列車の通過音 冬場は静か?
- 2023年3月10日
皆さんから寄せられた疑問に答える「シラベルカ」。 今回は、身近な音について投稿をいただきました。
「JRの列車の音が、夏は大きく聞こえるのに冬は静かなのはなぜ?」
冬場の列車の通過音が静かに感じるのはなぜなのか? そのメカニズムを、シラベルカ取材班が専門家とともに現地調査しました。(札幌放送局記者 上松凜助)
“夏だとガタンゴトン 冬だとすーっと流れるように”
投稿を寄せてくれた札幌市内に住む長谷川裕さん。線路沿いの道を散歩することを日課としていますが、去年12月、これまで散歩中に聞こえていた音が聞こえなくなったといいます。
投稿者の長谷川裕さん
投稿者の長谷川さん
「いつもこちらを散歩しているんですが、列車が通過するとき、夏だとガタンゴトンと聞こえるが、冬だとすーっと流れるように聞こえる。これはなぜかなと」
取材班も実際に線路沿いで列車の通過音を聞いてみると…。
たしかに静かに聞こえました。
なぜ冬は列車の通過音が静かに感じるのか?早速、専門家に聞いてみました。
要因はやっぱり…??
教えてくれたのは、騒音について研究している北海道大学工学研究院の松井利仁教授です。
松井教授、なぜ静かに聞こえるんですか?
北海道大学工学研究院 松井利仁教授
北海道大学工学研究院 松井教授
「雪が音を吸収してくれます。雪自体が穴だらけですので、そこへ音が入っていき、雪の中で吸収され消えてしまうというのがメカニズムなんです」
雪が音を吸収する・・・。
北海道に住む方は、日々の生活の中で実感していたかもしれません。
でも、“穴だらけの雪の中に音が入っていって吸収される”、とはどういうことなのでしょうか。
その詳しいメカニズムを松井教授に、分かりやすく、教えていただきました。
カギは雪の隙間
空気を含んだ雪は、隙間だらけです。
その隙間に、空気の振動である音が入り込むと、雪の粒子を震えさせます。
すると、その粒子が空気の振動を吸収するため、音が小さくなるんだそうです。
人工的な吸音材の多くも、同じ原理で音を吸収しているということです。
どれくらい音を吸収する?
実際、雪にはどれくらい吸音効果があるのか?
松井教授に、線路沿いで騒音計を使って測定してもらいました。
線路との間に雪山がある場所では、56デシベル。
一方、雪山が無い場所で計測すると、67デシベルでした。
単純比較はできませんが、雪山がある場所とない場所の差は、およそ10デシベル。
10デシベルの差は、人間の耳での聞こえ方には大きな違いが生じるということです。
雪山が無い場合の、60デシベル台の騒音の目安は、バスや新幹線の車内と同じ程度。
一方、雪山がある場合の50デシベル台の騒音の目安は、役所の窓口周辺と同じ程度だといいます。
北海道大学工学研究院 松井教授
「線路の横に高さ2メートルの非常に高性能な防音壁が立っているような状態と同じです。夏場と冬場でかなり差が出てくると思います」
松井教授によりますと、同じ雪でも、踏み固められた雪は隙間が無くなってしまい、アイスバーンの状態だとアスファルトと変わらないくらい音を反射するということです。
吸音効果は、雪に含まれる隙間がカギを握っていました。
今回の雪の吸音効果など、日々の生活で感じた疑問など、ぜひ投稿フォームやLINEからお寄せください。