NHK札幌放送局

北海道新幹線開業5年 どうなるの?並行在来線

ほっとニュースweb

2021年3月26日(金)午後0時10分 更新

2030年度末の札幌延伸に伴ってJR北海道から経営が分離される並行在来線。存続か廃止か、沿線自治体と北海道は協議を進めています。しかし、一部区間では貨物列車も共用で線路を使っています。今、議論はどうなっているのでしょうか。

「並行在来線」のいま

北海道新幹線が2030年度末に札幌まで延伸された際に、JR北海道から経営が分離されることになっている並行在来線。現在、特急や普通列車が走行している区間です。

並行在来線の利用者に話を聞きたくて、道南の森駅を訪ねました。1日の平均利用客数は190人ほどいますが、平日の夕方ということもあり、駅にはほとんど人の姿は見られません。2時間ほど滞在しましたが、出会えたのは観光客や通学の高校生など10人ほどでした。駅の前でも話を聞いてみると、並行在来線を存続してほしいという声と、廃止もやむを得ないという声に別れました。

病院への通院でJRを利用するという70代女性
「1か月に3回ぐらい利用します。なくなったら大変だよ」
JRをほとんど利用しないという70代女性
「車ある人はほとんど車移動だろうし、ほとんど乗りません」

小樽から函館までの287キロあまりの区間を小樽から長万部までの後志地域と、長万部から函館までの渡島地域の区間に分けて、今後の旅客輸送の方向性について、それぞれ協議が進められています。

このうち長万部・函館間には、貨物列車も共用で線路を走行しています。貨物列車は北海道の物流にとって大動脈です。貨物路線の扱いも焦点になっています。

「大動脈」貨物線のいま

いま、貨物列車はどうなっているのか、後志の京極町へと向かいました。後志の京極町の選果場を訪ねると、ジャガイモの出荷作業が行われていました。まだ春が遠いと感じる雪深い3月中旬でもほぼ毎日出荷されています。
いまの時期は「キタカムイ」という品種が主流で、秋に収穫して貯蔵しておくことで甘みが増すということで、この時期に関東や関西に出荷しているということです。

この日、およそ2トンのジャガイモを積んだトラックはJR貨物の東室蘭駅へと向かいました。片道およそ80キロ。3つのコンテナを引いたトラックが峠を越えて走っていきます。

およそ2時間半ほどで貨物ターミナルに到着し、コンテナは貨物列車に乗せられました。次の日にはジャガイモが東京のスーパーに並ぶということです。

JR貨物によりますと、北海道から本州へと運ぶ荷物の量は年間でおよそ230万トン。このうち、半分以上がジャガイモやタマネギなど北海道で収穫された農産品です。

農業団体は、北海道の農業にとって貨物列車の存在は欠かせないと話しています。

ホクレン 湊興令 物流総合課長
「鉄道貨物がなくなった場合、トラックによる海上輸送への転換が必要になってきますが、新たなトラック運転手の確保というのは困難となり、道外への輸送ができなくなる恐れがあります。日本の食糧基地である北海道としての役割に応えられないという可能性があります。北海道から農畜産物を道外へ送るためには鉄道と海上両方の輸送手段が必要不可欠だと思っています」

並行在来線が必要な住民にとっても、農業大国北海道の物流を支える意味でも、この線路は重要です。並行在来線の経営がJRから分離されると、第3セクターなど経営を引き継いだ企業の収支にも影響を与えます。

沿線自治体の「意外な答え」

沿線自治体はどう考えているのか、道南の7つの自治体の市長と町長に、旅客輸送の存続の是非についてアンケートを送り、回答を得ることにしました。2週間後、アンケートが次々と帰ってきました。その結果はわれわれにとっても意外なものでした。

この中で「存続が望ましい」と回答したのは北斗市だけで、「廃止も検討」と回答したのが七飯町と長万部町の2町ありました。八雲町、森町、鹿部町はまだ判断できないとしていて、函館市は無回答でした。

