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2021年9月 旭川市長選挙 出口調査徹底分析 有権者の判断は?

  • 2021年9月27日

9月26日に投票が行われた旭川市長選挙は、自民党の支援を受けた今津寛介氏が立憲民主党の支援を受けた笠木薫氏を抑え、事実上の与野党対決を制して初当選しました。 15年ぶりに市長が交代することになった旭川市。 有権者はどう判断したのか。そして今後の市政は。NHKが26日に行った出口調査で分析します。
調査は26日、市内16か所の投票所で投票を終えた有権者2243人を対象に行い、59.3%にあたる1331人から回答を得ました。一方、25日までに行われた期日前投票は結果に含まれていません。 


今回の投票層の傾向は

詳しい分析に入る前に、まず、今回の市長選挙で投票した人の特徴をみていきます。
出口調査では、投票した人にふだん支持している政党を尋ねました。
この結果、政党支持率は自民党が48%、次いで立憲民主党が24%、共産党が5%、公明党が3%、日本維新の会が1%、国民民主党が1%などとなっています。とくに支持している政党はない、いわゆる無党派層は17%でした。

年代別に支持政党をみますと、30代から70歳以上までは、政党支持率トップは自民党でした。年代によって多少の差はあるものの、45%から55%と各年代で半数前後の支持を得ています。
一方、10代・20代で最も多かったのは無党派層でした。10代・20代で無党派層の割合は43%で、自民党の支持率41%を上回っています。
無党派層の割合は、年代が上がるにつれて減っていきます。
30代は32%でしたが、60代では10%、70歳以上では8%でした。無党派層の割合は最多の10代・20代と最小の70歳以上で5倍以上の差が開いています。
一方、無党派層と真逆の傾向を示すのが立憲民主党で、年代が上がるほど支持率も高くなっています。10代・20代は6%でしたが、70歳以上は32%。こちらも5倍以上の差が開いています。
公明党や共産党といった根強い固定票を持つ“老舗”政党は、年代差はあまりみられません。
実は、こうした傾向は、前回・3年前の市長選挙の出口調査でもみられました。
こうしてみますと、自民党は各年代で偏りなく支持を得ている一方、無党派層と立憲民主党支持層は“裏表”の関係になっています。
こうした年代の傾向を踏まえて、今回の出口調査を分析する必要があります。


今津氏の勝因は 笠木氏の敗因は

出口調査の結果を詳しくみていきます。
まず、男女別に投票先をみますと、今津氏は男性の60%余り、女性の50%台半ばから支持を得ました。
笠木氏は男性の30%台後半、女性の40%台半ばから支持を得ました。

前回の市長選挙は、立憲民主党、国民民主党、社民党が推薦した西川将人氏が自民党と新党大地が推薦した今津寛介氏を抑えて、4回目の当選を果たしました。今回、今津氏は前回に続いての立候補で、笠木氏は西川氏の後継として立候補しました。
前回選挙の出口調査で、男女別に投票先をみますと、男女とも西川氏が今津氏を上回り、とくに女性では西川氏は60%余りと今津氏に差をつけていました。
今回の選挙で今津氏は、前回選挙と比べて男女いずれも支持を増やしました。一方、笠木氏は男女いずれも、前回選挙の西川氏ほどは支持を得られませんでした。

続いて年代別。今津氏に投票したのは10代・20代のおよそ70%、30代の70%台半ば、40代のおよそ60%、50代の60%台半ば、60代の50%台後半、70歳以上のおよそ50%となっています。
笠木氏に投票したのは10代・20代のおよそ30%、30代の20%台半ば、40代の30%台後半、50代の30%台半ば、60代の40%余り、70歳以上の40%台後半となっています。

今津氏はいずれの年代でも笠木氏を上回り、とくに若い年代で笠木氏を離しました。一方、2人の差は年代が高いほど接近していました。
前回選挙の出口調査で、年代別に投票先をみますと、西川氏は各年代で今津氏を上回り、とくに10代・20代では西川氏は60%余りと今津氏に差をつけていました。また、西川氏は60代と70歳以上で60%近くと今津氏をリードしていました。今回の選挙で今津氏は、前回選挙と比べて若い年代で支持を増やしたかたちでした。

そして支持政党別。それぞれの政党の支持者がどの候補に投票したのかを見てみます。
今津氏は自民党支持層の80%台後半、公明党支持層の70%余り、日本維新の会支持層の60%余り、国民民主党支持層の60%台半ばから支持を得ました。さらに無党派層のおよそ60%から支持を得ています。
笠木氏は立憲民主党支持層の80%台後半、共産党支持層の80%台後半、日本維新の会支持層の30%台後半、国民民主党支持層の30%台半ばから支持を得ました。一方、無党派層のおよそ40%から支持を得ています。

