ナットク!とかちchは、「私 困っています新型コロナウイルス」をテーマに十勝のみなさんの疑問や困りごとにこたえるコンテンツを目指しています。今回は、たくさんの質問にあった帯広厚生病院についてです。
十勝の基幹病院、帯広厚生病院
地域に親しまれている帯広厚生病院。おととし、帯広競馬場の前に移転したことをご存じの方も多いのではないでしょうか。
実はこの病院は、十勝地方で唯一の感染症指定医療機関で、新型コロナウイルスの患者の治療で中心的な役割を果たしてきました。

十勝のみなさんから、この帯広厚生病院についての投稿をいただき、今回、テレビとしては初めて感染症病棟を取材することができました。加藤誠記者が皆さんの疑問の答えを聞いてきました。
患者の受け入れ状況は?
まずは新型コロナウイルス患者の受け入れ状況についての質問についてです。
44歳女性
「厚生病院にほかの地区のコロナ患者を受け入れているなど、たくさんのうわさがあります」
実際、どうだったのか、聞いてみました。
病院によりますと、詳しい感染患者の状況は言えないということですが、これまでに受け入れた陽性患者は5人で、そのうち4人は、十勝地方以外からの患者で、北海道からの要請を受けて、受け入れたということです。

取材した日(6月12日現在)は、誰も入院しておらず、大型連休以降は落ち着いた状況が続いているということです。
治療の指揮をとった、呼吸器内科が専門の山本真 副院長は受け入れた患者の容体についてこう振り返りました。
山本真 副院長
「微熱があった人はいましたが、ほとんどの人が症状そのものがなく過ごされていました。ここにきたときに症状があったのは1人だけでした。全員陰性となって回復し退院されています」
厚生病院の院内感染対策は?
病院の院内感染防止の対策についても投稿が寄せられました。
55歳女性
「病院は院内感染しないように万全になっているのでしょうか? 調べてほしい」
実際に入ってみると、他の患者や病院のスタッフへの感染を防ぐための様々な対策が行われていました。
まず、ウイルスに感染したり、発熱などの症状で疑いがある場合、一般の入り口とは完全に分けられた、北側にある専用の「感染入口」から入ります。病院では感染者と一般の人が交わらないように、区域を分ける、ゾーニングを徹底しているのです。

さらに、他の病院の紹介状がない外来患者の診察を原則中止しています。これにより、突発的な発熱の患者が一般の入り口から入ってしまうことも制限しているということです。
「感染入口」を入ると、ウイルスを外に漏らさない「陰圧」管理の「隔離診察室」。ここでPCR検査の検体採取も行われ、取材した6月12日現在で、40例ほど実施してきたということです(すべて陰性とのこと)。
そして、診察室から、専用エレベーターで9階に上るとウイルス対応の最前線となる感染症病棟があります。ベット数は6床でこちらも「陰圧」管理。ここで実際に治療が行われてきました。
発熱などの症状がある患者も、陰性確認の検査で病床に入る場合もあるということですが、実際に誰もいないことを自分の目で確認すると緊張が少しほぐれた気がしました。
ところでこの「陰圧」管理、空気が外に漏れない仕組みということなのですが、よくわからないので実験してもらいました。

空気の流れを見るためにドライアイスを病室の外に置いてもらうと、ドライアイスの煙は病室に吸い込まれていきます。病室の中から外へは、空気が漏れ出ていないことがわかりました。
実はこの陰圧管理、重篤な患者の治療を行う集中治療室の一部にもあるということでした。
専門チームで院内感染を防ぐルール作りも
さらに、病院では、医者や看護師、麻酔科医などで作る10人あまりの感染症制御チームで、さらなる対策の検討を進めていました。
その一つが、防護具の着脱のルール化です。患者がいる感染症病棟の病室の前には外にウイルスを持ち出さないよう「前室」が設けられていて、そこで防護具に着替えて入り、処置が終わったら脱いで出ます。

その際に、防護具に付着したウイルスから万が一にでも感染しないよう、脱ぎ着する順番も病院独自にマニュアル化を進めていました。
例えば、脱ぐ順番は、手袋→「消毒」→ガウン→「消毒」→キャップ・ゴーグル・医療用マスク→「消毒」。つまり、防護具を触るごとに消毒をこまめに行います。

チームメンバーの看護師(感染管理認定看護師)
「ガウンをぬいだ後に、顔の方に手を持っていきますので、顔にウイルスをつけないようにするための順番でやっています。着脱には時間がかかりますが、省くわけにはいかない大事なところです」
さらに、着脱方法を実践した動画も作成し、院内のネットに公開する徹底ぶり。順番を忘れた際にもすぐ確認したり、専門外の病棟の医療スタッフも対応できるようにしたりするためだということです。

あの薬、十勝では使えるの?
番組には治療薬として期待されている「アビガン」についても質問が寄せられました。
20代女性
「十勝で感染者の治療をした医療機関がどういった薬を使って治療をしたのか知ることができると安心する。アビガンが使うことができるのか知りたい」

山本副院長にぶつけたところ、「使える準備はしている」とのこと。
帯広厚生病院では大学が行っている臨床試験に参加し、病院の倫理委員会にもかけていて、必要があればアビガンを患者に投与できるということです。
また、日本で新型コロナウイルスの治療薬として承認された「レムデシビル」も使える準備はしていますが、薬が手に入りにくい状況だということです。
このほか、日本感染症学会が暫定的な指針として示している治療薬についても、小児科で使う準備をしているものもあるそうです。
現在の十勝の感染状況は
最前線で対応にあたってきた山本副院長。十勝地方で累計の感染者数が3人という状況が続いていることをどう見ているのか聞いてみました。

山本真 副院長
「私たちが把握している事実では実際には十勝そのものに感染の広がりはいまのところありません。もちろん潜在的に入っている感染者はいるのかもしれませんが、把握している中ではほとんどいないのかなと思います」
その上で、私たちの生活習慣で少し気になることもあると、くぎをさされました。
山本真 副院長
「手指の消毒が習慣となっている人も多いですが、手を見たら、指輪や時計をつけたまま行っていませんか。そこにウイルスがつきます。無駄なものは全部外して、洗うことが非常に大事なんです。手の指の消毒は基本です。人間でもっとも清潔にできるのはここだけなので、抜け落ちがないようにしてください」。

取材した加藤誠記者は
たくさんの投稿をいただいていた帯広厚生病院を取材できると聞き、視聴者の疑問に答えられると意気込む反面、少し緊張感を持った自分がいたのも事実です。しかし、細部まで行き届いた厚生病院の対策を知るたびにその緊張がほぐれていくのを感じました。
現在、東京や札幌などとの往来制限も解除となり、行動範囲も広がっていますが、頭のどこかで不安を抱えたままの人は多いのではないかと思います。帯広厚生病院の状況、そして使命感を持って戦う職員の方々の取り組みを知ってもらうことで、皆さんにとって、少しでも安心につながるのであれば幸いです。
2020年6月24日

