ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. 番組スタッフ
  4. はるかなるひと~未踏峰への挑戦 野村良太のヒマラヤ日記~

はるかなるひと~未踏峰への挑戦 野村良太のヒマラヤ日記~

  • 2023年11月22日

「帰る場所、安心できる場所があるから、そうじゃない場所でも頑張れる」

≪放送予定≫
北海道スペシャル
はるかなるひと~未踏峰への挑戦 野村良太のヒマラヤ日記~

2023年12月15日(金)夜7:57~8:42[総合・北海道]
NHKプラスで見逃し配信中(12/29(金 午後8時42分まで

≪番組内容≫
ジャルキャヒマールへの挑戦は、野村良太にとって初めての未踏峰への挑戦であったばかりでなく、初めての海外遠征、初めての高所登山だった。期待と不安とが入り交じる中、支えとなったのは、学生時代から付き合うパートナー小髙優子の存在。野村は言う。「帰る場所、安心できる場所があるから、そうじゃない場所でも頑張れる」。
特別編では、野村が小髙のもとを旅立ってヒマラヤ未踏峰に挑み、再び彼女のもとに帰ってくるまでの物語を描いてゆく。

ー取材後記ー

「今度はヒマラヤの未踏峰に行こうと思ってるんです」。野村さんからそう聞いたのは、北海道分水嶺ルートの縦走を終えて半年が過ぎた、2022年の秋だった。そっちか・・・私が最初に抱いた感想は、正直なところ、少し冷めたものだった。北海道分水嶺ルートの縦走は、670キロに及ぶ雪山を単独で連続縦走するという、前代未聞の挑戦だった。他のどんな登山家や冒険家に話を聞いても、その価値を推し量る事は難しく、それほど長距離の縦走は想像がつかないと言われた。これに対し、ヒマラヤの未踏峰には、毎年のように様々な登山家が挑戦しており、少なからぬ成功例がある。テレビの世界で生きてきた私にとって、よく似た前例のある挑戦は、さほど魅力的なものに思えなかった。
だが、野村さん本人は、なんだかとても楽しそうだった。なにしろ初めて尽くしでワクワクしていると言う。未踏峰への挑戦が初めてなのはもちろん、高所登山は初めてだし、海外旅行も初めて。彼にとって価値があるのは「世間で高評価を得られる挑戦」ではなく、知らない世界に身を投じ、知らない自分を発見することだった。
そんな野村さんと会話を交わすうち、私は恥じるような気持ちになっていった。他者からの評価を求めているわけじゃないという彼の姿が浮き彫りにしたのは、テレビということを言い訳にしながら、安直な他者からの評価を基準に価値を推し量ろうとしている私自身の姿だった。本当の価値は、未踏峰そのものではなく、そこに挑もうという人間の姿にあるはずだ。「すごい冒険の物語」ではなく「一人の若者の生き方を描く物語」を作りたい。これが今回の企画の出発点となった。
生き方、という目で野村さんのことを見ると、彼はまさに人生の分岐点に立っていた。学生時代から8年間付き合ってきた優子さんと結婚の約束を交わしたばかりだった。ヒマラヤへの挑戦の過程では、ネパールの山岳民族の村々を歩いて異文化に触れることになるし、生命に関わる危険を感じる局面もあるかもしれない。これから新たな家族を築いていこうという日本の若者は、そこで何を感じるのだろう。
実際の番組制作を進める中で、私が担当したのは、日本に残る優子さんの取材だった。ヒマラヤへは同行しない代わりに、壮行会の席で野村さんに贈ったのは、文庫本2冊。真木悠介の『気流の鳴る音』と、星野道夫の『旅をする木』。私自身が人生の節目で繰り返し読んできた本だ。「ザックに入れて持って行きます」と言葉を残して、野村さんは旅立って行った。
彼は、ヒマラヤで何を見つけてきたのか。それはぜひ番組でご覧いただきたいのだけれど、最後に、番組の仕上げ作業を進めながら思い起こした言葉を紹介して、取材後記とさせていただきたい。
「寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人とを近づけるんだ」(星野道夫『旅をする木』より)

札幌局ディレクター 田辺陽一

≪関連記事≫
・未踏峰への挑戦~野村良太のヒマラヤ日記~HP
・白銀の大縦走HP

ページトップに戻る