前回選挙の出口調査では、各党の政党支持率は自民党が41%で最も高く、ついで、立憲民主党が21%、共産党が4%、国民民主党と公明党がそれぞれ3%などでした。無党派層は24%でした。
今回、政党支持率は前回選挙と比べて、自民党は7ポイント、立憲民主党は3ポイント上がりました。一方、無党派層は割合が下がっていました。
前回選挙の出口調査で、支持政党別に投票先をみますと、今津氏は自民党支持層の60%台半ば、公明党支持層の70%台半ばから得票していました。自民党支持層の30%余りは西川氏に流れていました。
一方、西川氏は立憲民主党支持層の90%近く、共産党支持層の80%台後半、国民民主党支持層の80%台半ばから得票していました。
無党派層の投票先では西川氏が60%余り、今津氏が30%台半ばで、西川氏が今津氏をリードしていました。
前回選挙では自民党支持層は一定規模が西川氏に流れていましたが、今回の選挙で今津氏は、自民党支持層をしっかり固めたかたちでした。また、今回の選挙で今津氏は無党派層で支持を増やしました。


有権者は何を基準に投票したのか

有権者は今回の市長選挙で投票する際、何を基準にしたのかー。
出口調査では、投票先を選ぶ際に最も重視したことを尋ねました。
全体の結果は、多い順に「政策・公約」が45%、「人柄・イメージ」が29%、「政党・団体の支援」が14%、「経歴・実績」が12%でした。

これを年代別にみますと、最も多かったのは、10代・20代では「人柄・イメージ」が42%と4割を超えましたが、このほかの年代はいずれも「政策・公約」でした。「政策・公約」は40代で51%、60代で46%ととくに多くなっています。
一方、支持政党別にみますと、「政策・公約」は自民党支持層で49%、立憲民主党支持層で41%、共産党支持層で49%とそれぞれ最も多くなりました。
「人柄・イメージ」は公明党支持層で44%、無党派層で43%とそれぞれ最も多くなりました。
10代・20代は無党派層が多い中で、「人柄・イメージ」を基準に投票する。一方で、年代が上がるにつれ政党支持が明確になっていく中、「政策・公約」が基準になる。そんな傾向がみえてきます。

選択肢ごとに投票先をみますと、「政策・公約」を選んだ人のうち、60%台半ばの人が今津氏に投票したと答えました。笠木氏に投票した人は30%台半ばでした。「人柄・イメージ」を選んだ人のうち、60%台半ばの人が今津氏に投票したと答えました。笠木氏に投票した人は30%台半ばでした。

一方、「政党・団体の支援」を選んだ人のうち、50%余りの人が笠木氏に投票したと答えました。今津氏に投票した人は40%台後半でした。「経歴・実績」を選んだ人のうち、60%台半ばの人が笠木氏に投票したと答えました。今津氏に投票した人は30%台半ばでした。

今津氏は、「政策・公約」「人柄・イメージ」を投票基準にする有権者が多くなる中で、笠木氏に差をつけていました。いわば“多数派”を抑えたかたちでした。

前市長の市政運営 その評価は

西川前市長の市政運営について4段階の選択肢で尋ねたところ、「大いに評価する」が11%、「ある程度評価する」が43%、「あまり評価しない」が30%、「全く評価しない」が16%でした。

分析しやすいよう4段階の選択肢を2段階に合成すると、「大いに評価する」「ある程度評価する」を合わせた「評価する」は54%、「あまり評価しない」「全く評価しない」を合わせた「評価しない」は46%でした。
今回の選挙で今津氏は「評価しない」層の70%台半ばを固めた一方で、「評価する」層からも40%台半ばと一定の支持を得ています。今津氏は西川市政を「評価する」層からも一定の支持を取り込んだかたちでした。また、前回選挙の出口調査の結果と比較しますと、今回の選挙で今津氏は前回選挙と比べて、西川市政について「評価する」層での支持を増やしていました。

今回選挙の出口調査で市政評価を年代別にみますと、「評価する」は10代・20代で56%、60代で53%、70歳以上で62%とそれぞれ「評価しない」を上回っています。
一方、「評価しない」は30代で61%、40代で54%と「評価する」を上回っています。残る50代は「評価する」「評価しない」が50%で並んでいます。
年代が高いほど立憲民主党の支持率が上がっていることから、60代や70歳以上で「評価する」が多くなっているのは直感的に理解できます。
一方、無党派層が多い10代・20代と30代で評価が逆転しているのは興味深いところです。
実は市政評価を支持政党別にみますと、「評価する」は立憲民主党支持層で77%、共産党支持層で61%と「評価しない」を大きく上回り、「評価しない」は公明党支持層で66%と「評価する」を大きく上回りました。
一方、「評価しない」は自民党支持層で55%、無党派層で51%と、「評価する」は上回ったものの差は公明党支持層ほどは大きくありませんでした。自民党支持層や無党派層の半数近くは西川市政を評価しています。

