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Do!|#01 Kawabata Maho

  • 2022年10月31日

なぜその番組を作ったのか?そのコンテンツに込めたメッセージとは? NHK北海道の職員、作り手たちの情熱や想いなどに深く迫るインタビューシリーズ「Do!」。
 「Do」は、 北海道の「道」と、「(創造的に)「手がける,生み出す」」という英語の意味から タイトルに付けました。公共メディアのクリエーターたちの熱き“Do”を感じてください。

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NHK北海道では「#ナナメの場 みんなでつくろう、もうひとつの居場所」というキャンペーンを展開しています。親や先生などタテの関係でも、友達などヨコの関係でもない“ナナメの関係”が生まれる「ナナメの場」。そんな、ナナメの場を取材している、川畑真帆ディレクターに話を聞きました。

〔Photo By 渡辺誠舟〕
〔聞き手   齋藤千夏・柳川達郎(NHK札幌局広報)〕
※オンライン取材を行い感染対策を十分とったうえで撮影しています

―ナナメの場というキャンペーンを立ち上げましたが、そもそも「ナナメの場」とはどういう場所なんでしょうか?

日常的な人間関係って、親や先生・上司といった上下関係、つまりタテの関係と、友達や同僚、同世代といったヨコの関係ですよね。
この限られた関係の人たちだけだと、ちょっと窮屈に感じてしまったり、しんどいなって思うことってあると思うんです。

―たしかに、小さな世界で生きていると感じる時はありますね

そういうときに、近所のお姉さんのような「ナナメ」の関係の人だったら、普段は言えないようなことでも気軽に言葉にできるかもしれないなと。直接の利害関係がない人だからこそ話せることってあると思うんです。

―ナナメの場という言葉はもともとある言葉なんですか?

これは、私たちがつくった言葉なんです。
「ナナメの関係」という言葉は福祉関係でよく使われているのですが、そういう「ナナメの関係」が結べるような場所をつくりたい、広めたいと考えて「ナナメの場」と呼ぶことにしました。

―どうしてカタカナで「ナナメ」?

福祉関係の人もカタカナを使うことが割と多いと聞いたことがあって。やわらかいというか、気軽に感じてもらえるようにカタカナにしました。北海道の地域の方(番組出演者でもあり、紅茶の喫茶店オーナーの水野莉穂さん)にロゴを作ってもらったのですが、「ナ」の字が斜めになって「メ」になるのがかわいいよね、という話もして、カタカナにしています。

― #(ハッシュタグ)もついていますよね?

そうなんです。
# (ハッシュタグ)をつけた理由は、キャンペーン感を出そうと思ったから。NHKだけじゃなくて、いろんな人にこのハッシュタグを使ってもらって「ナナメの場」を発信してもらったり、広めてもらいたいと思ってつけることにしたんです。

―どうして「#ナナメの場」のキャンペーンをはじめようと思ったんですか?

「ナナメの場」を取り上げようと思ったきっかけは、ことし6月に、池田詩梨(ことり)ちゃんという2歳の女の子が2年前に札幌で亡くなったという事件の検証番組を制作したことでした。

ちょうど、事件から丸2年のタイミングで、幼い命がなぜ失われたのか検証しようという番組を制作しました。2歳で亡くなった詩梨ちゃんの母親と交際相手が逮捕され、裁判で有罪の判決が言い渡されました。詩梨ちゃんは必要な食事などを十分に与えられず、衰弱して亡くなったとされているのですが、調べていくうちに、母親が孤立していたことが分かってきました。頼れる人が一人でも近くにいたら違ったんじゃないかというのは、取材をしたいろんな人が言っていたんですよね。

―頼れるひとって人それぞれですよね
 話だけでも聞いてくれる人がいたら、すっきりしたりするし

そうですね。困っている時に、タテでもヨコでもないナナメの関係の人が一人でもいて、話を聞いていたりすれば、もしかしたら救われるようなことがあったんじゃないかなっていう考えが生まれて。「ナナメの関係」を調べていくことにしたんです。

―でも、そんな簡単じゃないですよね

確かに簡単ではありませんが、取材をしてみると、こうした「ナナメの場」を作っている人が確実にいることがわかってきたんです。例えば、札幌にある子ども・若者の居場所「いとこんち」では、スタッフが親戚のおじさん・おばさんのように、子どもたちと一緒にご飯を作ったり、遊んだり、勉強を手伝ったりしています。まさに、親戚の家、いとこの家のように気軽にくつろげる場所なんです。スタッフの方が「ちょっと手を差し伸べる人というのは、専門家である必要はない」と言っていました。家族や友達に話しにくいけれど、仲のいい近所のおばさんに話してみようかな…というようなことが社会に広がればいいと思って、取材を続けています。

― 以前から「ナナメの関係」に関心があったんですか?

