NHK札幌放送局

私が主人公「防災小説」

NHK北海道 防災情報

2022年1月20日(木)午後9時43分 更新

「もし地震や津波が起きて、私が避難するとしたら・・・」そんなことを想像して“小説”を書く試みが教育現場を中心に広がっています。災害とか防災って聞くとちょっと難しいけど、私が主人公だったらあなたにも書けるかも。一度試してみてはいかが?

ある中学生の場合

釧路市の音別中学校。事前に地震の揺れや津波の映像を見るなどして学んだあと「防災小説」を書いて発表する授業がありました。1年生の清水望叶(もか)さんは、自分の「防災小説」をこんな書き出しで始めました。

《望叶さんの防災小説より》
それは突然だった。宿題も終わり、幼い妹と、小学生の弟と一緒に祖母の家でYouTubeを見ているときだった・・・

「防災小説」とは、自分が主人公のショートストーリー。地震の設定をあらかじめ決め、もし津波が来たらどんな状況になるかなど、それぞれが自分や家族を思い浮かべながら想像で物語を書きます。慶應義塾大学の大木聖子(おおき・さとこ)准教授が考案したもので、自分を主人公に未来を書くことで想像が広がり実際の備えをすることにつながる取り組みだとして、いま全国の教育現場で取り入れられ始めているんです。ふだんは漠然と捉えている災害を”自分ごと”として具体的にイメージできるのが特徴だといいます。

防災小説を書くポイント(大木准教授による)

「自分ごとにする」って?

望叶さんは妹と弟の3人きょうだい。母・美香さんと祖母・一枝さんは民宿を営み、父は会社員で日中は家にいません。普段、放課後はきょうだいだけで民宿の隣の祖母の家で過ごします。地震が起きたら、民宿のお客さんをみる母の代わりに、望叶さんは、妹と弟のことは自分が見なければと考えたといいます。

清水望叶さん
「まず第一はリアルに書かなきゃと思いました。お母さんを呼んでもたぶんすぐは来られないんで、自分がやろうかなって感じで小説を書きました」
《望叶さんの防災小説より》
突然、私のスマホから緊急地震速報が流れた。その音にびっくりした妹が不安になり、泣き出す。弟も泣きそうになりながら、こっちを見ている。その時、近くにあった時計がガタガタと左右に揺れだした。近くにいた妹と弟に机の下に隠れるよう言った。私はスマホを手に取り隣の民宿にいる母に電話をかけた。妹と弟が安心するよう、電話をスピーカーモードにして、声を聞かせてあげた。外に出ると、民宿に泊まっているお客さんたちと母も外に出ていた。
外は、いつもの街とかけ離れていた。近所の木は倒れ、家を囲っている柵についていた鉄板がはがれ、絵にかいたような地獄絵図が広がっていた。避難しようと、私たちは必要なものを持って車に乗った。祖母は足が不自由で、歩いていくのは難しいと思ったからだ。お客さんに避難所の位置を教えてから出発した。

家族の”気付き”も

望叶さんは、普段災害のことは家族でそれほど話さないと言います。でも母の美香さんはこの小説を知って望叶さんがそこまで考えているとは思わなかったと驚いていました。

母・美香さん
「私も仕事、夫も仕事して離れてる分、一番近くにいるので、やっぱり頼るとなるとお姉ちゃんになっちゃうんですけど、なんかすごくいろいろ想像してたんで、すごいなって思います」

「おっかないだけ思ってちゃ・・・」

自分を主人公にした防災小説を書いたことで、望叶さんは災害への向き合い方が少し変化したといいます。

清水望叶さん
「前まではただおっかないだけだったんですけど、小説書いてみて、おっかないだけ思ってちゃ行動できないんじゃないかなって。道路がへこんだとか、家が倒れて行けなくなったとか、だったら怖いじゃんって。そういうことは怖くなったんですけど、逆に、逃げられる備えはしたら大丈夫じゃない?みたいなのも考えるようになりました」

防災小説のルールは希望を持って終えること。望叶さんは避難所に無事たどり着いた時の光景で締めくくりました。

《望叶さんの防災小説より》
避難所に着くと、すでに父や友達がいた。その後すぐ、うちの民宿のお客さんたちもぞろぞろとやってきた。友達が私の方へ駆け寄ってきてくれた時、安心感と、無事だった嬉しさで、私は泣き出してしまった。

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