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JR留萌線 留萌・石狩沼田間の廃止から1か月 地元で感じることは

  • 2023年4月28日

2023年3月31日、JR留萌線の留萌・石狩沼田間が113年の歴史に幕を下ろしました。あれから、およそ1か月。地元・留萌で育った記者として、廃線を目の当たりにしてから今、感じるのは、廃止された留萌駅周辺の寂しさです。道内のほかの市町村と同様に、人口減少が進む留萌市ですが、次世代の子どもたちが希望を抱ける地域になってほしい、そう願わずにはいられません。(留萌支局記者・土田史世)

私は、幼少期の大半を、留萌駅の駅前商店街で過ごしました。両親は商売のために多忙で、弟が病弱だったこともあり、祖父母が商売をしていた駅前商店街を訪れることが多かったからです。当時は、店の軒先で、寂しく1人で遊んでいても、通行人や近所の人など誰かが話し相手になってくれたので、とても元気をもらっていました。

かつては活気があった留萌駅周辺。ところが、当時から30年が経過し、まさか本当に駅がなくなる時がくるとは。廃線が決まったことは、忘れられない衝撃でした。家の隣のクリーニング店や、カメラ店、本屋、酒屋に続き、毎週のように出前を頼んでいたラーメン店も店主が引退し閉店するとは、私には想像もできませんでした。

3月31日の廃線当日は、前日からの雨がざあざあ降り続く、とても肌寒い朝でした。早朝5時、留萌駅には前日から待っていたと思われる人の姿があり、キャンピングカーも止まっていました。私は、深川駅からの始発列車を撮影しようと、留萌駅から車で南へ。線路沿いには、カメラを構えた鉄道ファンが始発列車を今か今かと待っていました。始発列車が私の横を通りすぎる時、先頭と後部には「ありがとう留萌本線」のマークが装着されていて、それを見た私は「本当に最後なのだな」と実感しました。

午前7時頃に留萌駅に戻ると、地元ではいつでも身近に気軽に食べることができた駅そばを買い求めようと、駅の外にまで、長い行列。駅構内の窓口には最後に列車に乗ろうとする人たちの行列もできていました。廃線が決まるまでは、閑散としていた駅構内だったので、とても不思議な気持ちになりました。

そんな中で、強く印象に残ったのが、熱心な鉄道ファンの声でした。インタビューでマイクを向けて感じたのは、皆さんの鉄道へのあふれる思い。留萌が生まれ育った地域ではないにも関わらず、全国から最後の瞬間を見届けるために集まった皆さんからは、鉄道への愛着が感じられる声が多く寄せられました。

「廃線は悲しい」「また北海道からひとつ路線がなくなってしまう」
「きょうは最後まで見届けたい」

「鉄道」というものが、こんなにも人の気持ちを虜にするのか、と本当に驚きました。
最近、よく耳にする「推し活」という言葉では足りないような皆さんの熱意。留萌駅全体に皆さんの「鉄道」への愛があふれ出ていました。

いよいよラストランの時。普段は閉鎖されていた2番ホームも開放され、たくさんの市民や鉄道ファンが「蛍の光」の演奏の中、列車を見送りました。ホームの片隅では、知り合いの勝ち気なおばさんが列車に手を振りながら泣いています。とても失礼ですが、涙など流すイメージがない方だったので、その方の涙を見て私もまた泣きそうになりました。仕事中なのでこらえましたが。

最終列車が去ったあと、留萌駅の構内では撤収作業が始まり、私も駅をあとにしました。
その日の夜は色々な思いが頭を駆け巡りなかなか寝られませんでした。閑散としていた駅にあんなに人が集まるなんて、きょうは夢だったのでは、とも思いました。そして明日になったら、まだ留萌駅は存在しているかも。そんなことも考えてしまいました。

翌日の午前6時すぎ、私はもう一度留萌駅に足を運びました。ホームをのぞくと設置されていた看板は外され、昨夜までのにぎわいが嘘だったのではないかと思うほど静まり返り、すずめの声だけがチュンチュン響いていました。「本当に終わったのだ」と実感しました。

今後、留萌市は駅の跡地を再開発し、市庁舎を移転させ、複合施設やタクシーやバスの交通ターミナルを建設予定だということです。かつてにぎわいを見せた駅舎はなくなりますが、次世代の子どもたちのためにも、しっかりと議論し、ずっと使い続けることができる施設の建設を願わずにはいられません。

留萌支局記者・土田史世

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