NHK札幌放送局

“読む”ラジオ #ナナメの場 ~ずーちゃんの一冊&ゆりなの一曲~

ナナメの場

2022年2月24日(木)午後1時07分 更新

家族や友達とはちょっと違うナナメの関係の人たちとゆるーくつながり、 もうひとつの居場所を作ろうという「ラジオ #ナナメの場」。
「ずーちゃんの一冊」と「ゆりなの一曲」のコーナーでは、MCの二人がそれぞれ、今回のテーマにぴったりの本と音楽を紹介しました。
放送日:2022年2月20日
(#ナナメの場 ホームページはこちら)

【ラジオ #ナナメの場 MC】
⽔野莉穂(ずーちゃん)
紅茶の喫茶店アグラクロック オーナー。2017年北海学園大学を卒業して半年後、生まれ育った恵庭市で喫茶店をオープン。“自分が好きなじぶんで居られるところ”を大切にした場づくりを通して、輪づくりをしている。今後は、田舎暮らしを通して、季節と暮らしながら遊ぶ場づくりを計画中。

まえだゆりな
北海道函館発のうたうたい。 つまづきながらもまっすぐに生きるうたをうたう。日本や海外の子どもたちとの曲作りワークショップ、演劇やダンスチームとのコラボなど、表現をすることの可能性に挑戦。2018年車で日本一周”my way tour”、2019,2020年度NHKほっとニュース北海道ED曲、現在FMいるか 「サウンドセレクト」番組DJ担当。

【進行】
神門光太朗アナウンサー
(NHK帯広放送局)


ずーちゃんの一冊:宇佐美まこと『展望塔のラプンツェル』

神門アナ:続いて「ずーちゃんの一冊」のコーナーです。
本が大好きなずーちゃんにオススメの一冊を紹介してもらいます。
今回選んだのはどんな本でしょうか?

ずーちゃん:宇佐美まことさんの『展望塔のラプンツェル』という小説です。

神門アナ:私のほうから、簡単にあらすじをご紹介しますね。
物語の舞台は、労働者相手の娯楽の街として栄え、貧困や暴力、そして家庭崩壊が日常的に起こっている街。登場するのは、虐待されている幼い男の子と、その子どもを取り巻くいろいろな人たちです。
問題のある家庭を訪問する児童相談所の職員、自身も傷を抱えながら男の子の面倒を見ることにした17歳の少女、不妊治療に苦しみながら向かいの家で虐待される男の子を見張る主婦。
他人同士の人生が、街のランドマークである展望塔の下で交わっていくという物語です。
2019年に書かれた作品ですが、どうしてこの作品を選んだんでしょう?

ずーちゃん:今回、ゲストがCPAOの徳丸さんと決まったときに真っ先に思い浮かんだ本だったんですけど。
この本の中で紹介したいことがいくつかあるので、何個か紹介しますね。

※NPO法人CPAO 徳丸ゆき子さんとのトークはこちら


正しいことがその子にとってのベストとは限らない

ずーちゃん:ひとつめは、「正しいことがその子にとってのベストとは限らない」というところがあるんですけど。

本の中では、虐待を受けている子やごはんを食べさせてもらえない子たちを、親からすぐに引き離そうというときに、児童相談所の方が「それが正しいことだとしても、その子のベストとは限らないよ」と登場してくるんですけど。

それって日常生活でもあるんじゃないかなと思って。誰か相手が目の前にいたときに、自分の価値観で「その子、きっとこうしたほうが正しいから」って言ってしまうことってあるんじゃないかなと思って。
でもたしかにそれは正しいんだけど、その子にとってベストかどうかは、もしかしたら違うかもしれないということってあるかもしれなくて。

そういう時に一歩立ち止まって、きっとこれは正しいかもしれないけど、その子にとってはそうじゃないかもしれないって想像してあげる余裕を持つことって大事なんじゃないかなと気づかされたことがひとつ。


笑って過ごせる空間とお腹を満たす食事

ずーちゃん:ふたつめは、徳丸さんの話と通じていたんですけど、「大切なのは笑って過ごせる空間とお腹を満たす食事」というところがあって。
お話とめちゃくちゃリンクしてるなって思ったんですけど。

親子だったり友達だったり恋人だったり、いろんな関係性がある中で、「助けてあげよう」というかたい気持ちよりも、「まずごはんを食べよう」っていう、一緒にごはんを囲むっていうことと、その状況を笑っていられる空間を一緒に過ごすことで、関係ってちゃんといいように築いていけるんじゃないかなって、この本を読んで思ったし、徳丸さんの話を聞いてさらに納得というか、実際にそれをやられている方がいるんだなと思って。
ぜひあのお話を聞いたあとで読んでほしいなと思ったところでした。


人生を楽しむことは許されている

ずーちゃん:みっつめ、最後は、「人生を楽しむことが許される」という箇所があったんですけど。

例えばママさんたちだったら、目の前の育児と家事を全部やっていないのに、私の好きなことなんてしちゃいけないやっていう気持ちがどこかで芽生えることがあるんじゃないかなと思って。

でも人生を楽しむことはみんなに与えられている権利だから、たまには洗濯物終わってないけどドラマ見ようとか、そういうのもオッケーじゃない、というのが本から伝わってきたような感じがして、胸がじんと熱くなったところで。

CPAOの徳丸さんのお話と、「ぷれいおん・とかち」さんのお話と合わせて、読んでもらいたい一冊だなと思って今回選びました。

※「ぷれいおん・とかち」のみなさんとのトークはこちら


苦しい中に光がある物語

ゆりなさん:実際に読ませていただいたんですけど、本当に今回にぴったりだなと思いました。
テーマは重たくて、読んでいて苦しくなる場面もあるんですけど、その中にも光がね。

