NHK札幌放送局

感染拡大 新型ウイルス~北海道でいま何が?~

北海道クローズアップ

2020年3月12日(木)午後4時55分 更新

北海道で今、異例の事態がおきています。新型コロナウイルスが道内各地にひろがり、鈴木知事が「緊急事態宣言」を出しました。幅広い年齢層や様々な職種の人に感染が拡大し、どこで感染したかわからないケースも増えています。未知のウイルスを食い止めることができるのか。いま、正念場を迎えている現場からの最新報告です。

感染を広げる 新型ウイルスの特徴とは

新型コロナウイルス」の感染状況が細かくわかっている七飯町のケースから、ウイルスの特性を追いました。

感染したのは、60代の男性議員。最初に体調の異変を感じたのは、2月3日。のどの痛み微熱があったといいます。しかし症状が軽かったため、議会の委員会で16人の議員と同席しました。この4日後、議員はかかりつけの診療所へ。診察した医師は、感染を疑う症状はなかったといいます。

「せきもたんもなくて、のどの違和感と、37度ちょっと超えるくらいの微熱。軽いかぜという印象でした」(診察した医師)

議員は処方されたかぜ薬を飲みながらマスクをつけ、イベント視察などの公務を続けていましたが、症状は良くならず、せきも出始めました。

2月13日。同じ診療所で再び診察を受けると、肺炎を起こしていることがわかりました。翌日、議員は市立函館病院を訪れました。最初に応対したのは、問診センターの看護師。しかしこの病院でも新型ウイルスの検査は行われず、議員は帰宅しました。

事態が急転したのは5日後。議員が再び診察を受けると、新型ウイルスの感染が確認されたのです。七飯町では、ただちに役場や議会を消毒。調査の結果、議員との濃厚接触者は69人にのぼり、このうち市立函館病院で一番最初に応対した看護師が感染していることがわかったのです。市立函館病院ではさらなる感染を防ぐため、当面、紹介状のない患者を原則受け付けないことにしました。

異変を感じてから感染が発覚するまで、17日間。気づかないうちに感染を広げる、新型ウイルスの特徴が浮かび上がってきました。

「このウイルスの非常に厄介なところは、症状が出ない方、出ない感染者、症状が出ても、かぜ、普通のかぜぐらいの軽い症状の方というのが圧倒的に多い事です」(札幌医科大学 横田 伸一教授)

初期段階では、医師でも見分けるのが難しいと北海道医師会 会長の長瀬 清さんはいいます。

「特に初期は普通のかぜの症状と見分けが付きにくい。道内各地の医師からも、その難しさの声をよく聞きます」(長瀬さん)

ウイルス学が専門の北海道医療大学 教授の塚本 容子さんは、感染が広がる原因について語ります。

「新型コロナウイルスは、症状が出る2日前から感染力があるということが報告されています。知らず知らずのうちに他の人にうつってしまう、ということもあると思います」(塚本さん)

北海道では全国的に見て、感染者の数が多いのが特徴です。世界的に有名な観光名所が多く、冬場には大きなイベントが開催されるため、人が集まりやすいことで感染のリスクが高くなるのではと塚本さんはいいます。

この新型コロナウイルス、どのくらい警戒する必要があるのでしょうか。

中国のデータでは、およそ8割が自然に治る「軽症」で済んでいます。しかしこの軽度の症状には、一般的なかぜと軽い肺炎も含まれているので注意が必要です。

高齢者や持病のある人は、特に注意が必要です。年齢別の致死率のデータでは、70代以降の亡くなる割合が多く、さらに持病がある人は合併症のない人に比べると死亡率が高くなります。高血圧も危険因子としてあげられているので、持病がある人はきちんとコントロールするということが大事になってきます。

ウイルスをもらわない、うつらないよう、なるべく人混みに出ないようにと「緊急事態宣言」が鈴木知事からが出されました。人混みを避けることに、効果はあるのでしょうか。

「新型コロナウイルスは、飛沫感染という経路で感染します。2メートル以内の人との距離が1つのリスクになるので、人混みに出ないというのは効果はあると思います。フランスのデータでは、新型インフルエンザの際に学校閉鎖を大規模に行い、子供の感染者が約3割減ったという報告もあります。効果は期待できるかと思います」(塚本さん)

医療をパンクさせないために 現場の対策は

塚本さんは、濃厚接触者でもすぐに検査を受けられないケースがあるといいます。

「現状では検査のできる数は限られていて、重篤な患者の確定診断に限定して使わないといけない状況です」(塚本さん)

