NHK札幌放送局

ススキノ“名物ママ”の思い

ほっとニュース北海道

2021年1月12日(火)午後7時40分 更新

新型コロナウイルスのクラスターが相次いだ、札幌市の繁華街・ススキノ。 そのススキノで飲食店など4店舗を経営する“名物ママ”がいます。休業要請などの影響で経営が厳しくなるなか、店を残したいとこらえる“ママ”の思いを聞きました。 
(取材:札幌局 飯嶋千尋記者)

“今が一番厳しい”

ススキノの“名物ママ”、栗田美鳥さんに話を聞いたのは、先月(12月)17日。普段なら忘年会シーズンで多くの人が行き交っていますが、実際に栗田さんと一緒に街を歩いてみると、今年は人がまばらです。栗田さんから思わず、「いや~こんなに人が少ないなんて、寂しいな~」とため息が漏れました。

栗田さんは、ススキノで「ラウンジ」という接待を伴う飲食店3店と、和食料理の店1店の、あわせて4店を経営しています。このうちラウンジの3店舗は、休業要請を受けてから1か月が経とうとしていたころでした。

栗田さんはかつて、昭和から平成にかけて一世を風靡したキャバレー、「エンペラー」の支配人を20年にわたって務めていました。一度に最大で700人の客をもてなし、450人のホステスを束ねていました。2006年(平成18年)にその「エンペラー」が閉店すると、栗田さんは最後の支配人として、200人以上のホステスを次の職場へと送り出したといいます。

高度成長期からバブルの崩壊、さらにはリーマンショック。そして度重なる災害など、長年、ススキノの浮き沈みを見てきた栗田さんに、「これまでで一番つらかったのはいつですか?」と問いかけると、「今」と答えました。

栗田美鳥さん
「これまでで一番厳しく、寂しいススキノが身にも心にも応えて寒くなっています。12月の師走というと普段は人も出ていますが、ことしは歩いている人も少なく、お客様をお迎えしたいとは思っても、店を開けたところでお客様は入りません。師走は1年に1度の、言ってはなんですが“稼ぎ時”。皆さんの忘年会が皆無に近いのが現状なので、こういうススキノのような歓楽街は、厳しい状況にありますね」

厳しくても店は閉めない

休業要請に伴って、栗田さんが経営する4店のうち、営業を続けているのは1店舗のみです。それでも栗田さんは4店あわせて月200万円を超える家賃を払い続けていて、さらにどの店も閉店するつもりはないと言い切ります。

栗田さんに話を聞いていたのと同じ日に、30年来の付き合いになる飲食店の経営者、ゴンザガさんが栗田さんを訪ねてきました。1か月ぶりの再会だということで笑顔がこぼれる2人。ですが、話の内容は現状の厳しさばかりでした。

「Joy-D」 ロミオ V.ゴンザガさん
「店のライブに出演しているギター担当が、昼にバイトをしているんだけど、ススキノに行ったらダメだと言われるので、夜は禁止になってしまい、出演できなくなった。それだけでなく、さまざまなところで影響が出ていて。それにうちの店は午後8時からなので、営業時間に制限がかけられると2時間しか営業できない。それだと誰も来てくれない。さらに協力金では家賃にもならない・・・」

営業をしても客は1日に1ケタ台しか来ないのに、月40万円の家賃は変わらない。このままでは来年以降も営業を続けられるか不安がつのる、というのです。ですが相談を受けた栗田さんは終始、笑顔でした。自分も厳しい状況に陥っているにもかかわらず、それを一切、口にすることなく、一緒に頑張ろうと励ましていたのです。

ゴンザガさんは、栗田さんと話すと「もう少し頑張ってみよう」という前向きな気持ちになるといいます。

ロミオ V.ゴンザガさん
「栗田ママは、パワーとバイタリティがすごいんです。いつも前向きで、会うだけでパワーをもらえます。しかも、ススキノにあるみんなのお店を回って、『頑張ろう』って応援しているんですよね。そこまでやれるのはすごいなと思っています」

大好きなススキノを守り抜きたい

“私が諦めなければ、ススキノもきっと、諦めない”

栗田さんは、自分を育ててくれたススキノに、今こそ、恩返しがしたいといいます。

栗田美鳥さん
「ススキノのママさんたちはみんな私のことを知ってくれているので、私の姿を見てもいたいですし、いつも互いに励まし合っているので、そういう意味でも一番元気なところを見せないといけないなと思っています。ススキノのすべての店の営業が、かつてのように再開した暁には、もう一度“良いススキノだ”を言われるような場所でありたいという願いが強いですし、もう絶対ここで沈んではならない、ススキノは守りたいという一心です。トンネルの先には必ず抜けきれる明かりのある出口があると信じて、頑張りたいです」

2020年12月25日放送

取材を終えて

ラウンジを休業する前、栗田さんは自分の店のホステスや従業員全員に、PCR検査を受けてもらうなどして対策を徹底してきたといいます。
栗田さんは、いま、ススキノに対して「怖い」というイメージが広がっていると感じています。だからこそ、時間をかけて「ススキノを安心・安全が一番にある場所に少しずつでも変えていきたい」とも話していました。

この記事を書いている2020年12月24日、札幌市内の接待を伴う飲食店は、営業時間を10時までに短縮して営業を再開できることになりました。
経営がひっ迫する中でも休業要請に応じてきたススキノの人たちの思いが報われ、私たちが再び安心して笑顔でススキノに繰り出せる日が1日も早く訪れることを願っています。

札幌局 記者 飯嶋千尋

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