう、心変わりしたようにね。子どもに急に口を開けて、襲いかかってくるんですよ。それで兄弟同士もケンカして分散していくんですよね。一人前にならなきゃいけないという運命が、もう夏に。春に生まれて、夏の終わりには。だから秋にはもう、一匹で。元気に生きている奴もいれば、なんだか弱っちゃってる奴も見かけることになるんです。
ところがね。これが50年前に書かれた本なんです。私が生まれた1966年から竹田津先生は調査し始めたので。この頃からキツネは野生の食べ物だけでは間に合わなくなって、養鶏家の方のところを荒したりなんかして「竹田津先生がキツネに代わって謝りに行った」なんていうシーンもあるんですけれどもね、大変なんですよ、キツネも。
何が言いたいかというと、久しぶりにこの写真集を見て、キツネとも、私たちは50年ぐらい前から、とっくに、一緒に生きていくっていうのが難しくなってきたんだから、いま「目に見えないウイルスと共生」なんていうことを言い始めているんですけど、そんなことは可能なのかと、ちょっと思ったりするんですよね。キツネとさえ、私たちは・・・。
キツネの数が減っているのだそうですよ、その後調べてみたら。これね、いったんガーンと減ると、回復するとも言われているんですけど、なんともわかんないよね。
鈴木:そうですね。私も北海道の積丹半島というところに9月に行ったんですよ。そのときに、車を通ると、多分観光客の方が餌を与えてたんでしょうね。キツネが道路上で待ってるんですよね。ちょっと止まって・・・もちろんエサはやりませんけども・・・見ると、やせ細っているように見えるんですよ。コロナの影響で、やっぱり観光客が来なくなっちゃったから。それでキツネも人間からの食べ物が少なくなって、痩せていき、それに慣れちゃうと、自然の中で獲物を捕まえるすべもなくなっちゃって、っていうのが、、、何かあるかもしれないですね。
山陽さん:免疫が落ちてね、皮膚病になっちゃうんだって。そうすると、だからエサはくれぐれもあげられないね。

◆リスナーから

・「以前北海道を訪ねた時にバスの中からキタキツネを見ることができて感激しました。ガイドさんがキタキツネについて話をしてくれました。昔は毛皮目的でたくさん捕獲されていたそうですが「エサをやらないでください。そして寄生虫がいることがあるので触らないでください」と言われました。」

鈴木:やっぱり触っちゃいけないんですね。
山陽さん:長いこと言われてますよね。触れないですよ、なかなか。でも餌付けされているといけるのかなぁ・・・。野生動物は触っちゃダメだよね。遠くで見てるもんだよね。

・「キツネ。見てる分にはかわいいけどね。牛舎の周りにも来ますね。いろいろやるんだよね。困りものです。そういえば最近見ないな。」

山陽さん:いやもう、被害に遭った方はこんちくしょうと思うと思うよ。私の知り合いの農家さんもね。
トウキビを一口ずつかじっていくんだって。ニワトリでもなんでもね、1羽だけならまだ、腹は立つけどなんとかなるんだけども、ニワトリも阿鼻叫喚でしょう。トウキビも、畑全部かじれるだけかじって、しかも一口ずつかじっていくって、憎たらしいよね。
鈴木:総量で全部なくなるんじゃなくて、1個ずつ、ちょっとずつなくなるっていう。

・「キツネといえば「油揚げ」。子供の頃、日本昔話で「たぬき汁」という言葉を聞いて、たぬきそばはタヌキの肉、きつねうどんはキツネの肉が入っていると勝手に思っていました。さすがに今はちゃんとわかります。」

(((スタジオ爆笑)))
山陽さん:これもね、油揚げ、分類がなかなか難しくてね、大阪で「キツネ」だったのが、関東では「タヌキ」だったりするんですよね~。

さて続いては、「キツネが登場する物語」について。絵本や童話にも出てくるイメージがありますよね。あなたの好きな、キツネが出てくる物語は何でしょうか。山陽さんが選んだのは・・・?