ずーちゃん:そうだね。内容はすごく重たいんですけど。

神門アナ:かなり重たい。私、『展望塔のラプンツェル』っていうタイトルを聞いたときに、今回夢中というテーマだし、若い子、子どもたちとかが楽しい夢に向かって夢中になっている物語なんだろうなと思って開いた瞬間に、「あれ?おかしいぞ?」と。ルポルタージュを読んでいるような。
本当にこの子たちに救いはあるのか、という思いで読み進めると、「え!?今まで読んできたこの展開は!?」って。

ずーちゃん:そうですね、最後に気づかされるものがあって、小説としても面白さがあるので、こういう小説というフィクションをきっかけに入ってもらえたらな、と思うテーマではあるかなと思っていて。
ぜひ読んでもらえたらなと思ったので、今回二人にも読んでもらえてうれしいです。

ゆりなさん:いつもずーちゃんが紹介してくれる本は全部面白くて、魂を揺さぶられる。自分に新しい価値観を見せてもらえる本がいっぱいなので、ぜひこの『展望塔のラプンツェル』も、今聴いているあなたにも読んでほしいです。

ずーちゃん:途中で心が折れずに、最後まで読んでほしいと思いますね。

神門アナ:また繰り返し読みたくなる作品ですね。いろんな仕掛けが入ってね。
今日の「ずーちゃんの一冊」では、宇佐美まことさんの『展望塔のラプンツェル』をご紹介しました。


ゆりなの一曲:国吉亜耶子and西川真吾Duo「セレモニー」

神門アナ:続いてはゆりなの一曲のコーナーです。ゆりなさんにテーマに沿ったオススメの一曲を紹介していただこうというコーナーですが、今回は先ほどの「ずーちゃんの一冊」のコーナーで紹介された『展望塔のラプンツェル』を読んでから選んだということなんですね。

ゆりなさん:そうなんです。今回何を紹介しようかなと考えたんですけれど、本を読んですごく感動したので、その本、そして今回のテーマに合う曲を考えました。

紹介する曲は、国吉亜耶子and西川真吾Duoの「セレモニー」という曲です。国吉亜耶子and西川真吾Duoさんはピアノのうたうたいの方とドラムの方の2人構成のバンドなんですけれども、すごく私の好きなアーティストなんです。

今回、本にはかなり暴力だったりネグレクトだったり、本当に読むだけでも苦しくなるくらい絶望が描かれているんですけれど、そんな中でも光に向かって生きていよう、大人になったときはこんな生活は嫌だから、もっと良い人生を送ろうとすごく奮闘している子どもたちだったり、児童相談所の支援員の人たちが深刻な状況の中でもどうにかこの子たちを救ってあげたいという思い、希望を持って動いているのが、すごく感銘を受けまして。
今回のセレモニーという楽曲は、生まれてきたことに対してありがとうというメッセージが込められた楽曲だなと思っているんですね。


生きていることを祝福できる歌

ゆりなさん:今回ぴったりだなと思ったのは、今回ハレというちっちゃい男の子が物語で出てくるんですけれども、その子は虐待を受けていて、自分で言葉を話せない男の子なんですね。でもふらふらと暴力を受けて、ふらふらと街を徘徊して、出会ったお兄さんお姉さんと時間を過ごす中で、自分の信じれるものみたいなものを見つけていく姿にすごく感動して。

この曲の中に「僕が生まれてきて話せるようになったのは君に伝えるためだったんじゃないか」という歌詞があるんですけれども、その言葉を話せなかったハレが最後ひとこと話すんですね。それがすごく私は、これとリンクするなと思って、その時に私はボロボロ泣いてしまったんですけれども。

その想いだったり、どんなに辛い時でも、深刻な状況にいるだけじゃなくて普段私たちが過ごしている中でも、生きていてしんどいなとちょっとしたことで思うことはあると思うんですけど、生きていることに感謝できる。すべての人の命に、「セレモニー」という題名なので「祝福」できるような楽曲。
本当に大好きな曲なので、今回は紹介したいなと思いました。

この小説がもし映画化するなら、この曲がエンドロールに流れてほしいなと思いました。
それではお聞きいただきましょう。国吉亜耶子and西川真吾Duoで、「セレモニー」。

♪セレモニー/国吉亜耶子and西川真吾Duo


物語の小さな光を救い出してくれる曲

神門アナ:まえだゆりなさんに選んでいただきました、国吉亜耶子and西川真吾Duoの「セレモニー」をお聴きいただいています。『展望塔のラプンツェル』の物語とリンクしますね。

ずーちゃん:そうですね。私も読んだのは結構前だったんですけど、今回紹介するにあたってほんとに今朝まで読んでいたので。
この物語の中に出てくるのって、海沿いのほんとに小さな町に暮らすいろんな登場人物なんですけど、みんなやっぱりどこか完璧じゃなくて、でも誰かに注いでもらった小さな小さな愛情だったりとか、誰かに信じてもらえた経験とかが、その人を強くして、また誰かに注ぐことができるようになるっていう。
重たい物語の中にそういうのが散りばめられていて、そのちりばめられた小さなキラキラを救い出してくれるような、そんな曲だなと聞いていて感じました。

ゆりなさん:本当に素敵な曲です。

神門アナ:そう思っていれば、いつかどこかで何らかの形で報われるんだよという、そういうことも感じられる作品、そしてこの曲でした。以上、「ゆりなの一曲」のコーナーでした。


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