廃止も検討している理由について、七飯町の中宮安一町長

「バスのほうが住民のニーズを反映した場所に停留所を設置でき、利便性が高い交通手段となるため」

と回答しました。

また、長万部町の木幡正志町長

「長万部と八雲間は新幹線で結ばれるほか、町内の在来線の駅の乗車人数は1日あたり10人以下であること」

などと回答しています。

一方で、貨物列車については北海道の物流の大動脈としての役割が大きく、国や道などの関係者の間では維持されるという見方が強くなっています。

もし旅客輸送が廃止されると・・・

並行在来線の旅客輸送については、沿線自治体と北海道で作る協議会が4年後をめどに存続か廃止かの結論を出す方針です。
旅客輸送が仮に廃止されれば、沿線自治体が直接恩恵を受けない貨物列車のためだけに費用を負担するメリットはなく、自治体の間では「鉄路は国や道が責任を持って維持するべきだ」という声も挙がっています。

ただ、JR北海道の試算ではトンネルと橋の維持・補修費だけで、今後20年間で25億円がかかるとされています。国土交通省によりますと、全国的に見ても新幹線が延伸され経営分離された並行在来線の区間が旅客輸送を廃止して、貨物列車専用となったケースはこれまでなく、具体策は示されていません。JR貨物北海道支社小暮一寿支社長は、次のように話しています。

「鉄路の維持に関しては、北海道や国を交えて広域的な議論が必要だと考えています」

並行在来線については近く8回目の協議会が開かれる予定です。貨物列車の取り扱いも含めて今後の議論が注目されています。

取材:川口朋晃(函館局
2013年入局 小樽支局を経て2018年より函館放送局勤務 市政・経済取材担当

後志では「バス転換やむなし」の声も

一方、貨物列車が走らない小樽と長万部の間について、沿線自治体は「廃線、バス転換やむなし」の反応が目立っています。
背景には、道南以上に厳しい収支が見込まれることがあります。まず貨物列車が走っていないため、使用料がありません。また、山あいを走るこの路線は通称“山線”と呼ばれ、道内有数の豪雪地帯です。冬になれば除雪などのコストがかさみます。

そのうえ、この区間では橋などの老朽化が著しく、JR北海道は、修繕・更新費が今後20年でおよそ64億円に上ると説明しています。もし、並行在来線を維持しようとすると、莫大な負担が生じ、財政が耐えきれないのではないか、多くの自治体はそうみているようです。

道南と同じように、後志地方の沿線自治体も道と協議会を設け、検討を続けていますが、まだ結論は出ていません。その一方で、参加する自治体の間には温度差があるのも事実です。

利用多い余市町は“存続模索”

その中で、存続を求めている自治体が余市町です。余市から小樽まで利用客数は1日平均およそ2000人。ほかの区間より格段に多く、まとまった通学の利用もあり、齊藤啓輔町長は、余市―小樽間の存続が必要だと訴えています。

余市町 齊藤啓輔町長
「余市から小樽、そして札幌方面に通勤通学する方もいるし、札幌市の手稲に大きい病院があるので、そこにいく足として活用している高齢者も多い印象がある。利用客は1日2000人ほどいますので、それを考慮すると廃線して、バス転換というのは容易に受け入れられない」

それでも齊藤町長は、存続の条件は「採算に乗ること」だと強調しています。判断は収支の見込み次第となりそうです。

取材:小田切健太郎(小樽支局)
2018年入局 釧路局を経て2020年より小樽支局 後志管内の取材を担当


2021年3月26日

開業5年 期待の北海道新幹線は今 トップへ


関連情報

登別温泉に帰ってきた!大ちゃんのピザ

ほっとニュースweb

2021年2月24日(水)午後3時50分 更新

被災者の生活支援にコロナの壁

ほっとニュースweb

2021年9月3日(金)午後4時23分 更新

謎の食材「たらおさ」の秘密

ほっとニュースweb

2020年12月21日(月)午後6時19分 更新

上に戻る