山陽さん:キツネの出てくる物語って言うとね。何か・・・年明け一発目の話としてはタイトルがなんとも言えないんだけれどもね、『大凶の籤』っていう武田麟太郎さんという方が書いた小説があってね。ふと思い出したんですよ。昭和14年の作なんですけど。私ね、武田麟太郎さんの本は大概読んでるんですけど、この人は大阪の人なので大阪の下町が舞台なのかと思ったら、「年の瀬の浅草の木賃宿で、たまたま同じ部屋に居合わせて泊まり合わせた三人の男が一緒に飲み歩く」っていう話なんですよ。
一人は麟太郎自身だと思うんですけど得体の知れない人で、もっと得体の知れないちょっと小金を持ってる人が「おごりますから一緒に来てくださいよ」って。で、もう一人が、大道でキツネを使っておみくじを引かせているおじいさん。この3人が飲み歩く話が一番最初に浮かんだんだけど。
普通はキツネが出てくる話っていうと『ごんぎつね』だとかね。新美南吉で言うと『手袋を買いに』だとか、宮沢賢治でいうと『土神と狐』かな。もうこれはジェラシーの、人のなんとも言えない嫉妬の話ですよね。あと、浜田広介っていう人の『ある島のきつね』ていうのが、なんとも言えない話なんですが。
きょう、用意したのは、キツネといえばこれでしょ。サン=テグジュペリ『星の王子さま』
格言のようなものがあちこちにちりばめてあるお話なんですが、この中でキツネが、実に、もうこの物語の中で一番有名なセリフを吐くんですよね。
鈴木:あー、キツネ出てきますね!

■サン=テグジュペリ『星の王子さま』~キツネの格言の意味は?

かいつまんで説明すると、自分の小さな星から地球の砂漠に降り立った王子さまが、いろんな人に出会って、不時着したパイロットに会い、その前にキツネに会って話をするんですよ。そのキツネに「お願いだ、オレを飼いならしてくれ。」って言われるんです。これが近年、池澤夏樹さんの訳で出たので久しぶりに買ったんですけれども。池澤夏樹さんは北海道の方なんですよね(帯広市出身)。
それで、池澤さんが、前に、サン=テグジュペリについて書いてあったものを読んで、「もう私は、訳は引き受けないんじゃないか」っていうのをエッセイで書いていたのを読んだんですけれども、「やってるじゃないか!」と思って、今回読んだんですが。その中で、キツネが「お願いだ、オレを飼い慣らしてくれ」っていうシーンがあるんです。

山陽さん:子供の頃にこの「飼いならしてくれ」っていうのを、なんだろうな、何か「主と従」みたいで嫌だなと思ったんですよ。義経と弁慶みたいな感じで。それでね、「友達になってくれ」じゃダメなのかなと思ってたんですが、池澤さんも、飼い慣らしてくれという言葉を使っていらして。
残念ながら、サン=テグジュペリが原文でどう書いたか、原語がどういう言葉かわからないんですけれども、あとがきのところにね、「飼い慣らす」ということについて、「自然への積極的な姿勢」という言葉をひかれてたんですよ。キツネが「自分を飼いならしてくれ」って言ってるのは、私なりの勝手な解釈ですけれども、「一方的ではない環境への真摯な態度」っていうのかな。
それがキツネに設けた、キツネが望んでいる人間からの姿勢ってことですかね。一方的ではない真摯な態度で私に接してくれということなんじゃないかな、というふうに、解釈したんですね。
別れ際にキツネが「約束していた秘密を打ち明けるよ」と言って、これは池澤さんの訳なんですが、
「ものは心で見る。肝心なことは目では見えない。」・・・私が言うと、何か自分の中で、安っぽいっていう感じがこだまするんだけれども・・・なんだろうな。これって、これまでも、はなからずいぶん言ってる「手あかのついてしまった感じ」に聞こえるのかな。だとしたら、それはひょっとしたら「言葉さえ“商品”としてしか考えない功罪」のような気がするんですよ。だからいま肝心なことは何なのかって。
「この状況下で、世界は心で何を見てるのか」って考えたときに、なんとも言えないですよね。いま、何を、私たちは「心眼」で見なければならないのか、というのは、キツネから引っ張ってきて、『星の王子さま』を久しぶりに読んで感じました。去年だから、余計そう思ったのかもしれません。
佐藤:ここまで出てきたキツネのイメージとは全く違うキツネのお話が、ここで出てきた感じがしますね。
鈴木:違う面がありますね、キツネにもね。

