ナットク!とかちchでは「私困っています 新型コロナウイルス」というテーマで、十勝の皆さんの疑問や困りごとにこたえるコンテンツを目指しています。
十勝でも高齢者へのワクチン接種が本格的に始まっています。番組では池田町の集団接種初日に密着しました。医療従事者はワクチン接種にどのように臨んでいたのでしょうか。
接種日は“午後休診”
集団接種初日の5月10日正午すぎ。十勝医師会会長の栗林秀樹医師の診療所を訪ねると、午前の診療を終えた栗林さんが出かける準備を始めていました。
池田町では平日の午後に毎日、集団接種を行っています。町内の病院1つと診療所3つは接種に対応する当番を曜日ごとに決めていて、この日は栗林さんが担当でした。診療所の医師は栗林さん1人のため、接種を担当する日の午後は休診にするということです。
十勝医師会会長 栗林秀樹医師
「片手間にはおそらくできないということで、担当する週1回、午後を休んで集団接種にあたることになったので、きょうはうちが休診です。ただ、ほかの医療機関は診療しているので、町全体としての医療機能は損なわれることはありません」

潜在看護師を活用!
池田町で5月10日から始まった集団接種では、スムーズに接種を進めるため医療従事者が徹底していたことがあります。それは“役割分担”です。
接種会場で、看護師が担っているのは
①ワクチンの解凍
②ワクチンの希釈
③注射器への充填
④接種
⑤経過観察
と、多岐にわたります。

池田町では、これらの作業を看護師が役割分担し、流れ作業で効率化を図っています。
こうした対応を可能にしたのが、町がワクチン接種のために独自に確保した8人の看護師です。この中には、看護師の資格を持ちながら現場を離れていた「潜在看護師」も含まれているということです。

この日、栗林さんの診療所からは、栗林さんのほかに看護師2人が集団接種の対応にあたりました。町が確保した看護師が「接種」以外の作業を担ってくれたため、栗林さんは問診に、看護師2人は接種に集中することができました。

町内には看護師がいない診療所もありますが、その場合は看護師が担う作業はすべて、町が確保した看護師が行ってくれるため、医師は問診に専念することができます。
こうした仕組みのおかげで、池田町では小規模な医療機関もすべて、接種に参加しています。栗林さんは医師の人手が限られる地域では、小さな医療機関でも参加しやすい仕組み作りが求められると考えています。
十勝医師会会長 栗林秀樹医師
「今回のワクチンは非常に作業が多くて、看護師が携わるところだけでも多岐にわたります。それぞれの医療機関に来てもらってワクチンを接種する“個別接種”の場合は、その作業をすべて医療機関がやらなければなりません。大きな医療機関ではできますが、うちのように小さな医療機関では難しいのが実情で、協力したくてもできません。ただ集団接種で今回のような仕組みを整えてもらえれば、医療機関としては問診と接種だけで済むので、規模の小さな医療機関でも接種に参加できます」
開始から1週間 接種は順調
さまざまな現場の工夫もあり、池田町では順調に接種が続いています。町によりますと、接種が始まった5月10日から17日までに、町内の65歳以上のおよそ2割にあたる560人が、1回目の接種を終えたということです。5月17日までに、重大な副反応は確認されていません。
池田町では、5月22日に新たにワクチンが届くということで、それまで1日平均100人前後だった接種を、最大138人まで増やすことにしています。

十勝医師会会長 栗林秀樹医師
「一部の医療機関でやるのではなくて、すべての医療機関が参加できる形を町が用意し、ワンチームを作ることができたのがよかったと思っています。すべての医療機関で荷を分かち合うことができています。最近は再び、感染が急速に拡大しています。場合によっては休診の時間帯や日数を増やして、ワクチン接種を早めに終わらせることもできると思うので、そういうことが求められれば前向きに検討したいと思います」

取材した辻脇匡郎記者は
新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、十勝でも始まった集団接種。池田町では、すべての医療機関がワクチン接種に参加していて、まさしく「ワンチーム」で臨んでいました。全国でワクチン接種に携わる医療従事者の不足が課題となる中、池田町ではすべての医療機関と町が参加してことし1月から会議を重ね、町内の医師全員の意見をまとめて、接種に臨んだということです。その一方で、小さな医療機関の医師は接種の日は休診にせざるを得ず、その補償がどうなるのか、詳細がわからないまま接種にあたっているのが実情です。医療関係者の責任感に頼るだけではなく、こうした部分の整備も早急に進めていく必要があると感じました。
2021年5月18日放送

