NHK札幌放送局

クルーズ船 再開しても大丈夫??

道南web

2021年4月8日(木)午前9時27分 更新

去年2月、船内で感染が拡大し、世界中に衝撃を与えたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。あれから1年あまり経ち、運航再開に向けた動きが本格化しています。クルーズ船の誘致をこれまで積極的に進めてきた函館市。期待と不安の中、感染対策はどうなっているのか取材しました。

延べ47隻が一転ゼロに

これまで道内で最も多くクルーズ船が寄港していた函館市。おととしは延べ47隻、9万人が訪れました。

しかし去年2月、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内で感染が拡大。新型コロナウイルスの脅威を、私たちに強く印象づけました。

影響は大きく、去年は函館に寄港する予定だった延べ50隻がすべて運航中止になりました。道内全体で見ても1隻も寄港しなかったのです。

ことしの運航の見通しはどうなっているのかと気になりました。例年であれば函館港には4月中旬ごろに、クルーズ船が寄港しはじめます。そこでまずは、各船会社のホームページを見てみました。

ホームページには、函館港に寄港する予定のクルーズツアーについて予約販売が行われているのがわかります。その横には新型コロナウイルスの感染拡大防止について、さまざまなことが書かれていました。ことし函館港には延べ8隻が寄港する予定で、このうち6回が、国内の港をめぐる郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」となっています。

とはいっても、ダイヤモンド・プリンセスの記憶が強烈なだけに、また同じことが起こらないか心配です。そこで、船内の感染対策がどうなっているのか、郵船クルーズの感染症対策責任者に詳しい話を聞きました。

「クルーズ船」コロナ禍の感染対策は

話を聞かせてくれたのは郵船クルーズの久治米一聡さんです。
久治米さんは、「船内に持ち込ませない」「船内で広げない」という大きな2つの枠組みについて教えてくれました。

まず、「船内に持ち込ませない」対策について、「飛鳥Ⅱ」では、乗客や乗員は、乗船前にPCR検査を義務付けられていて、陰性が確認されないと乗ることができないと定めています。

クルーズ船のツアーを申し込むと、検査キットが送られ、自分の唾液を採取し送り返すと、船会社側で検査を行うということです。「陰性」であれば検査結果の紙とともに「乗船証」が届き、船に乗ることができます。

さらに船の中で勤務にあたる乗員は、乗船の2週間前から、自宅などで自主隔離したうえで勤務に当たることにしているということです。

まずは、船にウイルスを「持ち込まない」ということに注意を払っています。

しかし、それでも100%ウイルスの侵入を防げるわけではありません。ひとたび船内で感染者が出ると、一気に広がってしまうのではないかと考えてしまいます。

実際、去年のダイヤモンド・プリンセスでは、レストランや娯楽施設など船内の共用部分で感染が広がったという指摘が出ています。

この指摘について担当者に疑問をぶつけると、2つめの対策「船内で広げない」対策について教えてくれました。

まず船内では、私たちが街なかで目にする飛まつ防止のパーティションや、密にならないように一定の間隔を空けた座席など、一般的な感染対策は当然とられています。その上で、取り組んでいるのが、人の動きを徹底して把握することだといいます。

例えば、レストランなどの入り口で体温を測る機械は、乗客が乗船時に渡されるIDカードをかざすことで、誰が、いつ、どこの施設を利用したかをデータとして記録しています。

新型コロナウイルスに感染しているか、すぐに判断できるよう、船内にはPCR検査を行える機器を設置しました。検査を行うスタッフも新たに雇用したということです。

先ほどの機械で、発熱などの症状が確認された場合は、すぐに検査を行います。そして、陽性と確認された場合は、その乗客が動いたデータを確認し、接触した可能性がある他の客や乗員を割り出し、直ちに隔離するなどの対応を取ることができるということです。

その後、感染者の動きをもとに、船内の消毒を行い、感染リスクの高いエリアと、比較的安全なエリアを分ける「ゾーニング」を行うことにしています。

郵船クルーズ 感染症対策責任者 久治米一聡さん
「オペレーションも施設も3密を徹底的に排除して、濃厚接触者を出さないという態勢づくりを船内ではしております。港の皆様、地域の皆様にご迷惑をかけない、要は感染症を持ち込まないということを最大限努力しながら、寄港を1つずつ積み重ねたいと考えております」

