NHK札幌放送局

「自ら考える」津波避難 鹿部町の訓練から

道南web

2021年12月16日(木)午後1時26分 更新

ことし道が新たに公表した津波浸水想定では、道内各地で浸水域が拡大し、避難場所の見直しを迫られたケースが多くあります。その1つが道南の鹿部町です。12月8日、住民が参加した避難訓練が行われました。
キーワードは「自ら考える」です。

浸水域に入った避難場所

道がことし公表した千島海溝と日本海溝沿いの巨大地震による津波浸水想定では、多くの地域で浸水域が拡大しました。
太平洋側の鹿部町では、道南では最も高い11.9メートルの津波が襲うことが示されました。浸水域も、前回・2012年の想定より33%拡大し、町がこれまで津波の際の緊急避難場所に指定していた場所のうち2か所も新たに浸水域に入りました。そこで町は、新たに高台の公園を避難場所に指定しました。

12月8日には、新たな避難場所への避難経路を確認してもらおうと、町などが主催して訓練が開かれました。

参加者たちにはまず、浸水域が示された地図が渡されました。避難場所へのルートを自ら考えることで、万が一の際の避難について、主体的に関わってもらおうという仕掛けです。

それぞれが考えたルートで実際に避難を開始。
ところどころで、同行した町の職員から、その場所に到達することが予想される津波の高さが示されました。

途中まで、当初考えたルートに沿って歩いていた一行ですが、あるT字路で意見が分かれました。

住民
「この通りはお寺に行く橋が架かっている。川があるということは標高が低い。そっちはダメなの」
「ダメだけど、急いで逃げるとしたらこっちしかない」

避難場所に最短距離で向かうルートの途中には、標高の低い場所や川があり、浸水の恐れがあります。遠回りになっても浸水域の外にある別のルートを通るほうが安全だとわかりました。

住民ならではの視点で

避難の際、経路のほかにも課題はなかったのか。参加者は、訓練を振り返りながら議論しました。

住民
「当然屋上にいけば大丈夫だ」
「ここが安全だという確証があるんだから途中に寄らないでまっすぐ避難場所に行った方がいい」

まず議論になったのは、避難経路の途中にある建物の2階以上に一時的に避難する、いわゆる垂直避難の是非です。参加者からは、「時間的な余裕がない場合には有効だ」とか、「夜間など建物の鍵がかかっている場合は難しい」といった意見が出ました。
さらに、浸水域内にある介護施設の入所者をどう避難させるのかについても問題提起されました。

(参加した住民)
「自分なりに感じることで『なるほど』と気づかないことが町内にいてもありました。訓練の前は、公園までは近いと思っていましたが、歩いてみるとかなり距離がありました。今回参加していない住民にも、"自分ごと"としてとらえてもらうことが必要だと思います」

「自助」や「共助」を意識して

鹿部町は、今回出された課題を地域の防災計画に反映し、町内会などの単位で住民に周知してもらうことにしています。

(鹿部町総務・防災課 徳丸照彦 防災危機管理官)
「行政だけでは、『公』の目線になってしまいますが、こうした訓練に参加してもらうことで、住民自身の目線で避難について考えてもらうことができます。この機会に近隣住民との助け合いを意識してもらい、防災への備えに生かしてもらいたいと思います」

専門家「最適な避難は地域ごとに異なる」

訓練に参加した防災の専門家は、次のように指摘します。

(北海道大学大学院 高橋浩晃教授)
「津波の際の適切な避難というのは地域ごと、集落ごとに変わってきます。『これが必ず大丈夫だ』というものはありません。地域の特性をよく知る住民自身にも、最適な避難について考えていただくことが重要です」

鹿部町のように、道南では、函館市や北斗市をはじめ多くの自治体でこれまでの避難場所が浸水域に入り、見直しを迫られています。各自治体ではハザードマップの改訂などを進めていますが、地震や津波はいつ起こるか分かりません。住民1人1人が、新たな浸水域を確認して、いざというときの行動を考えておいてほしいと思います

<取材した記者>
小柳玲華(函館放送局・放送部)
2020年入局。函館局が初任地。警察・司法を担当し、事件・事故を中心に取材。北海道生活は初めて。初めて見た函館山の夜景に感動しました。

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