NHK札幌放送局

初回放送! 宗谷のアドベンチャー

ローカルフレンズ制作班

2021年4月1日(木)午後5時01分 更新

ディレクターが地域に滞在して「宝」を探す新番組「ローカルフレンズ滞在記はじまりました。4月の舞台は、宗谷地方。第1週目は、稚内のスノーボーダーとのアツい出会いがありました(越村D)

宗谷からの招待状「背伸びしない魅力」

ディレクターが1か月、北海道のどこかに滞在するというこの番組。地域の魅力を伝えたいとNHKに応募してくれた人を“ローカルフレンズ”と呼び、ディレクターは、そのディープな人脈をたよりに、さまざまな人と出会い、その地域ならではの暮らしを体感していきます。つまり、ローカルフレンズが見せたいものがないとこの番組は始まりません。1か月という長いようで短い、この時間のなかでどんなものを見せたいと応募してくれたのか。
今回のローカルフレンズである尾崎篤志さんに聞いてみました。

尾崎篤志さん(47)
身長181cm、体重111キロの“小柄な相撲とり”(本人談)
中学、高校、そして社会人になってからはチームに所属して、バスケットボールにはげんだ
稚内駅前でゲストハウスを営む
越村「尾崎さんは、この企画に対してどんな思いなんでしょうか?」
尾崎さん「この地域って、『宗谷岬以外は何?』と思う人は少なくない。だけど、実際来て、長くいてもらえれば感じてもらえる魅力ってたくさんあるんだよね」

例えば稚内でいうと、「北のまち」というイメージが観光客を呼び込む強みになっています。ただ、尾崎さんは、ちょっと立ちよっただけでは分からない、魅力がまだまだあると言います。それは“背伸びしない魅力”。海や山の景色、そこに住む人々といった、普段目にするものこそ、尾崎さんが本当に伝えていきたいものだといいます。

そんな思いから、これまで尾崎さんは、NPO法人を立ち上げて町づくりに携わったり、宗谷地方の魅力を冊子やSNSで発信する「soya party」という取り組みに力をいれてきたりしました。さらに、去年には、稚内駅前にゲストハウスをオープン。お客との会話のなかで、宗谷のさまざまな魅力を伝え、繰り返し訪れてくれる人を増やそうとしています。“背伸びしない”魅力とは一体、どんなものなのか、この1か月、足を使って、できるだけ多くのモノや人に出会い、体感していきたいと思います。

“地域愛”にピンとこない僕

これだけ「地域」と「魅力」という言葉を連発している僕ですが、自分の場合を振り返ってみると、中身をともなわない言葉のように思えてきます。

ディレクター・越村真至(27)
神奈川県川崎市出身 10代のほとんどを東京ですごす
NHKに就職し、初任地で札幌に配属 普段は金曜夜の番組『北海道道』などを制作
学生時代の部活動は陸上 趣味は筋トレ(だった)

というのも、実家があるのは、典型的なベッドタウンで、実家がある地域は「帰って寝る場所」というイメージでした。東京にある中学校に通うため、朝7時すぎに家を出て、部活の練習を終えて夜9時ごろ帰ってくる。そんな生活は、高校、大学と続いていきました。買い物が不便なわけでもないし、交通の便が悪いということもないので不満はありません。

一日のなかで限られた時間しか、自分が住む地域で過ごさない僕にとっては、「地域」や「地域の魅力」といったことを考える機会はほとんどありませんでした。そんな僕には、尾崎さんのように地域に何かしらの考えや思いをもっている人が、なぜか羨ましく思えます。地域で生きていくとはどういうことなのか、この滞在を通してそんなことを考える、いや体感していきたいと思います。

尊敬する人がいる 会ってほしい

滞在初日、尾崎さんと一緒に昼食をとっていると、さっそく尾崎さんが会わせたい人がいるとのこと。

尾崎さん
「稚内でプロを次々と輩出しているすごい人がいる。その人のことすごく尊敬しているんだよね

その場で尾崎さんが電話で取材をうけてくれないか、交渉してくださり、昼食後、バスに飛び乗りました。教えてもらった場所に着いてみると、そこはスノーボード用品が並ぶお店です。声をかけると、カウンターのなかにいる人が、優しい声と柔らかい笑顔でむかえてくれました。

木村亘さん(46)
稚内出身 スノーボード店を経営しながら、地域の小学生を対象としたスノーボードの教室の開催やプロ選手を目指すチームの運営に力をいれている

木村さんのもう一つの顔は、地域のスノーボードチームの代表。「スロープスタイル」や「ビックエア」と言われる、ジャンプや回転の技をきそう種目に力をいれています。なんと、木村さんのチームからは、3年連続でプロ選手が生まれているといいます。正直、稚内でスノーボードが盛んなイメージがなかったので、素朴な疑問をぶつけてみました。