こうした傾向が複雑に絡み合い、10代・20代と30代で市政評価が逆転する状況につながっています。市政評価はいろいろな要因が背景にあり、そう単純な話ではないということでもあります。
もちろん、評価と実際の投票は別物です。
「評価するが、投票はしない(※戒めの心理)」「評価はしないが、投票する(※消極的選択、期待の裏返しも)」…。有権者の投票心理は実にさまざまです。だから出口調査の分析はおもしろいのです。

そこで、前回選挙の投票先と今回選挙の投票先をクロスさせてみます。
前回選挙で西川氏に投票した人の内訳をみますと、今回の選挙で笠木氏に投票したのは60%台半ばでした。一方、今津氏に投票したのは30%台半ばでした。
一方、前回選挙で今津氏に投票した人の90%余りが今回の選挙でも今津氏に投票しました。

今回の選挙で今津氏は、前回選挙でみずからに投票した層を固めたうえで、前回選挙で西川氏に投票した層からも一定の支持を得ていました。


新市長への期待は

出口調査では、新しい市長に最も期待する政策を8つの具体的な選択肢をあげて尋ねました。全体の結果は、「新型コロナウイルス対策」が28%で最も多く、次いで「景気・雇用対策」が20%、「医療・福祉の充実」が15%、「中心市街地の活性化」と「教育・子育て支援」が11%、「いじめ問題への対応」が10%、「人口減少対策」が5%、「防災対策」が1%でした。

これを今津氏に投票した人でみると、「新型コロナウイルス対策」が28%、「景気・雇用対策」が21%で多くなる中、「中心市街地の活性化」や「いじめ問題への対応」がそれぞれ12%となりました。

笠木氏に投票した人では、「新型コロナウイルス対策」が27%と最多で、「医療・福祉の充実」が21%、「景気・雇用対策」が19%、「教育・子育て支援」が12%で続いています。相対的に、今津氏に投票した人では「中心市街地の活性化」や「いじめ問題への対応」が多くなっています。

年代別にみますと、10代・20代は「新型コロナウイルス対策」が29%で最も多く、「教育・子育て支援」が19%、「いじめ問題への対応」が16%で続きました。
30代は「教育・子育て支援」が35%で最も多く、「新型コロナウイルス対策」が20%、「景気・雇用対策」が14%で続きました。
40代は「景気・雇用対策」が23%、「教育・子育て支援」が21%、「新型コロナウイルス対策」が20%で、上位3選択肢はほぼ並んでいます。
50代と60代は上位の選択肢は同じで、最多は「新型コロナウイルス対策」(50代28%、60代32%)、続いて「景気・雇用対策」(50代24%、60代25%)、「医療・福祉の充実」(50代13%、60代14%)でした。
70歳以上は「新型コロナウイルス対策」が最多で30%、ついで「医療・福祉の充実」が23%、「景気・雇用対策」が18%でした。
若い年代で「教育・子育て支援」が多くなっている一方、年代が高いほど「医療・福祉の充実」が多くなっています。また、10代・20代で「いじめ問題への対応」が上位に入っているのも特徴的です。
一方、支持政党別にみますと、「新型コロナウイルス対策」は自民党支持層で29%、立憲民主党支持層で32%、共産党支持層で26%とそれぞれ最も多くなりました。無党派層でも最多で21%でした。「景気・雇用対策」は公明党支持層で31%と最も多くなりました。新しい市長に期待する政策は、支持政党による差よりも年代差のほうが大きくなっています。

一方、西川市政の評価別にみますと、「評価する」層では「新型コロナウイルス対策」が最多で31%、ついで「景気・雇用対策」が20%、「医療・福祉の充実」が18%でした。
これに対して、「評価しない」層では「新型コロナウイルス対策」が24%、「景気・雇用対策」が22%でほぼ並び、「いじめ問題への対応」が14%で続きました。前市政を評価しない層で「いじめ問題への対応」が多くなっているのが特徴的です。

いじめの問題については別の設問で、投票にあたり旭川市の女子中学生が死亡しいじめの有無が調査されている問題を考慮したかを4段階の選択肢で尋ねています。結果は、「大いに考慮した」「ある程度考慮した」を合わせて76%、「あまり考慮していない」「全く考慮していない」を合わせて24%で、「考慮した」が7割を超えています。

「大いに」と「ある程度」を合わせた「考慮した」層では、60%余りは今津氏に投票していました。
一方、「あまり」と「全く」を合わせた「考慮していない」層では、今津氏、笠木氏それぞれおよそ50%でした。

「考慮したから投票する」「考慮したから投票しない」、2つの真逆のベクトルが考えられますが、この設問は年代や支持政党で傾向の大きな違いはありません。あらゆる層が「考慮した」です。裏を返せば、幅広い市民の声で成り立つべき市政にとって、関心の高い政策課題になっているということです。

今後の今津市政。市民の期待に応えて政策を着実に実行し、目に見えるかたちで結果を出すことが求められます。

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