十勝の音更町では、介護や福祉を学ぶ学生たちが高齢者を支える取り組みを行っています。その名も「お元気コール」。いったいどんな活動なのか取材しました。
(帯広放送局記者 前嶋紗月)
学生が地域のお年寄りを守る
「寒くなりましたね、本当に」
「体調にお気をつけください。これから雪が降るかも知れないので」
電話をかけているのは帯広大谷短期大学の学生たちです。
電話の相手は一人暮らしのお年寄りです。

この取り組みは「お元気コール」と呼ばれています。お年寄りの見守りを強化するため、およそ30年前に町の事業として始まりました。ひと月に1度、およそ80人に電話をかけていて、3年前からは学生たちも授業の時間を活用し参加しています。
参加している学生の1人、2年生の蓑島綾さんです。将来、介護福祉士になることを目指しています。話し相手になるだけでなく、相手の健康状態なども聞き取ります。

蓑島さん「最近体調は大丈夫でしたか?」
高齢者「足を痛くして歩くのが大変になっていましたけど。治りました」
蓑島さん「雪降ったら危ないので気をつけてくださいね」
電話をもらえてうれしいのは、お年寄りだけではありません。蓑島さんは女性との電話が心の支えにもなっているといいます。
蓑島さん
「いつもお話が好きな方で、元気な方できょうも変わらず元気で良かったです。電話を通しておばあちゃんと一緒に話している感覚というか、心のよりどころになっているなと感じます」
役場と連携 暮らしを把握
音更町では一人暮らしのお年寄りが令和2年までの25年間で4倍に増加しました。
町では、「お元気コール」をお年寄りの暮らしの把握にも生かしています。
この日は、役場の担当者と蓑島さんたちが大学に集まって情報を共有しました。活動報告だけで無くお年寄りによりよいサポートができるよう、担当者に助言を求める様子も見られました。

蓑島さん「担当している方がとても活発な方でコーラスも週に1回行ったりとか、お寺にも行ったりしていて」
女子学生「家の修繕を家族がいるときにだけ手伝ってもらってやっているみたいなんですけど、もしこれで家族が居なかった場合どういう対応をしたらいいのかなっていうのが」
情報は役場内で共有し、気になるケースは職員が対応することもあるということです。

音更町役場高齢者福祉担当 久光宏明 主幹
「非常に感謝しています。学生さんからも勉強させてもらいながら、我々職員も一生懸命やっていかなくてはだめだなと思っています」
交流は電話を超えて
お元気コールで生まれた学生とお年寄りとのつながりは、電話でのやりとりを超えて広がっています。クリスマスに合わせて手作りのカードとプレゼントをお年寄りに直接手渡そうと計画しました。なれない作業に苦戦しながらも、相手に喜んでもらおうと一生懸命作っていきます。

蓑島さん
「形にするのが難しい…。喜んでもらえるように頑張っています」
学生の思いがこもったカードに加え、さまざまな動物のマスコットが完成しました。

そしていよいよ当日。
蓑島さんは、普段電話でやりとりしている女性のもとを訪れました。手作りした黒猫のマスコットとカードを直接手渡すことができました。

蓑島さん「私が作ったプレゼントです。良かったら」
女性「あらかわいい!(手紙を読みながら)お身体に気をつけてお過ごしください、ありがとうございました」
「お元気コール」への思いも聞けました。

「1人暮らしですし、コロナのこともあってお話できないから。
この電話のときに好きなように話してもらおうって気を遣ってくださっているんじゃないかって。ありがたいなと思っています」
蓑島さんは、女性に直接会うことができたうれしさと同時に介護福祉士になるという思いを改めて強くしました。

蓑島さん
「直接話したほうが、表情とかも分かりますし、お会いできてうれしかったです。何気ない会話から利用者や高齢者の方の本音を引き出したり、表情を観察したり、これから働く上でもすごく大事だなと思っています。頑張りたいと思います」
今回紹介した「お元気コール」は70歳以上の1人暮らしで介護サービスを利用してない人が対象です。町には、電話での会話が生きがいになっているという声も寄せられているということです。
《あわせて読みたい》
▶更別村にコミュニティナース着任!
《前嶋記者が取材したその他の記事はこちら》
▶ばんえい×ウマ娘×邪神ちゃん 新たなファンを呼び込め
▶滑走路が「映えスポット」?“宇宙のまち”を観光地に
▶牛のふん尿からLNGに代わる新エネルギー
▶NHK帯広放送局ホームページ
▶NHK釧路放送局ホームページ