NHK札幌放送局

バイオガス発電 拡大のカギは「消化液」#十勝農業放送局

十勝チャンネル

2021年7月6日(火)午前11時46分 更新

「十勝農業放送局」4回目のテーマは「バイオガス発電」です。牛のふん尿から作ったバイオガスを利用した発電で、酪農王国十勝はその先進地となっています。
発電所が増える中で課題となっているのが、発電後に残る「消化液」という液体です。 この液体の活用が、バイオガス発電拡大のカギを握っています。

(NHK帯広 佐藤恭孝記者)


十勝で急増!バイオガス発電所

取材にうかがったのは清水町にある「御影バイオガス発電所」。十勝地方で牧場を経営する企業グループが運営する国内最大級のバイオガス発電所です。

飼育する4000頭の牛のふん尿を利用して発電し、一般家庭1000世帯分の電気を生み出します。発電した電気は電力会社に買い取ってもらっています。

牛のふん尿を利用して発電するバイオガス発電は、再生可能エネルギーを活用することから脱炭素社会の実現に向けても注目が集まっています。
酪農が盛んな十勝地方ではバイオガス発電所の建設が相次いでいて、現在50か所が稼働しています。道によりますと、今後、さらに31か所の建設が計画されているということです。

清水町で発電所を運営する企業も、2か所目となる新たな発電所の建設を現在、浦幌町で進めています。

ノベルズ畜産事業本部 嘉藤淳介さん
「牛のふん尿は使える資源なので資源は使っていかないともったいないですよね。きちんと循環型農業、持続可能な農業に取り組んでいくことが重要かなと思っています」


発電で発生「消化液」とは

発電所が増加する中、いま課題となっているのが「消化液」という液体です。「消化液」とは発電のため、ふん尿を発酵させたあとに残る液体で、清水町のバイオガス発電所でも、敷地内のため池に保管されていました。

くみ上げた消化液を近くでよく見てみると、濃い緑色をしていました。臭いをかぐと、かすかにアンモニアのような臭いがします。

この消化液、窒素やリン酸などを多く含むことからそのまま川に流すことはできません。
このため現在、主に行われているのは畑に直接まく肥料としての活用です。
しかし、水分を多く含むことから輸送にはタンクローリーが必要でコストがかかります。
さらに、肥料として成分も安定していないことから、散布されているのは牧草地が多く、畑などへの散布は進んでいないのが現状です。

今後、バイオガス発電所が増加する中で、大量に発生する消化液をどのように処理するのかがいま、大きな課題となっています。

ノベルズ畜産事業本部 嘉藤淳介さん
「散布にコストがかかってくるという課題もあり、消化液はまくところがあまりないのが現状です。土地面積をこれで使ってしまう部分もあり、保管はすごく大変です。もっと使いやすくなってほしいというところはあります」


「消化液」大きな可能性も

一見、やっかいもののようにも見える消化液ですが、肥料として大きな可能性を秘めていることもわかってきました。
帯広畜産大学の梅津一孝教授は、肥料としての活用に向け、消化液の分析を行っています。注目したのは消化液となる前の牛のふんに含まれる「種」でした。

堆肥として使われる牛のふんには牛が食べた雑草の種が含まれています。このため、牛のふん尿をそのまま堆肥としてまくと、雑草が生えてしまうのが農家の悩みでした。

梅津教授の研究によると、ふん尿を発酵させた後に発生する消化液では、雑草の種はほとんど発芽しないことがわかったということです。

帯広畜産大学 梅津一孝教授
「発酵の過程を経ると雑草の種子が死滅していました。これは肥料として活用する上では非常に画期的なことだと思います」

これに加え消化液では、ふん尿をそのまま散布する際の大きな課題となっている臭いの発生も大幅に抑えられることがわかったということです。

帯広畜産大学 梅津一孝教授
「肥料としての効果も高いですし、有機肥料として非常に価値のあるものです。うまく利用すると大きな資源だということは言えると思います」


「消化液」活用へ 十勝発の研究

新たな資源となる可能性も見えてきた消化液ですが、その有効活用に向け、帯広畜産大学は民間企業と共同で新たな研究を始めることになりました。

研究は3年間行われ、企業8社から研究費として1億円が寄付されるということです。
研究では液体の消化液を固体に変え肥料として使いやすくしたり、無害化したりする技術の開発を目指すということで、十勝発の研究成果に期待が集まっています。

帯広畜産大学 井上昇副学長
「ビジネスモデルとして成り立つということもきちんと考えながら、私たち農業を専門にやってきた単科大学として、あまり研究がやられていない部分に先陣をきって成果を挙げていきたいと思っています」
【取材を終えて】
今回の取材で、十勝地方のバイオガス発電所の数を調べてみたところ、改めてその多さに驚きました。それだけにその副産物である消化液をどうするかは、待ったなしの課題です。今回、経済界が資金を出して、処理方法の研究をバックアップする動きには、地域の底力も感じました。消化液の処理で難しいのは、常に環境への負荷を考えざるを得ないことです。多くの関係者からは「せっかくの再生可能エネルギーなのに、消化液の処理で多くの温室効果ガスを出しては意味がない」という声も聞かれました。実用化に向けては難しい研究になることも予想されますが、産学連携のモデルケースとして、今後も注目していきたいと思います。

2021年7月3日放送

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