越村「練習環境って整っているんですか?」
木村さん「もともと稚内には、いわゆる普通のゲレンデしかありませんでした。だから、クラウドファンディングを使いながら自分たちでコースを整備しました
越村「え…?」

木村さんが、スキー場の整備にのりだしたのは8年前。地元の人たちがみずから重機をレンタルし、ジャンプ台などを造成しました。クラウドファンディングによって資金を確保しても、ゲレンデの整備には多くの時間と労力が必要です。なぜ木村さんはそこまでするのか。率直に聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

木村さん「“稚内では無理”という言葉や、ここに生まれただけで負けみたいな考え方はすごく嫌なんです。それさえとっぱらえば、住んでいる場所に関係なく、なりたいものになれるんです

風が強く、雪が降ってもゲレンデに積もりにくい稚内は、ウィンタースポーツにむいていないと考えられがちだといいます。だからこそ、木村さんは、みずからが中心となってゲレンデの整備を進め、良い環境がないとなげくのではなく、みずから環境を良くしていく姿勢を子どもたちに示したのだと感じました。整備されたジャンプ台で練習したチームのメンバーの中からは、4人のプロ選手も生まれています。

教え子が見る稚内

教え子たちは、木村さんをどう見ているのだろうか。一日あいた、滞在3日目に、教え子の一人に会えることになりました。待ち合わせ場所にした木村さんのお店に現れたのは、華奢な青年です。

阿部迅市郎(じんいちろう)さん(18)
稚内出身 小学4年生でスノーボードをはじめ、高校1年生のときにプロ選手になる

阿部さんは、木村さんのチームでキャプテンも務めていたといいます。笑顔が印象的で優しそうな目の前の青年が本当に「プロ選手」なのか…。まだ信じ切れていない僕は、近所の体育館で普段の練習を見せてもらうことになりました。それが、トランポリンを使った練習。スノーボードと同じく両足を固定した状態で、とびあがり、体を回転させます。ジャンプのときの空中姿勢や重心移動の感覚を磨くのが狙いとのこと。

このトランポリンも、木村さんが購入したもので、破れてはつぎはぎをしながら大切に使っているものだそうです。ちなみに、ディレクターの僕もトランポリンに挑戦しましたが、結果はお察しの通りです。

練習後、阿部さんの自宅にもお邪魔して、全国大会で勝った時のメダルや、プロの大会ではじめて入賞した時の賞状を見せてもらっていた時です。僕は気になっていた質問をぶつけてみました。

越村「阿部さんにとって木村さんはどんな存在なの?」
阿部さん「木村さんがいなかったら、スノーボードがここまで上達することはなかったです。木村さんに限らず、ゲレンデを整備するときは、地域の人たちが一つになって、一つのことに力を注いでいました。すごい、いいまちだなと僕は思っています」

一時は、都市部に練習拠点を移そうかと考えたこともあるという阿部さん。稚内にとどまることを選んだのは、地域からの支えのなかで「稚内から世界を狙おう」と思うようになったからだといいます。

越村「好きなんだね、稚内が」
阿部さん「好きです。田舎っちゃ田舎ですけど、でも、楽しいです!」

悔しいと頑張る

木村さんのアツい思いと、阿部さんの地域愛にふれた僕は、その日あったことを尾崎さんに報告しました。

尾崎さん「亘(=木村さん)は、本当にすごいよね。尊敬してる。だからこそ、越村くんに紹介したんだよね」

住む場所に関係なくなりたいものになれる。そんな木村さんの思いに尾崎さんが共感するのは、同じような経験があったからだといいます。実は、尾崎さん、6年前まで地域の小学生を集めたバスケットボールチームのコーチをしていました。当時、バスケットボールでも、「稚内のチームが北海道大会で勝つなんて無理だ」という風潮があったといいます。しかし、尾崎さんは、だからこそ指導に熱がはいりました。

尾崎さん「悔しいと頑張っちゃうよね笑……阿部くんが“稚内好き”と言ってくれたっていうのは、亘の思いが若い世代に伝わっている証拠だと思うから、うれしいよね」

“地域愛”というのは、誰かの踏ん張りがあってこそ生まれるものなのかもしれない。そんなことを思い、僕は滞在3日目を終えました。

初回放送は 4月1日(木)午後6:10~
「ほっとニュース北海道」

2021年4月1日


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ほっとニュース北海道

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