『星の王子さま』の話を聴いて、リスナーからメッセージが届きました。

・「『星の王子さま』が出てきてハっとしました。学生時代からフランス語を学んでいるので原書で楽しんでいます。山陽さんの解釈、素敵です。」

山陽さん:ありがとうございます!原文はなんて書いてあるんだろう「飼い慣らしてくれ」は。なんなんですかね。池澤訳で、星の王子様読み直していただきたいと思いますね。

■教科書でもおなじみの、あの作品

さて、続いてのキツネの話は、1977年初版、安房直子さん『きつねの窓』

山陽さん:私は教科書では読んでないんですが絵本の絵のように絵がすてきで。
佐藤:わたし、読んだことありますよ!教科書で!

■『きつねの窓』~山陽さんによるあらすじ~

「ぼく」と名乗る山の中に住んでいる、猟師さんがいるんですが、木立の中を歩いていると一匹の小さい子ギツネを見つけるんです。白い子ギツネ。追っていくと、山の中で突然目の前にお店が現れる。
青い字で「そめもの ききょう屋」って書いてある。紺の前掛けをした子どもが出てきて、「何か染めましょうか」。さては子ギツネが化けたんだな、と思うんですが、だまされたふりをして中に入ってみると、「お指をお染めいたしましょう。」って言われるんです。はい。「ぼく」が親指と人差し指を桔梗の汁で青く染めてもらうと、、、何が見えたと思いますか。
昔好きだった女の子が自分の窓の中に、ワンピースを着てリボンのついた帽子をかぶっていて、目の下にほくろがという描写がなんとも言えない・・・。
それで喜んで、「お代はどうやって払ったらいいんだい」っていうとね。もう子ギツネだって完全にバレてるんですけど、「鉄砲をいただきましょう」。それで鉄砲を置いてくるんです。「じゃあ、お土産に」って、なめこをもらって帰ってくるんですが、家に帰る途中が待ちきれなくなって。「ぼく」は森の中で家に帰る途中、また指で菱形の窓を作ってみるんです。そうすると、子供の頃の自分の家の庭先、軒下に脱いだ自分の長靴、畑の青じそ、母の気配、ラジオの音、子どもの笑い声・・・その笑い声は「ぼく」と妹なんです。もう二度と戻らない時が、窓の中に現れるんですよ。
しかし!僕はこのあと・・・。ここから先は、安房直子さんの『きつねの窓』をお読みいただきたいと思います。

佐藤:こんな話でしたっけ・・・!そこまでちゃんと覚えていなかった。(絵の印象ははっきり覚えているのに!)
山陽さん:もう44年前の作品なんですがね。ほら、リモートとか何とか言って人恋しいご時世じゃないですか。あの時のあの人に会いたいな。なんて言う時に、きつねの窓があるといいですよね。もう、リモートなんかじゃ追いつかないような、昔の、自分の見たいものが見れる。人が、自分が見たいものが見えるんですよね。だからキツネってのは、なんか、こう…見せたり、見せなかったりするんですよ。
鈴木:ちょっと、話がそれるかもしれないんですけれども。今の山陽さんの話を聞いて、ぴったりだなぁと思ったお便りが来ているので、読んでいいですか?