さらに塚本さんは、新型コロナウイルスの特徴として症状が軽いときに検査をしても、ウイルスが検出されない可能性があるといいます。

感染をしていてもウイルスが増殖する前に検査をすると、陰性と出てしまう可能性が高いです。後になって陽性になったという例もあるので、陰性だから100%大丈夫というわけではないということを知っていただきたいです」(塚本さん)

長瀬さんは、新型コロナウイルスへの完全な治療薬は現状ないため、いろんな症状に対する対症療法を行っているといいます。

「新型コロナと診断が下っても、今は特別な薬や治療法がない。軽症の方は自分の免疫でなおしていく、熱があれば熱を下げる、呼吸が悪ければ呼吸管理をする。それを徹底して症状を安定させることが大切です。症状にあった適切な治療は医者がしてくれますので」(長瀬さん)

基本的な治療方針というのは今の段階では変わりがないため、検査ができない、診断名がつかないことで過度に心配をすることはないと長瀬さんはいいます。

今の段階で検査体制は限られていますが、患者を受け入れるベッドにも限りがあります。医療をパンクさせないように、今後患者が増えた場合を考え、現場では対策が始まっています。

感染者が相次いでいる旭川市。感染症対策の拠点である市立旭川病院では、新型コロナウイルスの患者は専用の病棟に隔離されます。

専門の医師など12人で作る対策チームは、感染を防ぐガウンや、高性能のマスクなど特別な装備で治療にあたっています。

用意してあるベッドは6つ。しかし感染が急速に広がっている今、ほとんどがうまっているといいます。

この状況を受け、市は4つの病院に受け入れ体制の整備を求めました。その一つが、旭川医科大学病院です。

「こんなふうに壁が出来てます。遮蔽して人が交わらないのが一番大事なので」(旭川医科大学病院 古川 博之院長)

感染者が外来で来ることを想定して、急きょ工事を行ったとのこと。壁を作って廊下を分けたり、病院の出入り口を別々にしたり、感染を広げないよう工夫しました。

旭川医療センターでは、結核患者の治療に使っていた施設を活用することにしました。

この診察室は気圧が低く設定されていて、ウイルスが外に漏れ出さない仕組みになっています。

「ここの中でウイルスがあっても、外には出ないで上にいっちゃう。上にいったところで、フィルターがついてて広がらないようにする広がらないようにする」(旭川医療センター 西村 英夫院長)

いまある施設を生かしながら、患者の受け入れ体制を整えていく方針です。

「市立病院だけに負担がかかるのは大変だと思うんですよ。ほかの公的な病院でも負担を分けあえば、どうにか乗り切れるのかなと今は思っていますけどね」(旭川医療センター 西村 英夫院長)

現在、旭川市で受け入れることができる患者の数は、5つの医療機関で50人あまり。

帯広、北見や網走でも同じように受け入れ体制を整えようとしています。医療機関と行政がコミニュケーションを密に取りながら、感染者が増えたときの取り組み方を考えているとのことです。

不安への対処 一人一人ができること

一方で医療資源が限られているという現実もあります。そこで厚生労働省は、感染が疑われたときに医療機関で受診すべきかどうかを判断するための目安を示しました。

◆熱やせきなどの症状が4日以上続く場合
◆高齢者や、糖尿病など基礎疾患のある人は、症状が2日程度続く場合

国の専門家会議のメンバーで小児科医の岡部 信彦さんは、症状が軽い人は外出せず自宅療養すべきだといいます。

「不安だということで病院に押しかけてしまうと、他の方をちゃんと診ることができない。容体が落ち着いている方は家にいていただけると。そうすれば、重症になりそうな方、あるいは重症な方をきちんと医療機関で診ることができるので。自分だけのためじゃなくて、重症な人たちを救っているんだという意識を持ってほしい」(岡部さん)

ただし状況によっては受診をためらわないようにと、塚本さんは注意を促します。

「医療機関を混乱させないために、軽症の人はできる限り自宅でということですが、どうしても急に具合が悪くなってしまうこともある。インフルエンザもはやっているので、高熱が出るとか、いつもの体調と何かが違うと思ったときは躊躇せず受診していただきたいと思います」(塚本さん)

人混みに出かけるのは避け、かぜの症状を感じたら、いつも以上に慎重になって家で休むことが大切です。その場合、個人や企業がそれぞれ“ 休む ”という勇気を持つことが大事になってきます。そして、休んだ人をどうやって経済的に支えていくのかについても、考えなければなりません。

2020年2月28日(金)放送
北海道クローズアップ
「感染拡大 新型ウイルス~北海道でいま何が?~」より

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