NHK札幌放送局

「期限迫る仮設住宅 高まる不安」

いぶりDAYひだか

2020年8月14日(金)午前11時06分 更新

初めて厚真町に入った日の光景が忘れられない。崩れた山肌。土砂に埋もれた住宅。消防や警察による救助活動。その様子を見て立ち尽くす人たち。自家発電機の明かりが照らす避難所。携帯電話もつながらず、被害の全容が分からない混乱のなか、私は取材を続けた。
あれから2年がたとうとしている。仮設住宅の入居期限がことし10月末に迫っていた。仮設住宅で暮らす人たちはいま何を思うのか。私はアンケート用紙を手に、1件1件訪ね歩いた。見えてきたのは、多くの人が今後の住宅のめどは立っている一方で、今後の生活には大きな不安を抱えているという現状だった。

災害公営住宅の入居決まったが…

厚真町表町公園の仮設住宅で暮らす女性は、一戸建ての自宅が地震による土砂崩れで全壊した。仮設住宅の退居後は災害公営住宅に入居することが決まっている。しかし、家賃を支払い続けられるのか、不安を感じているという。
女性は現在、仮設住宅に1人で暮らしている。地元の農家の手伝いなど、パートを3つ掛け持ちして、食費や光熱費、通信費などを賄うぎりぎりの生活だ。おにぎり1個だけで食事をすませ、生活を切り詰める。そんな生活をしていた彼女は食事を十分に取ることができず、倒れてしまうのではないかと思う時期もあったという。
いまの仮設住宅では家賃はかからない。一方で、災害公営住宅では家賃が毎月2万5000円かかることが決まっているとの説明を町から受けた。さらに敷金として家賃3か月分も支払わないといけない。ことし4月と5月に開かれた説明会に仕事で出席できなかった女性は、その後、町の職員からの説明で金額について初めて知らされたという。町から30万円は支給されるが、転居するときには照明器具やカーテンなどの家財も買いそろえなければならない。
女性は不安そうな表情を浮かべた。

「一般のアパートなら家賃も敷金もかかるのが普通とわかっています。でも仕事も正社員ではなく今後どうなるかわからないなかで、すごく不安です」

妻が倒れた直後、地震で自宅全壊

表町公園の仮設住宅に1人で住む男性(73)の不安も重い。
妻と2人で暮らしていた一戸建ての住宅が地震で全壊した。仮設住宅の退居後は災害公営住宅に入居することが決まっているが、ネックになっているのはやはり家賃だという。
男性の妻は地震の3か月前に脳梗塞で倒れ、いまも重い後遺症が残る。介護設備の整った専用施設の入居費用を賄うために、男性はいまも道路の復旧工事などの土木作業の仕事を続けている。
収入があるために町から提示された家賃の金額は月に2万8800円。年齢を考えればもう長くは仕事を続けられないと感じている。仕事を辞めてしまえば、妻を自宅で介護しながら、年金で生活費をまかなっていかなければならない。

「今は生活できるが、近い将来どうなるのか不安が尽きない」

「生の声を聞いてほしい」

復旧から復興へ。被災した街はいま新たな一歩を踏み出そうとしている。ただ、仮設住宅に暮らす人たちはその環境の大きな変化に不安を感じていた。表町公園の仮設住宅で住民の相談にのっている男性は、私にいつも「仮設住宅に住む人たちの生の声を聞いてほしい」と話していた。

「仮設住宅を退去し、一歩前に踏み出さないといけないことはわかっている。でも、それぞれの人に経済的な問題や家庭の事情などが現実としてある。行政には一人ひとりに寄り添った支援をしてほしい」

地震から2年が経ち、それぞれの生活状況が大きく異なってきている。被災した人たちをひとくくりに支援するのではなく、一人ひとりが抱える事情や生活に即した細やかな支援が必要なのだと感じている。

NHKでは7月に仮設住宅で暮らす世帯を対象にアンケート調査を行いました。今後、調査結果をお伝えする予定です。

(2020年8月14日)

三藤紫乃 帯広局記者 
2017年入局。札幌局~帯広局。現在は民間企業のロケット開発、ばんえい競馬、大学などを中心に取材。

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