・「神田山陽先生のファンです。今年の12月には、鼠小僧とサンタクロース(山陽さんの講談全集)を毎日聴きながら通勤していました。シャンシャンシャンシャンシャンシャンとトナカイが登場するところから川の上をソリが飛ぶ場面、爽快で気に入っています。山陽先生の気の向いた時でいいので、また関東で講演してほしいです。」

鈴木:私、今なんでこのお便りを読もうかなと思ったかというと、「きつねの窓」で指先に染めたところから覗くと、見たい世界が見えるかもしれないって言うのはありますけど、噺の世界もそうなのかと思いまして。
山陽さん:そうですね。はなしている本人は何やってるわけじゃないですからね。特に、落語は演じてるけど、講談は自語りなので、「舞台」はお客さまの頭の中でしょうね。そうすると、思い描いていただいているんだから。何か、こっちがやってるんじゃないでしょうね。もう勝手に「良い」と思っていただけるようなことになっているってことですよね。
鈴木:だから、「きつねの窓」でいうところの、「指を染める」作業を山陽さんがやってるんだなぁと。
山陽さん:そう言っていただくと、なんとも、面映いですね~。

■田中康弘『山怪』~いまこそ、キツネが必要!?~

出た時から読みたかったなぁって言うのはね、田中康弘さんと言う方が著書なんですが、『山怪』と言う近年の出版の本なんですよ。山の妖怪の話を聞き書きしたと言うのかな、実地調査をした本です。山で暮らす人たちの、不思議な気配を感じた話。これね~、「不思議な気配」ってわざわざ言っているのは、「もののけ」っていう言葉もねぇ…なんとなく、手あかがついているような気がするので「何とも言えない気配」と言わせていただきます。この中で、1番よく出てくるのがキツネにまつわる話なんですよ!化したり化かされたり。さらわれたり、狐火を見たり・・・、何かというとキツネが出てくる。面白いなと思ったのは、「昨日狐火を見た」と言うと、こっそり「あれ私なんだよ」て言うおじいさんがいたりするんです。それはね、山の小屋でこっそり「どぶろく」を作ってたんだけど、みんなに見つからないようにちょうちんを下げて夜暗くなってから歩いていたんだけど、こっそりこっそり見つからないようにしてて、その火をたまたま見た人が「あんなところに明かりがあるわけがない!狐火だ!」と。それを、そのままにしといたって言うんですよ。そういう話も載っているんです。

山陽さん:この不思議なこととかね。わからないこととか、考えて、煎じ詰めてみれば、解き明かせない事は無いのかもしれないんですけれども。今の、ちょっとした灯りぐらいについてはね。でも、それをうやむやにしていると変なんだけど、「いい具合のところで、白と黒ともつけずにいた」って言うのが昔はあった気がするんですよ。それはそうじゃないよ、とかってはっきり言わないというか。
「和を以て貴しとなす」じゃありませんが、いい加減なところでお互いに手を打っておくというか。キツネのせいにしておくって言うとキツネに気の毒なんだけど、キツネのせいにして暮らしていた時代のほうが、人はギスギスしなかったような気がするのよ。
なんかこう、攻め合いじゃないですか。人をやっつけていくような言葉遣いというか。それこそ、「気配」ですよ。人間の、荒々しいギスギスした気配みたいなものを感じるんだったら、その間にキツネが入ってくれるんだったら、キツネというのは、なくてはならないものだという気がするんですよね。
佐藤:そういえば、少し前に「妖怪のせい」にするのも流行っていましたよね(笑)。
山陽さん:なんかね、もっと化かしてほしいですよね。キツネにはね。
鈴木:でも、キツネで言えば「神の使い」と言われているものもあるじゃないですか。稲荷神社とか。山陽さん:あれ、神の使いなんですよね。私詳しいところはわからないので…、この「うんちく問答」は詳しいことはわからないで喋っているんですけどね(笑)、やっぱり、「山って言うところに神様がいて~」という信仰が今薄くなっているので。だから、初詣にいろんな方が神社にいかれたと思うんですけども、そこにどんな神様がいるかってあんまり考えないでお参りされている方は多いでしょうね。
鈴木:確かに、行って、こういう神様なんだって気づくというか。
山陽さん:そう、それも、毎年思って毎年忘れるというですね。あと、いろんなお願い事をした後に、叶ったらちゃんとお礼に行っているかっていうのも。
鈴木:耳が痛い、痛い…。
山陽さん:お礼がつきものなんですよ。そうしないと、やっぱり化かされたりね。キツネに、こんちくしょう!と思われたりするんですよね~。

