ドライブなどをしていると道路脇に青々と生えているササをよく見ますよね。
ことし、北見市や津別町では、このササに異変が起きています。
「北見・美幌・津別・阿寒へと向かう道路沿いの笹は全て茶色。一体どれくらいの広さの地域で枯れているのでしょうか?また、再生にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?こんどの冬は、鹿にとっては辛い季節になるのかなぁ?」
投稿を寄せてくれたのは美幌町の視聴者です。
早速現地を取材!
お話を聞き、投稿者が目撃した津別町の国道を訪れてみました。
投稿のとおり、一面のササが枯れていました。

どこまで広がっているのか、なぜ枯れたのか、森林の生態系を研究する東京農業大学オホーツクキャンパスの岡田慶一さんと一緒に調べてみました。
現場をみて岡田さんが受けた印象は・・・。
「1年冬を越した葉が全部枯れているように見えますね。ここまで全部枯れているというのはなかなか見ない」

オホーツク地方にはクマザサと呼ばれるササが広く分布しています。
クマザサの葉は2年から3年は持つため、ここまで全体が枯れているのは珍しいといいます。
調べたところ、ササが枯れていたのは津別町だけではありませんでした。
確認できただけでも、北見市や摩周湖・阿寒湖周辺など広い範囲で見られました。

なぜササは枯れたのか
岡田さんはこのように一斉にササが枯れる原因は大きく2つあるといいます。
(ケース①ササの寿命)
クマザサは120年で世代交代をします。
寿命が近くなるとササは一斉に花を咲かせて、種を実らせ、その後、枯れてしまいます。
その時、地上に出ているササは地下でつながっているため、周囲のササが一斉に枯れてしまうという事が起こってしまうのです。
(ケース②雪が少ない)
ササは寒さや乾燥に弱く、雪に埋もれて、守られることによって、茎から新しい葉が芽吹くことができます。
しかし、守ってくれる雪が少なすぎると、さらされた部分が枯れ、新しい芽も芽吹くことができなくなるのです。

私たちは、ササが枯れた原因を探れないか、地元でガイドをする上野真司さんに話を聞こうと、ササ枯れが確認できた場所のひとつ、津別町の自然公園「ノンノの森」を訪れました。
ここも、わずかに新しい葉があるものの、やはり全体的に枯れていました。

上野さんは、「ササの花」を公園のスタッフが見つけたと見せてくれました。
稲穂のような不思議な花で、実際に見られることが出来るのは珍しいといわれます。 しかし、見つかった場所ではこれ以外に見当たらず、去年も一斉に開花している様子はなかったといいます。
雪の状況はどうだったか聞いてみると・・・。
(ガイドの上野さん)
「7~8年前とかは僕の身長くらい雪があって最近は腰くらいなんですよね雪の量自体が少し少ない」

東京農業大学の岡田さんが調べたところ、北見市や津別町では今シーズンの最深積雪が平年を下回っている期間が長かったことが分かりました。
このため、寿命より、積雪の少なさが枯れた原因だということです。
積雪の少なさは、オホーツク地方のササの存亡にも関わってくるといいます。
(東京農業大学・岡田さん)
「気候変動で積雪というのが大きく変わってくることがあります。積雪が減ってしまうと、積雪がないと生息できないササが分布出来なくなるのではないかと言われています」
ササが枯れた影響は?
一方、ササがなくなると光が必要になる広葉樹の種や他の草が芽吹く大チャンスとなります。
しかし・・・。
(東京農業大学・岡田さん)
「本来は枯れ葉がもう少し生きているはずなので、そういう物がないことによって、シカが食べるものが、別の植物にシフトする」
ササを食べるシカの食料がなくなれば、成長した木の皮を食べ、周囲の森に深刻なダメージを与えてしまう可能性もあるというのです。

意識してみてみると・・・
私は投稿があるまで、ササの変化に気づくことは出来ませんでした。
意識して見ると本当に広い範囲で枯れていたのに驚きました。
ほかにも気候の変化で見慣れた景色が大きく変わっているのかもしれません。
(北見局記者・五十嵐菜希)
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