NHK札幌放送局

公用車にLED コロナ交付金で買いました

ほっとニュースweb

2021年2月17日(水)午後2時53分 更新

国が全国の自治体に配っている「新型コロナ対策の交付金」。しかし、新型コロナ対策に役立っているのか分からない使い方もあると聞き、取材を始めました。
(取材:渡邉健)

これって新型コロナ対策? さっそく現地へ

新型コロナ対策の交付金は、内閣府のホームページに自治体ごとの活用事例の一覧が掲載されています。さっそく道内の自治体の使い道をチェックすると…。

「公用車の購入」「ごみ袋の配布」などなど。一見、新型コロナ対策とどう関係があるのかよく分からない事例が掲載されています。
中でも目を引いたのは「防犯灯のLED化」です。詳しい説明を読むと、「コロナで時差通勤が増えるため」とあります。これを読むだけではよく分からず、現地を訪れてみることにしました。

ケース①防犯灯をLEDに変えた村

「防犯灯のLED化」を事業計画に掲載していたのは、後志の島牧村です。村に着くと、さっそく見つけました。役場近くの大通りをこうこうと照らす、LEDの防犯灯です。

村ではこうした防犯灯を蛍光灯からLEDに変える事業に新型コロナの交付金を充てました。その額およそ760万円。なぜこれがコロナ対策になるのでしょうか。村の担当者に聞きました。

島牧村の担当者
「通勤時間帯の混雑を避けるため時差出勤を推奨する中で、暗い時間帯の通行が増えることが考えられます。そこで、市街地の防犯灯をLEDに交換し明るさを増やして、住民に安全に通行してもらうのがねらいです」

なるほど、コロナ対策とのつながりは時差通勤による密の防止とのことでした。しかし、私が訪れた午後5時ごろには通勤時間帯にもかかわらず、人通りはまばらでした。雪かきをしていた村民の方に意見を聞いてみました。

「新型コロナウイルスとは関係がないと思います。電球を取り替えてもコロナが治るわけではないし、交付金はワクチンの接種などに使うべきものなのではないでしょうか」

ケース②6台の公用車を買った町

一方、島牧村の隣の黒松内町。事業計画には「公用車の購入」とあります。どんな車をなぜ買ったのか気になり、町に問い合わせてみると、実物を見せてくれると言います。
町の担当者の案内で訪れた駐車場に停められたシルバーのワンボックス車。高齢者や介護が必要な人を町外の病院などに送迎する車両だそうです。

次に見せてもらったのは図書館の本を届ける車。コロナ禍で外出を控えている人にも本の貸し出しができるようにと、新たに購入したと言います。

このほか、町内のイベントなどでの使用を想定したマイクロバスや学校給食の配送用の車両など、合わせて3000万円余りの交付金を使ったということです。
こうした公用車の購入はコロナとどんな関係があるのでしょうか。町の担当者に話を聞きました。

黒松内町企画環境課 松原淳課長
「例えば、同時に複数人が乗って密になることを防ぐため、もともとあった車の台数を増やすなどの目的で購入しています。黒松内町は公共交通機関が少ないので、さまざまな送迎用の車を用意しているため、公用車の数が多くなっているのは確かです。しかし、様々な感染拡大防止対策や経済対策も行っている中で優先順位をつけて実施している事業であり、町議会での慎重な審議も経て計画を実施しているので、特に問題はないと考えています」

こうした使い道について、町民にも意見を聞きました。

町民の声
「必要だから買ったのかもしれませんが、新型コロナ対策と関わりのない車もあるような気がします」
「新型コロナに関係していれば別に問題はないのでしょうが、コロナ禍が終わったら購入した車を返すのか、という話にもならないでしょうし、なんとも言えませんね」

道内のほかの自治体は?

