NHK札幌放送局

直木賞にアイヌ主人公の「熱源」 #アイヌ

ウピシカンタ

2020年1月21日(火)午後8時09分 更新

第162回直木賞の選考会が東京で開かれ、実在のアイヌを主人公にした大阪市出身の川越宗一さんの「熱源」が選ばれました。

MEMO 川越宗一さんとは
大阪市出身の41歳。大学を中退後、カタログ通販会社に勤め、仕事のかたわら30代半ばから小説を書き始め、おととし、「天地に燦たり」で松本清張賞を受賞してデビュー。直木賞は今回、初めての候補での受賞となった。

今回、直木賞を受賞した「熱源」は、明治時代から第2次世界大戦にかけての樺太、今のサハリンを舞台に、日本の同化政策によって故郷を追われたアイヌの男性と、囚人として送られてきたポーランド人の民族学者が、戦争に巻き込まれながらも自分が守るべきものを模索しながら力強く生き抜く姿を史実を踏まえて描いた作品です。
みずからのアイデンティティーを脅かされる苦悩や憤りなどが丁寧に描かれ、現代にもつながるマイノリティーの問題とどう向き合うかを読者に問いかけています。

直木賞に選ばれた川越宗一さんは、記者会見で受賞が決まった心境について、「現実感がなく信じられない気持ちで、ドッキリが進行しているようなハラハラした気持ちです」と振り返ったうえで、「小説の時代を生きた人たちに感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです」と話しました。
アイヌを題材とした作品で受賞したことについては、「世間に知られていないことが世に広がるきっかけとなったことは作家として光栄に思う」と話していました。
デビューから2作目で直木賞を受賞したことについて、「自分がどれだけできるか分からないが、自分の力を信じて期待に応えられるような作家活動をしたい」「歴史を通して僕たちが生きる現代を書きたいと思っています。僕たちが今どういうふうに生きていて、これからどう生きるのかを書きたい」と今後の抱負を話しました。

選評「まれにみるスケール」
直木賞の選考委員の1人、浅田次郎さんは賞の選考過程について、「混戦が予想されたが、1回目の投票で川越さんが一歩抜きん出る形となり、4つの作品による2回目の投票で相当な点数を獲得した」と説明しました。
また、川越さんの作品を選んだ理由について「近年まれに見る大きなスケールで小説世界を築き上げ、登場する人物も生き生きと魅力的に描かれている。難しい資料を駆使して、大きな小説を書いた」と説明しました。
さらに、アイヌ民族を取り上げたことに触れ、「少数民族としての苦悩や絶望がどこまで書かれているか、という問題だが、さほど小説を脅かしていないと判断した。苦悩や絶望の描き方が、いいあんばいだったと思う」と評価していました。

アイヌ協会「明るい話題」
アイヌ民族を取り上げた小説「熱源」が直木賞を受賞したことについて、北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は、「まだ本は読んでいないが共生社会の未来に向けた明るい話題だと思う。小説を通して多くの人にアイヌに関心を持ってもらい、さまざまな民族がいるということを考えるきっかけにしてくれれば」と話していました。

研究者は期待とともに指摘も
「熱源」に登場する人物は多くが実在し、これらの人たちを長年、研究してきた北海道大学の井上紘一名誉教授は「受賞おめでとうと申し上げたい。弱者や故郷を失った人たちを描くその姿勢を評価したいし、今後の活動にも期待したい」と述べました。
ただ、作品には現実にはない登場人物同士の会話などフィクションで描かれた場面が複数あるとし「作品をいかに面白くするかという努力を否定しないが、フィクションを入れるならば、何らかの形で創作であることを示してほしい」と述べて、一般の読者が誤った歴史の解釈をしないためにも説明を尽くすべきではないかと指摘しました。

2020年1月15日

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