そうですね、もともと教育・福祉には興味があって「ナナメの関係」という言葉自体はなんとなく知っていました。振り返ると、大学時代に、東日本大震災などの被災地へ学習支援にちょくちょく行っていたんですけど、ボランティアの学生と地元の子どもたちは「ナナメの関係」みたいな感じだった、と思いました。両親が学校の先生をしているのでその影響もあったのかもしれません。

―学生時代から教育や福祉について考えていたんですね

大学時代は、教育支援っぽいことに関わっていたりとか、紛争や迫害などで祖国を追われて難民になっている人々のことを子どもたちに知ってもらう学生団体で活動していました。学校に出向いて、難民問題に対してできることを考えようみたいな出張授業をしたり。

―かっこいい

その中で私自身も何ができるんだろうと考えたときに、ひとりの力で解決できることって本当に少ないと。それ以前に、社会には問題も山ほどあって、知ってほしいけど知られていない問題はどうしたら気づいてもらえるのかなって。

―自分が知りたい情報が簡単に手に入る時代だからこそ、興味のない情報が届きにくくなりましたよね

そうそう、そんな中で、問題がここにありますよって知らせないといけないなと。他人事だと思っていたことが実は自分にも関係することなんだといろんな人が思ってくれたら、その問題にアプローチする人が増えると思うんです。

―なるほど、社会の問題や課題を多くの人に伝えたいからディレクターを目指したんですね

いま、特に若い人を中心にテレビ放送を見ない人が増えていると言われているけれど、やっぱりまだまだ一度に多くの人に情報を届けることができるのがテレビかなと。番組を作ることで深く問題について知ってもらえることにつながるんじゃないかなと思って、ディレクター職を選んだというのはありますね。

―しばしばメディアは、報じる、問題点を提示するだけ、と言われていますが、「#ナナメの場」のキャンペーンは、未来に向けて「環境」や「場所」をつくろうとしていますよね

まさにそうですね。私も新人時代は問題点を知ってもらうのが仕事だと思っていたのですが、札幌局に来て、地域局のリブランディングを目指す局内プロジェクトに参画する中で、考えが変わっていったかなと。

―具体的には?

いま、テレビを見る人自体が少なくなっている中で、公共メディアの役割を考えたとき、メディア自身がもっと開放して、コミュニティを広げていった方がいいのかなと思っています。局内のプロジェクトから生まれた「ローカルフレンズ滞在記」というコンテンツもまさにそういうコンセプトで、NHKが、ハブになって地域の人たちが出会うきっかけを作る。NHKがそういう場になったらいいなというのは常に考えています。

―「ナナメの場」キャンペーンは今後どうなってほしいですか?

「ナナメの場」ってすごく新しいことを私たちがやっているように見えるかもしれませんが、実は違うんです。名前をつけて可視化したというか。

―可視化ですか?

メディアって、社会のなかでモヤモヤとした事象に名前をつけることで、より可視化して社会に広めるという役割もあると思うんです。例えば「ワーキングプア」や「子どもの貧困」はNHKの番組で広まったんですけど、「ナナメの場」もそうなればいいなと思っています。

―身近な「ナナメ」の場所ってどんなところだろう。。。

そんなに、むずかしく考えなくても(笑)
例えば、地域に開放しているお寺や子ども食堂、もしかすると、カフェなんかも「ナナメの場」になっているところはたくさんあります。

ーなるほど、いろんなところに「ナナメの場」はあるんですね

そうなんです。知らない人や気づいていない人に知ってもらえたらと、私たちは、テレビやラジオ・ホームページでそういった場所の紹介をしたり、行きたい・作りたいと思う人の手助けができたらいいなと思っているんです。

―確かに、気づいてなかったです。伝え方もさまざまなんですね

はい。テレビは1度に多くの人に伝えるには効果的な媒体で、ラジオはリスナーに直接話を聞けたり、よりコミュニケーションがとりやすい媒体ですよね。WEBは知りたい情報を詳しく見てもらえる。つながる・つたえる方法はたくさんあって、私たちは知りたいと思っている人たちに届けきることが大事なのかなと思っています。

―ありがとうございました!
ナナメの場 各地に広がると嬉しいです

川畑 真帆  Kawabata Maho
2017年入局。帯広局 メディア部 ディレクター(2021年~)
京都府出身。報道局国際番組部(2017年)、札幌拠点放送局放送部報道番組(2018年)を経て現職。趣味は音楽でトランペットを吹く。

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