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PTA会長が閉校の要望書を稚内市に提出  その理由は?

道北チャンネル

2023年2月6日(月)午後4時06分 更新

児童生徒あわせて8人の稚内市立増幌小中学校。この学校のPTA会長が地元の町内会長と連名で来年(2024年)3月末に学校を閉校するよう求める要望書を提出しました。背景にあるのは少子化と過疎化。すでに10年前と比べ小学校と中学校あわせて約300校が減少している北海道から、またひとつ、地域の学校が消えようとしています。(稚内支局  山川信彰) 


社会で必要な能力の育成ができない

稚内市立増幌小中学校は市の中心部にある市役所から15キロ、車で約30分の距離にあります。誕生は昭和57年。中学生は平成3年の19人、小学生は昭和58年の35人をピークに減少が続き、今年度の児童生徒はあわせて8人です。

子どもたちが減少する中、保護者や地元が決断したのは、学校の閉校でした。
1月30日、増幌小中学校の村井雄大PTA会長や町内会の幹部が稚内市役所を訪れ、市長や教育長と面会。閉校を求める要望書には、こう書かれていました。

「地域にとってかけがえのない存在の学校だが、今後も児童・生徒数の増加は見込まれない。集団生活を通して育まれる社会性や協調性など、社会の形成者として必要な能力の育成ができない」

要望書では、来年3月末で学校を閉校とし、保護者の要望を踏まえて新しい通学区域の設定やスクールバスなどの通学手段の確保をすること、学校の跡地の活用についての検討を求めていました。

増幌小中学校  村井雄大PTA会長 
「いま社会全体でSNSの発達などで人とのコミュニケーションが薄くなる中、少子化も進み、今の状況では子どもたちが社会性や協調性を養うのは難しいのではないか。地域にとって学校は大事だが、現状を考えると致し方ない」


地域にとって学校の役割は非常に大きい

要望書の提出の場に同席した教育長は、子どもたちのために重い決断をした保護者や地元の要望に「混乱のないように対応したい」と話す一方で、苦しい胸の内を語りました。

稚内市  表純一教育長
「地域にとっての学校の役割は非常に大きい。少子化が進む中、子どもたちの数が減ったら統廃合というわけではなく、なんとか存続できる可能性も模索したい。人数を増やして切磋琢磨するのがいいのか。小規模だからこそ行える教育もある」

稚内市内では、7年前に別の小中学校が閉校となっています。今回の要望書どおりになれば、またひとつ、地域の学校が消えることになります。

稚内市には、かつて(平成14年度)あわせて21校の小中学校がありました。
しかし、今年度(令和4年度)は16校にまで減っています。
市内の児童生徒の数は、今年度(去年4月)の時点で2051人。
平成14年度は3673人で、約1500人減少しています。


学校教育のあり方は  専門家に聞く

少子化と過疎化を背景に減り続けることは避けられない北海道の小中学校。
小規模校の教育や地域と学校との関わりについて研究している北海道教育大学へき地・小規模校教育研究センターの玉井康之センター長は、今後、地域の小中学校を統合する場合は細かな配慮が必要になると指摘しています。

北海道教育大学へき地・小規模校教育研究センター  玉井康之センター長
「一般的に人数が多い学校に新しく入学した子どもは人間関係に入っていけず、すぐにクラスになじめない可能性がある。また大きな学校のほうが先生と子どもの距離が遠くなってしまうことがあり、その部分を注意しながら定期的に相談に乗ってケアをしていく必要がある」

そして、今回のようなケースは道内各地で起こっていることだと指摘しました。

「北海道は、すでに約80%が過疎地域。道内の自治体の中で47町村は、すでに小学校と中学校がそれぞれ1校しかない状態になっている。運動会などの行事には地元の人が参加するように、学校と地域は密接な関わりがあり、地域の拠点でもある。学校が単独で教育をするのではなく、地域も巻き込みながら、今後の担い手である子どもたちを育てていく必要がある」

北海道で少子化や過疎化が進む中、未来を担う子どもたちにとって欠かせない学校教育を地域全体で考え直すことは、待ったなしの課題になっている。
稚内市で起きている現実を目の当たりにして、あらためて強く感じました。

2023年2月6日

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