NHK札幌放送局

石狩湾新港の巨大な壁の謎に迫る! シラベルカ#19

シラベルカ

2020年8月18日(火)午後6時06分 更新

NHK北海道の取材チーム「シラベルカ」。前回に続き「シラベルカ for teens」として10代以下の若い世代の投稿を徹底調査しました。今回の投稿は石狩湾新港にある、正体不明の“巨大な壁”。

寄せられた疑問は次のような内容です。

10代女性
「石狩湾新港の岸壁に丸い穴のあいた大きな壁が2つ並んでいるのですが、これはいったい何なのでしょう。何かの建設跡にも見えるのですが・・」

投稿者は受験勉強中、気分転換に家族でドライブに行った際、湾岸に建っている“巨大な壁”が目にとまり、気になったといいます。インターネットで調べても情報がなく、投稿したとのこと。

記者はさっそくディレクターと共に現地に急行。石狩湾新港には仕事や釣りで行ったことがありましたが、“巨大な壁”は見た記憶がありません。いったいどんなものなのか、想像が膨らみます。


想像以上に大きな“壁”

取材した日はお盆の休日期間で、岸壁には多くの人が釣りに訪れていました。岸壁に沿った遊歩道を進んでいくと・・・。

記者
「2つの壁に丸い穴が空いているのが見えます。かなり大きいですね」。

小樽市と石狩市にまたがる埠頭の小樽市側、海が一望できる場所に、その“壁”はありました。
子鹿シラベルカが持っている双眼鏡を使うまでもなく、遠く離れた場所からも独特の存在感を放っています。想像を上回る光景に静かな興奮を覚え、取材にも力が入ります。

高さ10メートルの壁の真ん中に直径5メートルの穴。そばに立つと大きさが際立ちます。表面はあせていて、時間の経過を感じさせます。港を訪れていた人たちに“巨大な壁”について尋ねてみると・・・。

■家族で訪れた5歳の男の子
「何か分からない」
■初めて訪れたという男性
「丸い穴はなんとなく分かる。風を通す」
■いつも釣りに来ている男性
「通称モニュメントって言ってますけどね、何かあるんでしょうねきっと」

皆さん、はっきりとは心当たりがない様子…。謎は深まるばかりです。


港湾工学の専門家は

次に向かった先は北海道科学大学(札幌市手稲区)。港湾工学に詳しい山本泰司教授に写真を見てもらいました。

取材を受けるまでこの“壁”のことは知らなかったという山本教授。

「うーん、どうでしょうね。おそらく港の必要な機能を果たしている訳ではないと思うんですね。見た感じ芸術的な感じもしますので、そういう意味合いが大きいんじゃないか」

港湾工学上、必要なものではなく何かの意図を持った造形物ではないかとの分析でした。


港を整備した国は~核心に~

さらに取材を進め、港を整備した北海道開発局の小樽港湾事務所を訪ねると、ついに核心に迫る情報が得られました。

「こちらです」

当時の記録がわずかながら残っていたと、松本浩史副所長が見せてくれたのは、この“壁”が建てられた平成5年ごろのリーフレットです。リーフレットには、「石狩湾新港のゲートシンボルとしてのランドマーク」とあります。そして穴の意味について「港の両側にある小樽と石狩の2つの街の和をシンボライズした」という記述が。

松本副所長
「小樽市と石狩市、2つの街にまたがっている港ですので、“2つの街の和”をはかるということで“2つの輪”をランドマークとして整備した」


歴史をひもとく

さらに石狩湾新港について掘り下げていくと、意外な事実にたどり着きました。いまから45年前、港が整備される以前は、この土地はすべて「旧石狩町」だったのです。
当時の経緯を記した「石狩湾新港史」には、「小樽市が港湾管理者となるため、石狩町樽川村の一部を小樽市に編入」とあります。

石狩湾新港の計画に関わった石狩市の田岡克介前市長から、当時の詳しい経緯をうかがうことができました。

地域経済の発展につながる新たな港の整備を巡っては当初、小樽と石狩の間で激しい誘致合戦もあったといいます。そこで“2つの輪”には、2つの街がともに協力する融和への願いが託されていたといいます。

田岡 前石狩市長
「将来の石狩湾新港の発展を願い、小樽と石狩の両市の発展はもちろん、道全体の経済社会の発展に寄与するように、そのためにも両市がよく理解し合って進めてくださいという願いですよね」


2つの輪はいま…

“2つの輪”の願いはいま、実を結んでいます。ことし開港27年目となる石狩湾新港。大型の船舶が行き来し、取り扱う貨物量は去年680万トンと、7年連続で過去最高を更新しました。

その港を道と共に支えているのは、小樽市と石狩市の双方から出向してきた管理組合の職員。互いに協力して日々の業務にあたっています。

田岡前市長
「石狩湾新港の発展に最善手を打とうということは、小樽の利益につながるし、当然、石狩の利益にもつながる。(港が発展を遂げつつある)いまの大きな流れでは、小樽と石狩の両市ともにまさに“二重丸”ですね。そういう時代がようやく来たといってもいい。27年前に込められた願いはいま、現実のものになってきている」

石狩湾新港にある“オブジェ”のような巨大な壁。それは港の発展と地元の融和を願う、関係者たちの思いがたくさん詰まったものでした。

(取材:札幌放送局 山内洋平 記者 / 門脇陸 ディレクター)


放送の動画はこちら↓

🦌放送をご覧になった方からの投稿🦌
本日の内容に樽川村を小樽市に編入したことが紹介されていました。実は、その影には、樽川村の住民移転がありました。そして、それに伴い、樽川小中学校が85年の歴史に幕を閉じています。そんな村人の暮らしや学びがあったということを、知っていただけましたら幸いです。現在の樽川中学校の名称は当時の樽川村の人たちの思いが詰まった名称です。在職時に、開校25周年の節目があり、旧樽川小中の閉校記念誌等から一部抜粋し、現在の石狩市立樽川中学校のホームページに掲載しています。樽川村の一端に触れていただければと思い、投稿させていただきました。

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