交付金の使い道はほかにもたくさんあります。

道南の長万部町でも、過疎地域に住む高齢者向けの巡回バスの買い換えを予定しているということです。町の担当者は「従来の車両では十分な換気ができないため空調システムの整った車両を購入することにした」と説明しています。
十勝の豊頃町では老朽化したロードヒーティングの改修工事に1000万円ほどを充てる予定です。後志の古平町や十勝の大樹町、胆振の壮瞥町ではハンターの出動機会を減らし密を防ぐ目的で、農業の獣害対策に交付金を活用しています。具体的には電気柵の購入の補助や、わなに動物がかかった際に自動的にハンターに通知されるシステムの導入などを実施しているということです。

そもそもコロナ交付金とは

道内だけでも実に幅広い分野に使われていることが分かりましたが、そもそもこの「新型コロナ対策の交付金」とはどういう仕組みなのでしょうか。
この交付金は新型コロナ対策に取り組む自治体を支援するために国が用意したもので、正式名称を「新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金」と言います。今年度の3度の補正予算で合わせて4兆5000億円が計上されていて、自治体の人口や感染者数などに応じて配分額が決まる仕組みです。道と道内の市町村に対する配分の合計は2191億9000万円余りになっています。

自治体は交付金を使って実施したい事業計画を事前に国に提出し、承認されたものに交付金が支払われます。道内では多くの自治体が休業要請に応じた飲食店への協力金や、消費喚起のためのプレミアム付き商品券の発行などに充てています。

国の審議会でも議論が

実はこうした交付金の使い道については、国の審議会でもさまざまな意見が出されているのです。

去年11月に行われた、国の財政問題などを話し合う財政制度等審議会。そこで紹介されたのは公用車の購入やランドセルの配布など、全国の「ユニークな事例」です。
こうした使い方について、出席した委員からは「新型コロナへの単なる便乗にしか見えない」「『使わなければ損』という考え方だと、財政膨張につながる」といった意見も出されました。

使い道を見直す動きも

使い道にさまざまな議論が起きる中、一度国に提出した事業計画をあとから修正した自治体もあります。道南の江差町では当初、町内の観光名所「かもめ島」にある老朽化した建物の撤去費用に交付金を充てることにしていました。
どんな建物なのかと現地を訪れると、外壁が崩れかけた廃虚のような建物がありました。

町が提出した計画では交付金を充てる理由について、「厳しい経済状況にある建設業を支援するため」と説明されていました。詳しく話を聞こうと町に問い合わせたところ、「交付金の対象事業から外すことを決めた」との回答が。「新型コロナ対策としては優先順位が高くない」と判断したというのです。

同じようなことが上川の東神楽町でも起きていました。東神楽町ではことし小学1年生になる児童にランドセルを配りました。町は当初この事業に交付金を充てることにしていましたが、「よりふさわしい事業がある」として財源を見直したということです。

専門家「自由度高いがチェックは必要」

計画の見直しなど混乱もみられる「新型コロナ交付金」。ご紹介したような使い道で本当に良いのでしょうか。専門家に聞きました。

北海道大学公共政策大学院 宮脇淳教授
「自治体の財政上負担できずに先送りしてきたものについて、この際、交付金を使って処理してしまおうというものが多いのではないでしょうか。使い道をしっかり住民に説明し、地方議会等のチェックも受ける必要があります」
立命館大学政策科学部 平岡和久教授
「地域経済や生活を維持するためのものであれば幅広い使い道が認められていて、自由度の高い交付金です。おかしな使い道に見えても、実は地域の実情に合っているものもあります。ただ、事業の優先順位には検討の余地があり、住民の理解を得られるかが重要です」

専門家の話を聞くと、一見コロナと関係がないように見えても、必ずしも悪いものだとは言えないということは分かりました。とはいえ、大切な税金が使われている事業です。使い道が適切なのかどうか、私たちも関心を持つことが必要だと感じました。
全国の自治体がどんな事業に交付金を使おうとしているかは、内閣府のホームページなどで見ることができます。みなさんもお住まいの自治体の事業計画を確認してみてはいかがでしょうか。

(函館放送局・渡邉健 2021年2月10日放送)

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