NHK札幌放送局

となりのヒグマとどう付き合う 0755DDチャンネル

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2022年7月29日(金)午後8時11分 更新

ヒグマは北海道の自然の象徴で大事なものかもしれないけれど、どう付き合ったらいいの? そのヒントを、観光客にも大人気の旭山動物園のえぞひぐま館と、札幌藻岩高校のサークル「困ったくま」の活動に探しました。

初回放送:2022年7月30日午前7時55分〜 総合テレビ
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ガードレールが示すこと

旭川市の旭山動物園に2022年4月、えぞひぐま館がオープンしました。旭山流といえば「行動展示」。その動物「らしさ」を見れるような展示です。えぞひぐま館も、北海道の植物が植えられ、淡水魚が放された小川も再現されました。

旭山流の展示で「北海道の野山にいるヒグマ」を感じることができるのですが、「仕掛け」はそれだけではありませんでした。

えぞひぐま館に近づいていくと目に入るのは、メスのヒグマ「とんこ」と、北海道のどこにでもある「ガードレール」、そして「動物注意の標識」です。

えぞひぐま館の担当で学芸員の大内章広さんに聞いてみました。

「ここに道路の白線とガードレールがあって、その脇にたって山の方を見ているというイメージです」

立っている場所から展示スペースの一番奥までが50m。しかし、その50mは、動物園ならではの距離と教えてくれました。

「50mだったら、ヒグマはすぐ追いついてくる距離です」

話をしている間に、とんこがどんどん近寄ってきました。とんこと我々の間には、広い溝が設けてあるので、あわてることはありません。ただし—。

「動物園ではなく、野生のヒグマとの距離だったら、これはアウト(極めて危険)です。この距離感を知ってもらいたいんです」

「知床が先に経験している」

動物園の外では、勢いを盛り返したヒグマたちが、勢いが衰えている人間の領域にしばしば入り込むようになってきました。ヒグマと人の距離をどうするのか。えぞひぐま館は、そのヒントも展示しています。

えぞひぐま館担当 大内さん
「知床で起こっていたことが、いま道内各地でヒグマにまつわる問題として起きているんです」

壁一面に展示された巨大「絵巻」。世界自然遺産の知床で、野生動物の保護管理を担う知床財団が制作しました。ヒグマと人の軋轢の最前線で経験してきたこと、対応するためにやってきた対策を絵巻を見渡しながら「発見」することができます。

ヒグマと人が共生するために、これからどんなことを考え、行動すべきなのか、もしも、身近にヒグマ問題が起こったら…。ヒントはこの中にありそうです。

「知床で先駆的にいろんなことをやってきたおかげで、道内のほかの地域で防ぐことができている事故とか被害があるのではないかと思っています」

動物園の新たな役割

えぞひぐま館のまわりには、小さな展示物がいくつか用意されています。例えば、ヒグマがエサを食べきれない時につくる「土饅頭(つちまんじゅう)」の実物大模型。旭川市内でヒグマの出没情報があった時に、市が注意を呼びかける実物の看板も展示。手書きの文字で解説を添えています。

えぞひぐま館担当 学芸員 大内さん
「どうやって、その動物と共生していくかということを気づいてもらうような展示や情報の提供も動物園に求められる役割のひとつなのではないかと思うんです」


ピンクのユニフォームを身につけて

2022年6月、札幌市南1条西3丁目の買い物客で賑わう歩道を、ピンクのつなぎを着た高校生が歩いていました。彼らは、市立札幌藻岩高校の3年生のグループ。

「見にきてくださ〜い」

首からはグループ名の「困ったくま」のプラカードを掲げて、出店ブースの宣伝をしていたのでした。

道路脇に出店が出ることでマチナカを盛り上げようというイベントに参加。自分たちで用意したブースで、通りがかりのひとたちに、ヒグマについて知ってもらうのが目的です。

「困ったクマ」の活動のきっかけは、メンバーが2年生の時に取り組んだ、「総合的な探求」の授業。地域課題について学び積極的に関わるこの授業で、メンバーたちは、学校が位置する札幌市南区のヒグマ問題をテーマにしました。

南区は自然に囲まれた環境が魅力ですが、同時に、緑地が奥山とつながっているために生息域を広げたヒグマと人間との間で、軋轢が起きている土地柄です。

専門家の話を聞いたり、ヒグマが出にくいように藪を刈る草刈り活動に参加。札幌市が主催するヒグマフォーラムにも参加して、ヒグマと人間の関係や対策について学んできました。

活動は3年生になった今も、授業を飛び越えて続いています。3年生の今シーズンは、「困ったくま」主催のヒグマ対策のための草刈りや、オリジナルのクマ鈴作りを計画しました。


「わたしたちも楽しい」ということ

「困ったくま」の活動を取材していると、メンバーたちが楽しんで活動していることが伝わってきます。「軋轢が問題だから、解決するんだ!」という意気込みでは決してなく、「いまわたしたちができるのはこれ。だからやってみる」と、肩の力が抜けた活動が、いろいろな人を巻き込んでいるようです。

草刈りイベントへの参加呼びかけのため、真駒内児童館を訪問した時のこと。メンバーが手にしていたのは、ピンクのクマのかぶり物でした。

児童館に入った「ピンクのクマ」の5人を、子どもたちは大歓声で迎えました。

草刈りイベント当日、真駒内川の河原の会場には30人が集まってくれました。メンバーの予想を上回る人数です。

草刈りが始まって1時間で休憩時間がやってくると…。

「ではさっそく第1問。ヒグマの最長寿記録は何歳でしょう?」

これが「困ったくま」流、草刈りイベント。せっかく、ヒグマの対策をみんなでしようと集まったのに、それだけじゃつまらない。同じやるなら楽しくやらないと。

参加した人たちに聞いてみました。

同じ学校に通う高校生
「学校の活動でやらされているというのではなくて、自主的なイベントで、参加者も楽しめているからいいなって思います」
真駒内で街づくりに関わっている男性
「若い人が、言うだけじゃなくて、自分たちで企画を立てて、しかもそれを実行したというのはすごいことですよね」

「困ったくま」の目標は、「若い人たちにもっとヒグマのことを広めたい」です。

— 肩肘はらずに、楽しく活動する — 

高校3年生が、自然体でヒグマ問題に関わる姿は、まずはできることからやってみればいいんじゃないですか、と投げかけてくれているようでした。 

草刈りイベントを終えた「困ったくま」に、イベントをやり終えた感想を聞きました。

「自分たちも楽しめて、ヒグマ対策もできてよかったです(笑)」

北海道のヒグマ情報 ヒグマ情報#ヒグマ にまとめています。

札幌のヒグマってどんな環境に住んでいるの? ヒグマのいる森を定点で撮影するヒグマカメラ もどうぞ.

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