NHK札幌放送局

「釣りのまち」へ 室蘭の新たな挑戦

ほっとニュースweb

2022年7月7日(木)午後2時37分 更新

室蘭と言えば、「鉄のまち」や「工業都市」といったイメージが強いと思います。でも、実はカレイやアイナメ、ソイなどがよく釣れ、釣り人からは「聖地」と呼ばれるほど人気の場所でもあるんです。
そこで、室蘭市などは、釣りを観光振興に生かそうと新しい取り組みを始めました。その名も「手ぶらフィッシング」です。

「ロックフィッシュの聖地」を手ぶらで

私は、道内で毎週発行されている釣り新聞の愛読者です。その記事の中で室蘭が取り上げられる時、枕詞のように使われるのが、「ロックフィッシュの聖地」です。
アイナメやソイなどの岩場に生息しているロックフィッシュ(根魚)が周辺の岸壁や沖合でよく釣れ、しかも大型が多いので、室蘭は釣り人に憧れの場所となっているのです。

その釣りに目を付けたのが、室蘭市観光課の職員で、自身も釣りが趣味の青木保憲さん(33)です。誰でも気軽に釣りを楽しんでもらえる仕組みを作れば、室蘭を訪れる人が増え、まちの活性化につながるのではないかと考えました。
そこで、室蘭市などで作る室蘭観光推進連絡会議は、去年から「手ぶらフィッシング」という新たな取り組みを始めました。

室蘭市観光課 青木保憲さん

「手ぶらフィッシング」は、文字通り、手ぶらで釣りを体験してもらう取り組みです。地元の遊漁船を貸し切り、参加者には室蘭沖で3時間ほど釣りをしてもらいます。釣り道具やエサはすべて市側が準備します。
さらに、釣りから戻ってきたら、港のそばにある温泉に入浴してもらい、その間に釣れた魚を近くの居酒屋で調理してもらいます。そして、参加者が入浴を終えたら、できたての魚料理を味わってもらうという流れです。
料金は参加人数や時間帯によって変わり、1人あたり1万円台から2万円を中心に設定されています。

幅広い層に釣りを

6月、市はこの手ぶらフィッシングのモニターツアーを開催しました。「おじさんの趣味」というイメージを持たれることが多い釣りですが、より参加者の層を広げようと、今回は釣り初心者の女性を対象に募集しました。
SNSでの情報発信などを条件に料金を無料にしたところ、札幌や室蘭に住む20代から30代の9人が集まりました。

モニターツアーの参加者

参加者が乗り込んだ遊漁船は、東日本最大のつり橋、白鳥大橋を背景に出港しました。ポイントには10分ほどで到着しました。予想以上に近場で驚きましたが、その分波も穏やかで釣りがしやすいと感じました。

エサを付けるガイド

船上で市職員の青木さんがさおやリールの使い方を説明した後、参加者はさっそく釣りを始めました。
手ぶらフィッシングでは、市の職員やボランティアのガイドが参加者をサポートします。釣りにはイソメという見た目がミミズに似た生きエサを使います。初心者には抵抗感がある人もいるので、ガイドがこのイソメを釣り針に付けてくれます。
また、海に入れた仕掛けが海底の岩などに引っかかって動かせなくなる「根がかり」にも対応してくれます。

釣り開始から5分ほどでさっそくアタリがあり、参加者のさおが大きくしなりました。掛かっていたのは50センチ近いアイナメで、ガイドが「タモ」と呼ばれる網を使って船に引き上げました。
いきなり釣れた大物に興奮する参加者は、魚を持ち上げて友人に記念撮影をしてもらっていました。その後も、アイナメやカレイ、地元で「ガヤ」と呼ばれるエゾメバルなどが次々と釣れ、船の上は盛り上がりました。
参加者の1人は、「魚が重くて筋肉痛になりそうですが、とても楽しいです」と満足げに話していました。

ツアー参加者の反応は

ただ、釣りだけで終わらないのが、手ぶらフィッシングの特徴です。船が帰港すると、市の職員は参加者を近くの温泉に送り出した後、市内の居酒屋へ急いで向かいました。釣れた魚を調理してもらうためです。
時期によっては刺身にしてもらうこともできますが、この日は日中の気温が25度を超えて夏日になったので、アイナメとカレイは煮つけにしてもらうことにしました。

調理を始めてから1時間ほどたつと、温泉で疲れを癒やした参加者たちが店に集まってきました。テーブルには、釣れたての魚を使った煮つけを含む、特別メニューのランチが並べられていました。
参加者は釣りだけでなく料理も満喫し、ツアーの評価は上々でした。

参加者

「どの程度『手ぶら』なのかなと思っていましたが、ここまでよくしてもらえるのはすばらしいと思いました。釣りはハードルが高いと思っていましたが、気軽に楽しめるものだと知ってハードルが下がりました。また釣りをしてみたいです」

もちろん自然が相手なので、「手ぶらフィッシング」に参加しても魚が釣れないことはあります。ただ、その場合でも、参加者はこの居酒屋で地元の新鮮な魚などを使った料理を味わうことが出来るということです。

「釣りのまち」を目指して

今回は参加者が9人と多く、全員がほぼ初心者だったことから、釣れた魚を針から外して新しいエサを付けたり、根がかりで切れた仕掛けを付け直したりする作業に市の職員やガイドが追われ、対応に手が回らなくなる場面もありました。このため、市は配置するガイドの人数などを改めて検討することにしています。
また、暑さや日焼けの対策の必要性も感じたということです。青木さんは、今回のツアーに手応えを感じつつ、より気軽に楽しめる形を目指していこうとしています。

室蘭市観光課 青木保憲さん

「魚もたくさん釣れましたし、皆さん楽しんでいただけたので成功だと思います。今後は、海や釣りを観光客や初心者にもっと楽しんでもらえるように工夫していきたいです。手ぶらフィッシングを通じて室蘭を『釣りのまち』として知ってもらい、訪れてもらうきっかけになればと考えています」

私は室蘭で暮らし始めてまもなく2年となります。室蘭には、比較的温暖な気候で雪も少なく、コンパクトにまとまった暮らしやすい街という印象を持っています。ただ、「観光地としては」と聞かれると、地球岬や白鳥大橋、工場夜景などが思い浮かびますが、温泉で有名な隣の登別に比べると心もとない気持ちにもなります。
しかし、今回の取り組みには、室蘭では珍しい五感で味わう体験型観光として大きな魅力を感じました。

「釣り」を生かした地域活性化の取り組みは、同じ胆振の苫小牧市でも始まっています。今まで立ち入り禁止にしていた港の防波堤に安全対策を施し、今年4月から釣り場として有料で開放しているのです。
新型コロナウイルスの影響もあり、屋外で楽しめるレジャーの釣りは人気が高まっています。室蘭市が「釣りのまち」という新しい顔を持ち、より多くの人が訪れることを期待しています。

(室蘭局 篁慶一)


放送は7月7日午後6時40分~
ほっとニュース道央いぶりDAYひだかで(NHKプラスで配信もあります)

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