寄港地「函館」 運航再開はどう考える

船会社側は感染防止を徹底して、運航再開を目指しています。実際、寄港地となる函館市はどう考えているのでしょうか。

私はまず「若松埠頭」を訪ねました。観光名所の「函館朝市」の近くに新たに建設された、クルーズ船専用の岸壁です。

市の担当者に特別に許可をもらい、ゲートの鍵を開けて中に入ると、きれいな360メートルの岸壁が整備されていますが、去年1年間、この岸壁に船は停泊していません。カモメが悠々と羽を休めていました。

若松埠頭は、クルーズ船で降りる乗客の利便性や市内の回遊性を上げようと整備されたものです。いまではおよそ9万トンクラスの船まで着岸できるようになっています。

今度は、クルーズ船の乗客がいなくなってしまった影響について話を聞こうと、若松埠頭のすぐそばの函館朝市を訪ねました。

店主たちに話を聞くと「比較的富裕層のお客さんが多いので、家へのお土産や船内で食べるものなどを大量に買っていく人が多い」という話が聞こえてきました。カニなどの高級な海産物もよく売れていたと言います。

函館朝市協同組合連合会 藤田公人 理事長
「被害の大きさは甚大ですね。クルーズ船で来るお客さんって、年に何回か利用するお客さんで、だから朝市の中にもお得意さんになって頂いている方、お店もあります」

藤田理事長は、運航再開への期待を口にしていました。

しかし、運航再開について不安視されているのが、「寄港地の負担」です。

ダイヤモンド・プリンセスでは、停泊した横浜港で、地元横浜市や神奈川県などが、救急搬送や治療などの調整に追われ、費用面でも大きな負担となりました。

クルーズ船の中で感染が拡大すれば、寄港地に大きな負担となる可能性があります。

クルーズ船受け入れに「条件」

3月、函館市はクルーズ船受け入れの対応を話し合う協議会を設置しました。
参加者の中には、市の港湾の担当部局のほか、保健所や医師会など、医療関係者の姿もありました。

この協議会では、クルーズ船が寄港した際の対応や、受け入れ条件について話し合われました。函館市医師会の本間哲会長が「具体的に入港させないケースがあれば知らせてほしい」と質問したのに対し、市の担当者は「市内の医療体制にひっ迫があるという場合には、入港をお断りするということがありえるだろう」と回答するなど、検討を重ねました。

そして協議会では、クルーズ船寄港の受け入れ条件が示されました。

主な内容には

▼函館市内や周辺地域の感染状況によっては入港を拒否する可能性がある。
▼停泊中に感染者が発生した場合は港湾管理者や保健所の指示に従う。
▼医療活動や消毒作業など、費用の負担は船会社側が行う。

といったことが盛り込まれています。

函館市医師会 本間哲 会長
「普通の生活をしている場で感染者が出るのと全然条件が違うわけですよね。もし出たときにどうするかっていう体制もしっかり整えていく必要がある」。
函館市 細越清朗 港湾空港振興課長
「まずは安心安全なクルーズでの再開ということで準備を整えていきます。各船会社とも連携して、連絡を密にして、寄港を迎えていきたいと思っています」。

北海道内には5月2日に「飛鳥Ⅱ」が寄港する予定です。運航されれば、道内にはおよそ1年半ぶりにクルーズ船が寄港することになります。

ただ、さまざまな対策をとってようやく運航再開に向けて動き出してはいますが、これはあくまで、国内を発着するクルーズ船の話しです。

多くの旅行客を呼び込んできた海外からの船については、国が寄港を制限していて、再開のめどは立っていません。まずは国内の船で対応を検証しながら、海外の客船が本格的に再開した場合に備えていくことが必要だと思います。

(2021年4月5日放送)

<取材した記者>
川口朋晃
小樽市出身。2013年入局、札幌局小樽支局を経て2018年より函館局勤務。担当は市政、経済、観光など。

道南地域のニュースが満載!
#道南WEB取材班 に戻る

NHK函館放送局トップに戻る

関連情報

サポートカー、本当に安全? #道南WEB取材班

道南web

2020年9月25日(金)午後6時29分 更新

【お知らせ】八雲・中小企業などへの支援 #道南特設

道南web

2020年4月28日(火)午後7時13分 更新

#2 ゲスト第2弾発表! 【函館つながるラジオ】

道南web

2020年6月4日(木)午後6時10分 更新

上に戻る