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函館発 “ボス”を目指す、若ザルの物語

  • 2023年10月23日

北海道函館市の温泉地、湯の川にある函館市熱帯植物園。一年を通して様々な植物を観賞できるこの施設では、50年前からニホンザルを飼育しています。ここのサル山である若ザルがボスの座を目指しているのですが果たして・・・
(取材・文 NHK函館放送局 ディレクター岡 勇之介)

ボスが不在のサル山
現在、「サル山」に住むニホンザルは40頭。自然界でのニホンザルの北限は青森県なので、北海道でニホンザルを見られるのは、少し貴重です。植物園の開業当初、お客さんを楽しませたいという思いで、横浜の動物園からサルを連れてきたのが、このサル山のはじまりです。

いまこのサル山には“ボス”がいません。ふつう、飼育下にあるニホンザルの群れは“ボス”が統率します。逆に言うと“ボス”がいない群れは統率がなく、争いが絶えません。エサが食べられないサルも出てきて、乱闘で命を落としてしまうものもいます。

名乗りを上げたのは・・・
サル山で、ひときわ元気に飛び回るサルがいます。飛猿(とびざる)くん、7歳です。人間で言うとだいたい20歳くらいで、山で一番若いサルです。あまりにも元気がよく、どのサルよりも高くジャンプできることから、忍者の「猿飛佐助」にちなんで名付けられました。
飼育員の方々から「問題児」として、小言を言われながらもかわいがられています。
なにが問題なのかというと・・・彼、ちょっと「わがまま」なんです。他のサルのエサを横取りしたり、急に追いかけまわしたり。そんな飛猿をサルたちは遠ざけるようになり、飛猿は常に一頭で過ごしています。飛猿も他のサルと仲良くしようとはしません。一頭で生きていけるほどの「強さ」もあります。

強く優しいボスだったおじいちゃん
実はこの飛猿、歴代のボスの血筋なんです。特におじいちゃんの「函助」は、サル山史上最も偉大なボスと言われているサルです。
函助は、強力なリーダーシップで25年という長い間、サル山の“ボス”として君臨しました。強いだけでなく優しいサルで、ケンカの仲裁をしたり、メスの毛繕いをしたり、群れの子ザルのお世話までしていたそうです。多くの猿たちから慕われた函助は、ボスのまま生涯を終えました。亡くなった日のサル山は、静まりかえっていたそうです。

サルの群れでは、強いだけではなく優しさも兼ね備えていないと、“ボス”として認められません。“ボス”がいないサル山で、飛猿がボスになり群れを率いて秩序立ててくれれば・・・飼育員さんたちはそう願っていますが、飛猿自身は「強さ」とはなんなのか、「優しさ」がなんなのかを分かっていないようで、道のりはまだまだ長そうです。

ボスへのはるかな道
そんな飛猿にも、最近変化が見られてきました。
いつも孤独な飛猿に、毎日のように毛繕いをしてくれるメスが現れたのです。朝、エサの時間が終わると、決まった時間に飛猿に毛繕いをします。毛繕いは「コミュニケーション」のひとつ。
飛猿も見たこともないほど、リラックスしている表情です。飼育員さんたちも、これまで目撃することは少なかったようです。しかし、逆に飛猿が毛繕いをしてあげる瞬間は、まだ飼育員さんも見たことがないそう。ずっとひとりで生きてきたからこそ、接し方がわからないのか、やはり優しさとはなんなのかがわからないのか・・・。きっと飛猿がこのメスに優しくできたら、“ボス”への大きな一歩になるに違いありません。
飛猿は「強さ」とはなんなのかを、その姿を通して教えてくれるような気がします。

12月からは、サル山内のプールに温泉が流し込まれます。毎年、温泉につかるサルをひと目みようと、お客さんで賑わう時期です。飛猿は“ボス”になれるのか、訪れた方は彼の成長を見てあげてください。

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