NHK札幌放送局

北海道クローズアップ「アイヌの美 わたしの表現 ~阿寒 工芸作家の挑戦~」

北海道クローズアップ

2019年10月21日(月)午後5時46分 更新

【総合】北海道ブロック 2019/10/25(金) 午後7:30~7:55

■担当ディレクターS 取材後記

 阿寒や旭川に暮らす若手のアイヌ工芸作家たちが、現代のライフスタイルに取り入れられる日用品づくりに挑みました。販売を行うのは、全国で人気のセレクトショップBEAMSです。番組では、作家さんが新商品づくりにかける思いや、デザインを試行錯誤する姿を追いました。

 阿寒を初めて取材で訪ねたのは、昨年の晩秋。ブレスレット、かごバック、シルバージュエリー、巾着袋にバターナイフ・・・伝統的な文様や手仕事の技を活かしながらも、普段使いできる商品で方向性が固まり、試作が始められていた頃です。今年8月末に納品するまでおよそ9か月、折にふれ、作家さんたちの制作の様子を取材させていただきました。その中で、“時の流れ”を意識することが多くあったように感じます。

 アイヌの手仕事には、圧倒的な手間暇を要するものがあります。特に、織りものや編みものは、植物から繊維をとり、乾かし、糸を一本一本手紡ぎするところから始まります。しかも、家族や身の回りの人などのために、好きなときに好きなだけ時間をかけて作る・・・「コスパ」「効率」「時短」などという概念からは真逆にある世界。だからこそ織りなされる美しさがあります。

 そんな糸づくりに取り組んだ郷右近富貴子さんは、今とは違う時の流れを「豊か」という言葉で表現されていました。「(植物の繊維から糸を紡ぐ作業は)今では面倒くさいことのように思えるけれど、昔の人にとっては当たり前で、手間とも思っていなかった。淡々と心静かに瞑想状態で手を動かす。豊かだなと思います。」毎日の家事や仕事に追われる中、糸づくりに集中する時間を捻出しようと苦心していた富貴子さんは、よく話してくださいました。

 さらに、番組の中では紹介しきれませんでしたが、富貴子さんが編むブレスレットの縦糸に使うオヒョウの木は、昨年亡くなったお祖母様が、40年ほど前、庭に苗を植えておいたものです。「子や孫の代にも材料に困らないように」という願いが込められ、お金には換えられない価値が宿っています。

 そんな、もともと商業向きでないものを商売にしようという、ある意味無謀ともいえる挑戦でした。それでも、そこに敢えて挑むのには、「自分が好きでかっこいいと思うものを見てもらいたい」「自らが愛してやまないアイヌ文化を知ってもらいたい」というシンプルで純粋な思いがありました。

 10月半ば、新宿のBEAMSでアイヌ工芸の販売会が行われました。作家さんたちが試行錯誤して生み出した品々は、果たして、お客さんたちの心をつかんだのでしょうか。ぜひ、番組をご覧ください。

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