NHK札幌放送局

見えてきた正体 ヒグマ「OSO18」捕獲へ“年内最後のチャンス”は

ほっとニュースぐるっと道東!

2022年11月16日(水)午後5時44分 更新

全国有数の酪農地帯、道東を震撼させているヒグマ「OSO18」(オソ)。 標茶町と厚岸町で放牧中の牛を3年間で65頭も襲い「問題個体」とされています。人前に姿を現さず“忍者”とも呼ばれるOSO18。道や自治体、専門家などはことしも捕獲作戦を進めてきましたが、捕獲には至っていません。 11月に開かれた「OSO18捕獲対応推進本部」では、次なる捕獲作戦が示されました。OSO18をどこまで追い詰めているのか。捕獲に向けた勝負どころはどこか。詳しくお伝えします。 (釧路局記者 島中俊輔)

65頭の牛襲う“OSO18”

コードネーム「OSO18」。この名前は、最初の被害現場、標茶町の「オソツベツ」という地名と現場に残された約「18センチ」の足跡の幅から命名されました。

OSO18がこれまで襲った牛の数は65頭、うち半数近い31頭が死にました。最初の被害現場となった2019年7月の標茶町オソツベツの牧場では体重400キロの牛が殺されました。その後も被害は続き、▼2019年は28頭、▼2020年は5頭、▼2021年は24頭、▼2022年は8頭、が襲われました。
現場に残された体毛の鑑定結果や足跡から、いずれもOSO18による被害とみられているのです。

被害にあった酪農家 自己防衛しても不安募る

標茶町中チャンベツ原野で酪農を営む佐藤守さんは毎年5月から10月にかけては昼夜問わずおよそ130頭の牛を放牧しています。2019年と2021年にあわせて5頭の牛が被害に遭い、うち3頭が死にました。

OSO18被害に遭った酪農家・佐藤守さん
「これまでクマに襲われた牛なんて見たことがなかったから、すごいものだと感じました。僕たちは牛を育てることで生活してるので、こんなことが起きるんだという感じでした。大切に育てている牛なので、そう簡単には殺されたくない」

佐藤さんは対策を講じてきました。放牧している夜間はラジオを大音量でかけっぱなしに。そして「防獣ライト」と呼ばれるさまざまな色に光るライトを30個ほど設置しました。その結果、年に5~6回は目撃していたというヒグマはほとんど見かけることはなくなり、ことしは被害に遭わずに済んだと言います。

このほか、被害に遭った厚岸町の町営牧場では放牧地を囲むように総延長20キロあまりの電気柵を設置。その結果、ことしは被害が起きていないと言います。

各酪農家が自己防衛策を講じることでなんとか被害を食い止めていますが、対策にも限界はあります。OSO18が捕獲されない限り、牛が襲われる不安からは解放されません。

OSO18被害に遭った酪農家・佐藤守さん
「賢いクマってこともありまして、なかなか捕まらないのが現実で、これからどうしたらいいのか。OSO18がうろついているというのは嫌なものを感じます。もしかしたら対策の目をかいくぐって、またやるんじゃないかという思いがあります」

忍者の正体は“普通のヒグマ”

11月15日に標茶町で開かれた「OSO18捕獲対応推進本部会議」。道、自治体、専門家ら約30人が参加して、ことし春から秋にかけての捕獲作戦の進捗状況や新たに分かった生態が報告されました。

まず体の大きさについて。生態に詳しいNPOでつくる「特別対策班」が痕跡や写真をもとに分析したところ、詳しいサイズが明らかになりました。

▼体長は2メートル前後
▼推定体重は230から320キロ
▼前足の幅は16センチから17センチ程度

“超巨大ヒグマ”などと報じられることもあったOSO18ですが、一般的なオスの成獣とあまり変わらない大きさだということが分かりました。頭部は金色、胴体は黒褐色で、左の後ろ足に2本のキズがある特徴も分かってきたと言います。

次に行動面の特徴について。
特別対策班が被害現場を調査したところ、主に以下の点が分かったといいます。

▼完全に牛を狙って行動していて肉食化傾向が強い
▼食べる部位は内臓やあばらから背中にかけての部位
▼ほかのヒグマと同じように獲物に対する執着心を持っている
▼食べ残しがある場合は再び戻ってくる可能性が高い
▼人間の気配には非常に敏感
▼被害現場に人が大勢入ったことで警戒心を与え別の場所に移動させてしまった
▼主に日没後に移動するが日中も移動する
▼沢筋や川の中を移動することが多いが、一部地区では国有林内を移動する

“忍者”とも言われ、人の気配に敏感なクマではありますが、特別対策班は「それほど特殊なクマではない」という見方を持っています。

OSO18特別対策班
NPO南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖理事長

「とてつもなく巨大なクマというわけではなく、その辺にいるクマ、“普通のヒグマ”だということがだんだん分かってきた。OSO18がこれまで見つからなかった理由は、沢や川の中、橋の下などを移動していることがある。また、とんでもない大きいクマじゃないかという思い込みがあると思う」

あと一歩まで迫っている

藤本さんは「OSO18に徐々に迫っている」と語ります。
標茶町では有刺鉄線で体毛を絡めとる「ヘア・トラップ」をOSO18の通り道と推定される場所の木などに設置したところ、採取した体毛のDNAが2つの場所で一致。行動エリアの特定につながってきました。被害現場となった牧場の近くをぐるぐる回るなど特有の動きもわかってきました。
6月からは箱わなを7か所設置したり、9月下旬にはヒグマが好む飼料用のデントコーン畑で姿を発見し、張り込みを行ったりしましたが、捕獲には至りませんでした。
手ごわい相手ですが、特別対策班は行動エリアや行動特性などを見極めることができたことから「あと一歩のところまで進展している」と考えています。

“年内最後のワンチャンス”

会議では次なる捕獲作戦が示されました。
これからの積雪期は雪に残った足跡を追跡しやすくなるため、むしろチャンスと捉え、勝負をかけようというのです。ヒグマは概ね12月に冬眠に入りますが、まとまった雪が降ってから冬眠するまでの間は約10日間とみられています。この10日間が“年内最後のチャンス”だとしています。重点地域を標茶町を中心とした4か所に絞り、▼農家などから目撃情報を集めるとともに▼雪に残された足跡から居場所を特定して、冬眠前もしくは冬眠明けの捕獲を目指す方針です。

OSO18特別対策班
NPO南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖理事長

「これから雪が降って最大のチャンスが来る。冬眠前のワンチャンス、冬眠明けのワンチャンスだ。今、私たちはOSO18をかなり追い詰めていると思う。ただ、私たちだけでなく皆さんの協力も必要だ。道路を横断しているクマや足跡などを見たら町役場に連絡してほしい。皆さんの協力のもと遅くとも来年3月までにはなんとか捕獲したい」

積雪期の“チャンス”を生かして捕獲につなげられるか。OSO18と対じする日々は続きます。

2022年11月16日

牛を襲うヒグマ「OSO18」と酪農地帯の環境変化
冬眠しないヒグマを警戒 北海道東部の冬の工事現場から

ヒグマ情報 まとめページへ
札幌市周辺部のヒグマの住む森を定点で観察中 ヒグマカメラのページへ


関連情報

あなたは大丈夫? フレイル予防法

ほっとニュースぐるっと道東!

2022年10月3日(月)午後5時40分 更新

釧路工業高校

ほっとニュースぐるっと道東!

2022年11月2日(水)午後6時04分 更新

町民も参加 中標津が舞台のドラマの撮影

ほっとニュースぐるっと道東!

2022年7月26日(火)午後7時20分 更新

上に戻る