NHK札幌放送局

敏感すぎる心 HSPとは

ほっとニュースぐるっと道東!

2022年10月24日(月)午後3時28分 更新

 「怒っている人やもめ事を見ると、まるで自分に起きたかのように感じてしまう」
「悲しいニュースや泣いている人を見ると、一緒になって落ち込んでしまう」
 「大きな音や人混みが苦手で、きついにおいに接すると気分が悪くなる」
 みなさんは、当てはまりますか? こうした敏感な気質は「HSP」と呼ばれ、近年、若い世代を中心に注目を集めています。実は5人に1人の割合でいるとされるHSP。当事者や周囲はどう向き合っていけばいいのでしょうか。

(帯広放送局記者 米澤直樹)


HSPって何?

HSPは(Highly Sensitive Person)の略。非常に感受性が高く、周囲の刺激に敏感すぎたり、人の影響を受けやすかったりする人のことをいいます。こうした気質は、およそ5人に1人が持っていると言われています。
いま、自分の敏感さからくる“生きづらさ”に悩んでいる人に向けた本が、多く出版されています。帯広市内の書店には、HSP関連の本が所狭しと並んでいました。

書店の店長
「書棚に並びきれないほど沢山の本が出版されています」


敏感さは子どもの時から

十勝の芽室町の八嶋利永子さん(39)は、4年前、帯広市内のクリニックで自身がHSPだと初めて知りました。八嶋さんは小学生の頃から自分の敏感さを意識していたといいます。特に気になったのは、人の機嫌や場の雰囲気だったといいます。

八嶋さん
「先生の機嫌が分かるとか、クラスの中で孤立している人が分かるとか、そういったところで気付き始めました。人の機嫌とか、友達がしゃべっている時に、自分のことをどう思っているかを感じてしまうとか。自分が人にどう思われているかが気になって、行動も制限されていくようになりました」


敏感さは五感にも

敏感さは感情面だけではなく、光やにおいなどの五感にも表れるといいます。

八嶋さん
「例えば“季節のにおいが今日から秋に変わったな”とか、においなどもかなり敏感です」


敏感さは“生きづらさ”に

八嶋さんは当時、周囲から「気にしすぎだ」とか、「強くなりなさい」と言われてきました。変えようと思っても自分の気質を変えることができず、次第に“生きづらさ”を抱えるようになったといいます。

八嶋さん
「ずっと生きづらいなと思っていて、本当に毎日楽しくなくて、苦しかったです。気になることばかりで、それを気にしないように気持ちに蓋をして強く見せて、ありのままでいれない毎日でした」


強く見せようとして、不登校に

気づいていることに気づかないふりをして、強いふりをしていた高校時代。内面の繊細さと逆行するように、見た目は派手になり、不登校を経験しました。

高校生時代


子どもの敏感さは“HSC”

「HSP」の敏感さは生まれ持った気質のため、成長の過程で変わることはありません。
そのなかで、子ども時代に見られる繊細さは"HSC"(ハイリー・センシティブ・チャイルド)と呼ばれ、HSPとはあえて分けて考えられます。
それは、子どもが学校や家庭など、みずから置かれた環境を変えることが難しく、大人よりも、より周囲のサポートを必要とするからです。
八嶋さんを4年前に診療した「十勝むつみのクリニック」の長沼睦雄医師は、HSCの子どもは八嶋さんの高校時代のように、繊細さと言動が一致しないケースもあるといいます。

長沼睦雄 医師
「敏感な子たちは非常に感じやすいわけですから、自分の感じたものをうまく出せないで苦しむことが多いです。敏感だから必ずしも大人しいということではないんです」


受診は息子の育児がきっかけ

4年前に八嶋さんが診療を受けたのは、発達障害(自閉スペクトラム症)のある息子の育児がきっかけでした。聴覚や味覚、そして環境の変化に敏感な息子を見ていて、似ているところがあると感じたといいます。そして、自身の“生きづらさ”がHSC/HSPの敏感さからきていることを知り、安心したといいます。

八嶋さん
「“強くなりなさい”とか“変わりなさい”って、ずっと大人から言われ続けてきましたが、“あ、変えなくていいんだ”という安心感と、ホッとする気持ちがすごく強かったです。今まで無理して強くみせたりして対策を取ってきましたが、自分はこのままでよくて、どうすれば自分が楽に、疲れにくくなるかを意識して対策を取るようになり、すごく生きやすくなりました。“自分は気にしすぎるタイプだからよろしくね”とか、自分のことを説明するのにもかなり役立ったと思います。HSPと発達障害の敏感さはイコールではありませんが、自分の対処方法を息子に伝えることもできるし、気持ちを分かってあげられるようになったのも、よかったと思います」


経験いかし学校支援員に

診療を受けて、自身の”生きづらさ”がHSC/HSPからきていたことを知った八嶋さん。学校に理解者が欲しかったという思いから、学校支援員の仕事に就きました。発達障害のある息子の子育て経験や、自身の子ども時代の経験を踏まえて、講演活動も行っています。


気質を変えようとしないことが重要

八嶋さんがHSCの子どもたちと接する時に重要だと考えているのは「気質や特性を変えようとしない」ことです。

八嶋さん
「自分が子供の時は大人から“気質を変えなさい”と言われてきましたが、できないし、とても苦しかった。なので、気質はそのままで、気質に応じた対策や対応を周囲の大人たちが一緒に考えていかないといけないと思います」


HSCの親 支え合いの場も

さらに、八嶋さんはHSCの子どもを持つ親が、悩みなどを共有できる場を新たに設けました。子どもの理解者を増やすには、親のサポートも重要だと考えています。

八嶋さん
「仲間がいないと子どもを支えることも困難だし、乗り越えられないと思います。保護者も周囲に理解者がいなくて、とても孤立していたりするので、気持ちを分かち合える場所にしたいなと思っています」

八嶋さんは、敏感さや繊細さは「人が気付かないことに気付くことができる」という能力にもなると考えています。
次回の記事「“敏感すぎる自分”どうしたらいいの?」では、八嶋さんを診療した長沼睦雄医師の解説を、インタビュー形式でお伝えします。


▶NHK帯広放送局ホームページ
▶NHK釧路放送局ホームページ


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