◆リスナーから
・「キツネというと、お稲荷さん。我ら道民がよく食べるおいなりさんは俵型。これは稲を荷うと書いて「お稲荷さん」。キツネではなく、田んぼの神様なんだそうです。一方、関西のおいなりさんは三角にお揚げを折ってある。これはストレートにキツネの耳を模している。なので、おいなりさんなんだそうです。」

どちらも、おいしいですよね~。リスナーからの「おいなりさん」のうんちくを受けて、山陽さんからは、キツネといえば!気になる「キツネと油揚げ」についてのお話。

山陽さん:なぜ狐に油揚げを上げてまで神様の使いとしてまつったかと言うと、やっぱりね、ネズミの被害っていうのは、昔相当大変だったんですよ。今ほどお米も収量があるわけじゃないので「一反でこれだけ…」って言う、ようやくとったお米をネズミにかじられるなんて言うのは、悔しくてしょうがなかったんです。で、キツネの好物は、ネズミじゃないですか。それで、油揚げが本当は好きだったわけじゃないんですよ。いろんな説があるんですけども私が聞いたのは、本当はネズミを揚げてキツネに差し上げたんですって。でも仏教が入ってきて、殺生はいかん!ってことになって、がんもどきと同じですよね、「ネズミもどき」みたいなのを作って、キツネに差し上げたっていうのが、油揚げ。それで、キツネが油揚げが好きだって言う。
油揚げを置いておくと「あら!なんだ、ネズミが上がってんのかな!?」なんてキツネがやってきて、そこで、「俺の陣地だよ~」って、マーキングでおしっこをしてくれるんです。それが、ネズミが嫌って寄ってこないと言うので、村の入り口あたりにキツネにお供え物をした、と言うような話を聞いたことがあります。ただ、信仰っていうのはね、どのぐらい、どこまで、どうっていうのがなかなか言いにくいのでわかりませんが、こんな話もありました。
鈴木:なんでキツネって、こんなにいろんなストーリーの主人公になるんですかね。
佐藤:ほんとですね。ずる賢かったり、悪いやつだったり、そうかと思えば、すごくいいことを言う時もあるし。

◆リスナーから
・「日向坂46の曲に、ズバリ『キツネ』と言うタイトルのものがあって。この歌詞がまた面白いんです。女の子のずる賢さや、あざとさを、キツネに例えているんです。作詞した秋元康さんすごい!」

ぜひ、みなさんも歌詞を調べて読んでみてください…!

佐藤:わ~!まさに、キツネ!やっぱり、そういうイメージなのかしら(笑)。
山陽さん:申し訳ない、存じ上げなかった!タイトルがキツネなんですか!
鈴木:そうなんですよ、私もそんなに詳しく知らなかった。
山陽さん:へぇ~…!キツネだと、中島みゆきさんでもありますよね、キツネなんだかの歌。わかんないですか?(山陽さん、その後リスナーから来ていましたよ、『キツネ狩りの歌』ですね!)
佐藤:これも、女の人の話ですか?
山陽さん:中島みゆきさんですから、キツネそのものの話じゃないでしょ、女性の話でしょ。いや~、最近の歌にキツネがあるとは知りませんでしたねぇ。
鈴木:まさか、ねぇ。日向坂46が歌っているとは思いませんでしたね(笑)

▼番組で紹介した曲 ~神田山陽さんセレクション『裏テーマ・ビートルズ特集!』
『I Saw Her Standing There』/ The Beatles
『She Loves You』/ The Beatles
『I Want To Hold Your Hand』/ The Beatles

いかがだったでしょうか。本当に、キツネにはいろんな一面がありますね。今回をきっかけに、日常生活にひそむ「キツネ」を探してしまいそうです。あなたのまわりの「キツネ」見つけたらご投稿ください!
今回もお聴きいただき、ありがとうございました!番組最後でご紹介した『「うんちく問答」の楽しみ方』もご活用ください☆次回もどうぞお楽しみに!

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