NHK札幌放送局

流氷カメラ2022~小清水町から~

0755DDチャンネル

2022年3月25日(金)午後10時03分 更新

北海道の東側に面するオホーツク海には真冬に流氷が訪れます。そのオホーツクを一望するスポットとして人気の小清水町のフレトイ展望台に自動撮影カメラを設置して、流氷の移り変わりを2か月間に渡って撮影しました。
初回放送:2022年3月26日(土)7時55分〜
再放送:2022年4月9日(土)11時31分〜

絶景!流氷スポット

小清水町、網走国定公園内の丘にあるフレトイ展望台は陸側を向けば多くの渡り鳥が訪れる濤沸湖(とうふつこ)が広がり、海側を向けば、網走市から世界自然遺産の知床にかけての海岸線を一望することができます。

小清水町 フレトイ展望台

2022年1月18日、NHKは、特別な許可を得て展望台に自動撮影ができるカメラを設置しました。レンズを向けたのは、知床連山を背景にしたオホーツクの海。この角度なら、流氷が岸に押し寄せる様子も記録できるはずです。

流氷カメラの流氷初日

カメラが初めて流氷を撮影したのは1月27日。小さな画像では見にくいのですが、水平線のまんなか付近に、白い筋見えます(ここの場所)。小清水町の海岸は、網走市から知床にかけての、円弧状になった海岸のちょうど底にあたる場所です。最初にやってくる「はぐれ氷」は、氷の密度の高い「流氷帯」から先行してくる氷で、沖合を直接知床方面に流れていくため、なかなか小清水町の岸には近づいてくれません。

やきもきしていたところに、31日の画像には、水平線に白い筋が見えてきました。いよいよ流氷帯の到来です。

2月2日は、今シーズン、もっともドラスティックな流氷の風景となりました。水平線近くで、白い線のように見えていた氷は、午前中のうちに一気に太い帯に、そして12時30分。僭越ながら、

「小清水町接岸初日」

を宣言させていただきました。(特設サイト・流氷カメラで)

寄せては返す流氷帯

流氷が海を覆うと波が立たなくなり、浜辺は静寂に包まれます。地元の観光関係者によると観光客の方の中には流氷がぎっしりと海岸に押し寄せているとこのまま動かず離れていかないと思っている人たちも多いといいます。

ところが、流氷はめまぐるしく動きます。

2月5日、前日まで流氷に覆われていた海は、夜があけてみると青い海に戻りました。逆に、翌々日には、いつの間にか真っ白な氷に覆われていました。

流氷は風や海流の影響で常に動き続けます。海流によって南下しながらも南寄りの風が続けば岸から離れ、北よりの風が続けば岸に近づきます。

漁師が協力、網走で新ツアー

春が近づくにつれ、流氷は海岸から離れることが多くなります。このタイミングを心待ちにしていたのが、網走市内の有志でつくる団体「コネクトリップ」です。
網走市の魅力を発信しようと活動しているグループで、流氷と海岸の間の海面をいく「流氷カヤック」の初ツアーを計画していました。

流氷はどのように海に浮いているのか、実際の大きさはどれくらいなのか。間近でここにしかない自然を感じられるのが、流氷カヤックの最大の魅力です。

流氷が沖合にあれば波は穏やかですが、氷は風や海流で思いのほか早く動きます。
そこで、こうした海を仕事場にしている網走市の漁業関係者が、安全面をサポートして実現しました。
企画から4年の準備期間には、網走漁協も加わって、ツアーを行う場所の下見や試験航行にも参加してきました。

コネクトリップは、将来、このツアーを、流氷だけでなく、網走市の水産業を知るアクティビティに育てて行きたいと考えています。

流氷が去って芽吹く「いのち」

春、流氷はとけながら、沖にさがっていきます。とけた流氷が海を豊かにすると言われていますが、その実態は謎のままです。

北海道大学の低温科学研究所の大島慶一郎教授は35年間にわたって流氷がどのように海を豊かにしているのか研究を続けています。

大島教授の研究チームは2007年からオホーツク海にデータ収集用の「フロート」を漂流させて、オホーツク海の広範囲で海中の酸素量を観測しました。
「フロート」は水深1650メートルまで潜り、サンプルを集めながら、水面までの上昇と下降を繰り返す仕組みです。

注目したのは酸素量の変化です。酸素は植物プランクトンが増えることで、増加します。つまり、酸素が多い場所は、豊かな海なのです。

大島教授らは13年間のデータをもとに、流氷がとけた影響が大きい3月下旬から5月中旬にどれだけ生物が増えているのか、オホーツク海の33地点で見積もりました。

すると、流氷がなかった場所に比べてあった場所のほうが豊かになっていることが数値であきらかになりました。長く流氷があった場所はなかった場所に比べて実に3倍も豊かでした。

北海道大学低温科学研究所 
大島 慶一郎 教授

「世界的にみても海氷がとける海は非常に良い漁場になっている、オホーツク海も同様で流氷がとけることで良い漁場になっている」

大島教授がいま、視線を向けているのは、地球温暖化が進む中で、流氷が生み出す豊かさがどうなってしまうかです。
流氷の面積はこの40年でおよそ30パーセント減少。大島教授は地球の温暖化の影響によるものだと考えています。
次に解き明かそうとしているのは、「氷が減ることが海に何をもたらすのか」、プロジェクトはもうスタートしています。

2020年3月25日
NHK北見放送局 記者 五十嵐 菜希

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